サンクスギビングのお休みに、モントレーベイ水族館のラッコ保護ツアーに参加してきました。普段見ることができない部分を見せてくださいます。
モントレーベイ水族館には様々なツアー(有料)がありますが、ぜひ機会があったら参加していただきたいのがこのSea Otter Conservation Tour(ラッコ保護ツアー)。英語の解説のみですが、水族館の裏側を見ることができる貴重なツアーです。
水族館の真ん中、インフォメーションデスクの斜め向かいに、ツアーデスクがあり、時間の10分ほど前に集合します。参加者にはイヤホンガイドを渡され、スタッフの方の説明を聞くことができます。(周りがどうしても騒がしいので、イヤホンガイドを使用します)
まず、ラッコの展示を見ながらの説明が始まります。
モントレーベイ水族館には現在5頭のラッコがおり、すべて雌のラッコです。そして、5頭とも、代理母ラッコとして働くワーキングウーマンです。
この日ラッコ水槽にはローザ、アイビー、キットの3頭がいました。15歳になるローザは今まで11頭のみなしごラッコを育ててきたベテランラッコです。年をとり少し動きが鈍いですが、先日、子育てを終えたばかりで、今は休憩中です。
ラッコたちがどのくらいの頻度で代理母をするのかスタッフの方にお聞きしました。野生のラッコは通常1回に1頭子どもを産み、子どもが自立したところですぐに妊娠するのだそうです。おそらくそのペースで代理母にも子育てをお願いしているのでしょう。子どもを育てることはラッコにとってかなりの重労働で、一度代理母をやるとくたくたになってしまうため、7か月ほどお休みをして充電するとのことでした。
先日話題になったシェッド水族館のラッコ681号に関して、どうして代理母ラッコの都合がつかなかったのか、というフェイスブック上の質問がありましたが、なるほどそういう事情があったのです。
続いて、裏のデッキから野生のラッコを観察します。
ちょうど、沖のほうで3頭ほどラッコを見ることができました。
保護されたラッコには無線のトランスミッターが埋め込まれ、2年程度、固有の電波によってその生態を追跡することができます。
水族館に戻り、ケルプの森の展示の前で、ラッコがケルプの森で果たしている大切な役割や、ラッコが絶滅に追いやられた経緯などの説明がありました。
ラッコはキーストーン種といわれる種です。このキーストーンというのは、アーチ形に積み上げた石の一番上にある重要な石で、これを取るとそのアーチが全て崩れてしまうことから、生態系にとってなくてはならない非常に重要な生き物を指す言葉になったそうです。ラッコはこのケルプの森の中で、そうした重要な役割を果たしています。海にはウニが生息しており、ラッコはウニを食べる数少ない捕食者です。ウニはケルプの足(岩などにつなぎとめている部分)を食べてしまいます。ラッコがウニを食べることで、食物網のバランスが取れるのです。ラッコがいなくなってしまったら、ウニがケルプを食べつくし、海底はウニ砂漠と呼ばれるような荒地になってしまいます。その結果、ケルプの森に棲む多様な動物たちも棲家を失い、いなくなってしまうのです。
ラッコは脂肪層がないため、体温を保つために非常に代謝が高く、また体温の維持のため非常に密度の高い体毛をもっています。その毛皮によって、悲しくもラッコは絶滅に追いやられてしまうことになりました。
ロシアの探検家が北の海で座礁した際、そこで様々な動物たちを始めてみることになりましたが、持って帰ったラッコの毛皮の品質の良さから、ラッコは瞬く間に狩られ、1900年代初めには1000頭から2000頭程度になってしまいました。カリフォルニアでは絶命していたと思われていましたが、ビッグサーで1930年代に発見され、それが少しずつ数を増やして今は2994頭になりました。しかし、3年連続3090頭を超えるまで、絶滅の恐れがある動物のリストから取り除かれることはありません。
続いて、水族館の裏側へ案内してくださいます。
専用の入り口を入ると、通路があり、さまざまな展示水槽の裏側を通ります。階段を上っていくと、ドキュメンタリーで見たことのある部屋の前を通ります。
ここは検査や手術などが行われる部屋です。白いヒゲのマイク博士はいらっしゃいませんでした。
続いて屋上へ。
屋上に、SORAC(Sea Otter Research and Conservation:モントレーベイ水族館のラッコ保護機関)のオフィスがあります。この中にはモニターがあり、外の水槽にいるラッコたちを観察しています。
屋上には2つタンクがあり、それぞれに入っているラッコの名前が記載されています。
東側の水槽にいるラッコは、457号と657号。いずれも、こちらで保護し自然に戻されたラッコですが、自然に適応できなかったため再度保護されたそうです。
ここで保護され、育てられたラッコはエルクホーン湿地帯へ放されますが、場所柄カヤッカーや釣り人が多く、人に慣れ過ぎてしまったという理由で保護されることもあるそうです。以前フェイスブックでも書きましたが、ラッコに餌を与える釣り人が少なくありません。釣り人にしてみればハトに餌をやるくらいの気軽さなのかもしれませんが、そのために自然に適応できなくなってしまうのは非常に残念です。
西側の水槽には、アビーと671号、ギジェットと673号の4頭のラッコがいました。アビーとギジェットは今子育て中のため、ラッコの展示水槽にはいないのです。
ここで、シェッド水族館の681号のことも話題に出ました。681号なんて名前、可哀想!なんていう声もいろいろありましたが、SORACではラッコたちはみな番号が名前になっているので、と笑っておっしゃっていました。そのうち何かいい名前が付けられるでしょう!
ここに来るラッコは様々な理由がありますが、スタッフの方が強調されていたのは、「ラッコを見つけたらまず連絡してほしい」ということ。赤ちゃんラッコが1頭でいるのは、その間母親ラッコが餌を獲りに行っている間かもしれません。中には早とちりしたカヤッカーが波間に漂っていた赤ちゃんラッコを拾ってきたケースもあったそうです。実際、通報を受けたSORACのスタッフがすることは、まず赤ちゃんラッコが見つかった場所の付近に母親ラッコがいるかどうかを探すことです。時には赤ちゃんラッコの首根っこを掴んで、声を出させるそうです。その声に反応して母親ラッコが応えることもあるのだそうです。母親ラッコが見つかればもちろん母親ラッコにかえします。ですから、赤ちゃんラッコが1頭でいる!→助けなきゃ!と短絡的に考えるのではなく、まず専用のダイヤルに連絡してほしいとのことでした。
スタッフの方に、赤ちゃんラッコが保護された際、どうやって代理母ラッコを選ぶのか尋ねてみました。
もちろん、その時に都合がつくラッコがいるかどうかもあります。また、あるラッコで上手くいかなければ、別の代理母ラッコで試すこともあるそうです。やはり相性もあるんですね。
こちらは、ICUとフードルーム。当然ながら立ち入りはできないので、外から見るだけでした。
屋上にあるラッコ水槽。思ったより小さいようです。
このような丸い水槽が2か所ありました。
中にはラッコたちがいるのですが、残念ながら見ることはできません。
SORACのオフィスにあるモニターから中の様子を見ることができました。
ツアーの最後は、ラッコの展示水槽の前でした。
「はじめは、ラッコ=カワイイ!という感じだったと思いますが、ツアーを通じてなぜラッコが重要なのかということを理解していただけたのではないんでしょうか」という締めくくりでした。
この水族館でラッコ1頭あたりにかかる餌代は年間5000ドルから7000ドルです。水族館へきてくださることや、こうしてツアーに参加していただくことが、その助けになります、とのことでした。
モントレーベイ水族館 ラッコ保護ツアー
※説明は英語のみ
対象:6歳以上
定員:8名
日程:毎日
日によってツアー出発時間が異なりますので、詳しくは予約ページの日程からご確認ください。
時間:1時間
参加費:一般$15、会員$12
予約:Sea Otter Conservation Tour
*Information updated 06/2018
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