【記事】みなしごラッコ、浮き方を学ぶ | Orphaned Baby Sea Otter Learns to Float: Explaining Viral Video

本日は2014年11月12日付けのNational Geographic、"Orphaned Baby Sea Otter Learns to Float: Explaining Viral Video"をご紹介します。話題になっているシェッド水族館のラッコ681号。生まれて間もなく親とはぐれたところを保護し、1か月間集中的にケアを施してきたモントレーベイ水族館のメイヤー氏へのインタビューです。

9月末カリフォルニアで発見されたラッコ、保護下ですくすく育つ

子どもを育てるのに地域が必要であるのと同じように、みなしごのラッコを育てるには専門家が必要


シカゴのシェッド水族館キーキー鳴いたり、ジタバタしたり泳ぎ方を習っている動画がYoutubeにアップされてからというもの、681号と名付けられたカリフォルニアラッコの赤ちゃんがネット上に話題を振りまいています。


9月30日にカリフォルニアの海岸で発見されたその赤ちゃんラッコは、モントレーベイ水族館の集中ケア室で4週間を過ごし、シェッド水族館へ移されました。


このふわふわの赤ちゃんラッコは可愛らしいだけではなく、実は希少です。カリフォルニアラッコは、歴史的には毛皮貿易のため、また、現代は原油の流出や気候変動などの脅威のため、多くの命が失われてきました。


カリフォルニアラッコは、アメリカ魚類野生生物局によって「絶滅の恐れがある」動物のリストに定められており、野生には約3,000頭が生息しています。(絶滅の恐れがある海洋生物の写真参照)


ナショナルジオグラフィックはラッコの保護に携わり、モントレーベイ水族館で681号のお世話をしたチームの1人であるカール・メイヤー氏に、保護されたラッコをどのように育てるのかということについてお尋ねしました。

---なぜ681号は親とはぐれてしまったのでしょうか?

681号はサンタクルーズの北、[サメが多く出没する]地域で浜に打ち上げられていました。母親に何かが起きたのでしょう。[もしくは]母親が非常に衰弱していたため、子どもの世話ができなかったのでしょう。正確なところはわかりません。

---動画での様子を見て、どのような状態だと思われますか?また同じ月齢の野生のラッコと比較してどうでしょうか。

野生のラッコと比較すると、少し成長が遅れているかもしれません。[動画の681号と同じ]生後5週であれば、野生のラッコはもっと水の中で活動的になりはじめる頃ですし、自分で方向を定めて泳ぐことができます。681号はまだそこまで達していません。(野生の可愛いラッコの写真はこちらを参照


生後1週間でこのラッコを保護した際、非常にいい健康状態でしたが、低体重でした。今も健康状態は良く、毛が生え変わり始めています。幼毛が生え変わると、若者のラッコとしての機能を十分持ち、水に潜ったり餌を獲ったり、乳離れをすることができます。しかし、681号はおそらく残りの人生を保護下で過ごすことになるため、そのような成長過程のいける通過ポイントは需要ではありません。

---なぜキーキー鳴いているのでしょうか?

ラッコはある音域を持っています。例えば寒くなったり糞をする前、毛づくろいをしてあげる時など、不快に感じることがあればそれを声にして表現します。また、比較的満足している際にも、満足を示す声を上げます。この動画では、おそらく水の中に入れられて寒いということを表現しているのではないでしょうか。

---シェッド水族館の方は681号を水の中に入れていますが、あれは泳ぎ方を教えているのでしょうか?

あれは、「教える」というほどのものではありません。むしろ、ラッコとしての振舞いを発達させるよう刺激を与えるという性格のものだと思います。お世話係の人間は、ロールモデルとして水槽に入ったり、一緒に泳いだりするような振舞いはしません。行動を刺激したり、励ましたりする類のものです。


野生では、母親ラッコが海で活発に泳ぎまわります。また、子どものラッコも母親を探そうとしますし、母親の後をついて水に潜ろうとします。そうした発達を促すような行動に代わるものが必要なのです。(関連記事:「ラッコの子育ては"命懸け"」※日本語)

---動画の1分くらいのところで、顔をぬぐっているようですが、あれはどうしたのでしょうか。

あれは基本的には、毛づくろいしようとしているものです。ぎこちないですけどね。まだ毛づくろいする力はありませんが、挑戦はしています。タオルの上で頭を動かしているのは、あれは私たちはシミー(震えること)と呼んでいます。あれもまた、毛づくろいしようとしているのです。


スタッフの方がラッコを乾かしていますが、あれはラッコが自分でできないからということなのでしょうか。

その通りです。野生では、母親が毛づくろいの大半を行っています。毛の品質を保つことは、子育てにおいて最も重要な仕事の一つになります。濡れている部分が残っていると、毛が固まってちゃんと横にならないのです。それが赤ちゃんラッコの発達に影響しはじめます。

---あの紫の帯状の物は何なのでしょうか。また、なぜラッコをその中に置いたのでしょうか。

あの紫の物は、自動洗車機で、前後に動いて窓を洗うフェルトの帯です。その帯のいいところは、水に浮くということです。海では、ケルプ(海草)は固定されていますが、表面近くに浮いています。ラッコはケルプに包まって寝るのが好きなのです。そのフェルトは、自然環境を真似たものです。(ラッコが炭素廃棄物をどのように削減しているかはこちらをご覧ください※日本語)

---このラッコが育っていく上で、次のステップは何でしょうか。

ラッコが母親に依存する期間は実に長く、6か月に及びます。この時間は野生において発達する期間と一致します。8週間になると、人工乳ではなく固形の食べ物を求めるようになります。

---人間がラッコを育てる上で直面する困難とはどんなことでしょうか。

初期において一番大きなことは、その赤ちゃんラッコにとって新しい食べ物である人工乳に慣れるということでしょうか。むくんだり、ガスがたまったり、下痢や他の問題が[起こる]可能性が十分にあります。681号のように、母親と一緒にいた期間が非常に短い幼い[ラッコ]は、恐らく初乳[抗体が含まれる哺乳類の乳]が不足しています。従って、消化器疾患や感染症のようなものにかかりやすいのです。(カリフォルニアラッコを襲う新しい病気についてはこちらをお読みください


また、毛づくろいができないため、毛のもつれが大きくなることも問題です。基本的には、不愉快な状態の、さしこみをおこした赤ちゃんのようなものです。


そしてまた、300万人近くのYoutubeで見た人たちが同意するように、非常に可愛らしい存在でもあります。

元記事:
National Geographic
Orphaned Baby Sea Otter Learns to Float: Explaining Viral Video

PUBLISHED NOVEMBER 12, 2014 By Linda Qiu