9月21日から27日まで、Sea Otter Awareness Week (ラッコ週間)です。
ラッコや環境について理解を深めてもらおうと12年前に始まりました。
今回はモントレーベイ水族館で今週末開催されたOtter Days(ラッコ・デー)の様子をご紹介します。
土曜日に来たのは久しぶりでしたが、とっても混んでいました。チケットを買う行列が水族館の外まで続いていました。私はメンバーシップがあるので、メンバー専用の入口から待たずに入ることができました。
水族館に入ると、正面にかわいいラッコの子どもがお出迎え。
今年のOtterDays(ラッコ・デー)のイベント一覧が紹介されたボードがあります。
いつもより頻繁にフィーディング&トレーニングセッションを行っていました。
子ども向けの工作教室やクイズなどもあります。
SORAC(Sea Otter Research and Conservation:モントレーベイ水族館のラッコ調査保護機関)のブースがあり、スタッフさんが模型などを使いながらどのようにラッコの保護を行っているか説明を行っていました。"Saving Otter 501"に登場する、水族館3階にある丸い水槽の模型や、ラッコの子どもをケアする際に身に着ける溶接用のマスク、黒いマントなども展示されていました。下の写真の青いテーブルの真ん中ほどにある茶色い平べったいものは本物のラッコの毛皮です。
SORACのほか、Friends of the sea otterやseaotters.comのブースも出ていました。
こちらは実際にラッコに取り付けられている無線装置。10cm弱でしょうか。
スタッフの説明では、電池が内蔵されていて、だいたい2~3年追跡できるそうです。現在はカリフォルニアのラッコのうちだいたい10%程度のラッコに取り付けられているだろうとのことでした。
右側にちょっと見えるのはラッコの毛皮です。
こちらは"本物"のラッコです。
剥製ではなく、何とフリーズドライ(!)されたラッコだそうです。目だけは作り物だけど内臓などはそのままだとスタッフの方がおっしゃっていました。許可を得て触らせていただきました。お腹の毛はみんな触るので少し油が抜けてしまっていますが、背中の毛は軟らかくて本当にびっくりするほどフワフワで、ずっと触っていたいほどでした。でもこの手触りがラッコを絶滅に追い込んでしまったのかと思うと複雑な気分でした。
ちなみにこのラッコは保護されたものの生き延びることができず、モントレーベイ水族館で死んでしまったラッコなのだそうです。
ラッコ水槽の周りは黒山の人だかり。いつ来てもモントレーベイ水族館ではラッコたちは一番人気です。
ここのラッコたちはみな持病やその他の理由により野生に戻すことができなかったラッコたちです。
全員メスで、裏ではみなしごのラッコたちの代理母・教育係として働いています。
モントレーベイ水族館だけでなく、アメリカの水族館にいるラッコたちは全てUSGS(アメリカ魚類野生生物局)によって「自然に返すことができない」と判断されたラッコたちです。
厳しい野生で生きるより、水族館で生きるほうが、いろいろな意味で楽ではあるでしょう。
しかし、野生動物は野生で生きるのが一番自然であるという考えに基づいて保護され、相当な理由がない場合は野生に戻されます。
穴のあいた筒状のおもちゃで遊ぶラッコたち。
筒の中に出たり入ったり、穴から顔をだしたりして楽しそうです。
自然で生きるのとは異なり、水族館では予測不可能なことなどがあまり起こりません。そのため、こうしたオモチャなどで好奇心を刺激することはここのラッコたちのQOL(生活の質)を上げるために大切なことなのです。
こちらは水族館沖でぷかぷかしていた野生のラッコです。
ラッコデーなので特別に近くに登場・・・とはいかず、ちっちゃく見えました。
モントレーベイ水族館は、日本の多くの水族館に比べれば規模も大きくはありませんし、哺乳類はラッコしかいませんし、イルカショーのようなものもありません。日本の有名水族館などと比べたら、非常に地味な水族館と言えるでしょう。しかし、アメリカで最も素晴らしい水族館に選ばれている理由が、ここに来ればよくわかります。
モントレーベイ水族館は自然保護区域の中に位置し、裏のデッキに出れば野生動物たちが生き生きと暮らしているのを見ることができます。まるで、大きな水族館の中に施設があるようなものです。自然という大きな水族館があるから、大型哺乳類の展示は必要ないのです。
またこの水族館の素晴らしいところは、単なる展示だけに終わらず、人と自然の関わりや、環境への配慮などを積極的に来場者に伝えていることであり、海洋生物を保護し自然に返す努力をしていることであり、その努力と成果をきちんと来場者や寄付をしてくれる会員たちに報告していることです。アメリカの多くの水族館は入場料のほか企業や個人による寄付金に支えられているため、当然といえば当然かもしれません。しかし、こうして成果を還元することで、安定してサポーターを増やすことができるのです。また、この水族館にはボランティア制度があり、多くの人がボランティアとして展示の解説などに参加しています。決して一方通行ではなく、見て、知って、参加できる水族館として、人々に愛されているのです。
今回初めて行ったOtter Days(ラッコ・デー)は、まさにモントレーベイ水族館が長年取り組んできたことを人々に知っていただくための大切な日だったのだと思います。
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