1989年にアラスカで起き、ラッコを含む野生動物の多くに大打撃を与えた原油流出事故から今年で25年。2014年3月5日付のScientific Americanの記事、"25 Years after Exxon Valdez Spill, Sea Otters Recovered in Alaska’s Prince William Sound"をご紹介します。
※この記事で述べられている意見はライター個人の意見であり、必ずしもサイエンティフィック・アメリカン誌の公式見解と一致するものではありません。
USGS(アメリカ地質調査所)は1993年から毎年航空機によるプリンス・ウィリアム湾のラッコの調査を開始しました。その年、湾の主要部で2,054頭、モンターギュ島で335頭、ナイト島で75頭が確認されました。それらの島では、事故の際、特にひどい原油の流出がありました。ラッコの個体数はその後数年ほとんど変わりませんでしたが、その後大きく変動しました。1998年には主要部における個体数は3119頭に急増し、翌年には2475頭と大幅に減少しました。また、大幅な減少は2002年にもみられ(2001年には数量調査がなかったため)、わずか1840頭が見られただけでした。個体数が健全な数値に戻ったのは2008年と2009年で、3958頭まで急増しましたが、2011年には1000頭以上減っています。それ以降、個体数は着実に増えており、USGSは主要部におけるラッコの個体数は4277頭、ナイト島で139頭と報告しています。
個体数だけが、回復において考慮される唯一の要因ではありません。USGSの研究者たちは原油の汚染に晒され続けていることを示すラッコの遺伝子発現を調査しています。2008年に捕獲されたラッコはこうした遺伝子発現が認められましたが、4年後に調査された複数の個体にはありませんでした。
研究者たちは、死亡したラッコの調査も行っています。数年の間、この地域では他の地域のラッコよりも若くして死ぬ傾向がありましたが、最近は他の地域と変わりません。
エクソン・バルディーズ号の原油流出事故により、20種以上の動物が影響を受けました。
「回復の時間系列は種によって大きくばらつきがありますが、原油流出による長期的な影響に弱い種の回復は数十年かかっています。」
この研究の主要著者でUSGSの生物学研究員であるブレンダ・バラーキーはプレスリリースで述べました。
「ラッコについては、事故から20年後の2009年までに、回復の兆候が見え始めていました。そして2011年から2013年にかけての結果は、エクソン・バルディーズ号原油流出信託評議会により回復と定義されたものと一致するものでした」
アラスカラッコの個体数は回復したとみなされていますが、アラスカの南沿岸と島嶼部でみられる亜種全体では以前として絶滅の危機に瀕しており、アメリカの絶滅危惧種法で保護されています。これらは、カリフォルニア沿岸でみられるラッコとは異なる亜種です。
エクソン・バルディーズ号が1989年3月24日に座礁した際、約1080万ガロンの原油が流出しました。その環境への影響はいまだに残っていますが、それでも2010年にディープウォーターホライズン号がメキシコ湾で2億1000万ガロンの原油を流出させた事故と比較すると莫大な流出量というわけでもありませんでした。
元記事:
Scienticif American
25 Years after Exxon Valdez Spill, Sea Otters Recovered in Alaska’s Prince William Sound
By John R. Platt | March 5, 2014
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