いつもは翻訳記事を載せていますが、今回は私がラッコを取材していて気が付いたことなどのお話です。
自然保護区
Moss LandingやMontereyによくラッコを見にいきます。どちらも車でのアクセスがよく、そこそこ大きな群れが生息しており、ほぼ100%の確率で野生のラッコを見ることができるからです。Moss
Landingはエルクホーン湿地帯への入り口に位置し、カヤックツアーなどの出発地点になっていることもあり、ラッコ目的だけでなく、バードウォッチングやホエールウォッチングなどを目的に多くの人が訪れます。また、何が釣れるのかよくわかりませんが、釣りをしている人も多く見かけます。
自然の偉大さに気軽に触れることができるという点で、アクセスのよさは利点でもありますが、一方でそれがマナーの悪い人々や意識の低い人々をも簡単に呼び寄せてしまっているという点であだになってもいるように感じます。
この一帯は州立公園となっており、自然保護区に指定されているため、入口にはいろいろな決まり事が書かれています。
<左から>
-
浜・砂丘への犬の連れ込み禁止
- 火の取り扱い禁止
- キャンプ禁止
- 浜・砂丘への車の乗り入れ禁止
- パーキングから25フィート以内でのアルコール摂取禁止
<絶滅危惧種の生息地>
道路・パーキングより先、犬の連れ込み禁止
<注意>
車に施錠すること
貴重品はお持ちください
拾えども拾えども
Moss Landingに通い始めた頃は、野生のラッコが見られる嬉しさで、ラッコばかりを目で追っていました。
しかし、気持ちに余裕が出てくると、もう少し視野が広がってきたのか、捨てられているゴミに目がいくようになりました。
ペットボトル、ガムの包み紙、ハンバーガーの包み紙、ビール瓶、釣り糸、釣りの餌の袋、お菓子の袋、タバコの吸い殻、ビニル袋、果ては使用済み避妊具(!)まで、ありとあらゆるものが、うち捨てられています。
しかも、5メートル歩けばゴミ箱があるところに。
ほんの数メートル歩いてゴミをゴミ箱に入れることが、それほど難しいことなのでしょうか?
Moss Landing State
Beachには、簡易型のトイレやゴミ箱がちゃんと設置されており、毎週清掃業者が来てきれいにしていきます。州立公園なので、おそらくそのような費用は州税から賄われているのではないかと思います。しかし、その清掃担当の人も、ゴミ箱のゴミは捨てていきますが、周辺に散らかっているゴミまで拾っていってくれるわけではありません。人々のマナーの悪さを嘆いても文句を言っても、今、目の前にあるゴミがなくなるわけでもありません。そうしている間に自分が行動を起こさなければ何もこの状況は変わらないと思い、その次に行った時から毎回ゴミ拾いをすることにしました。
朝、Moss Landingのパーキングに着くとすぐに、1時間ほどかけてゴミを拾います。
ラッコの群れや飛び交う海鳥などを眺めながらゴミ拾いをすると、あっという間です。
日によってゴミ袋がいっぱいになることもあれば、少ないこともあります。ビール瓶が5,6本見つかる日もあれば、釣り糸がたくさん見つかる日もあります。タバコの吸い殻が異様に多い日もあります。しかし、まったくゴミがない日というのは、残念ながらありません。海から流されてきたと思われるものもところどころで見かけますが、非常に残念なことに、ほとんどは誰かが意図的にここで捨てていったゴミです。
ゴミは、プラスチック製品やガラス製品、ゴム製品など、自然には存在しない、人工的な生産物を中心に拾います。
ピスタチオやピーナッツの殻、オレンジの皮、貝殻などはそのまま放っておいても自然に還るので、そのまま放っておきます。タバコの吸い殻は水に溶けると有害物質が出るので、できるだけ拾うようにしています。犬の糞も本来は拾いたいのですが、風化していることが多く、拾おうとしてもボロボロになっているため、難しいのが現状です。だいたい、1時間で13ガロン(50Lくらい)の袋が半分くらいになります。
しかし、そのあと他の場所にラッコを見にいって夕方Moss Landingに帰ってくると・・・。
驚くことに、またゴミが散乱しているのです。
できることから一つずつ
ゴミ拾いをしていると、知らない人が"Thank you!"と声をかけてくれるようになりました。
人に感謝されたいと思ってやっていることではないですが、そうやって声をかけてくださる方はたいてい自然をこよなく愛している方だろうと思います。
ひょっとしたら清掃員と思われていたかもしれません。別にそれは構わないのですが、それよりも何よりも、ゴミは持ち帰る、もしくは、持ち帰れないならそこにあるゴミ箱にせめて入れて帰っていただきたいものです。
ゴミは景観を損ねるだけでなく、ここに住んでいる野生動物たちにとって非常に危険です。
釣り糸が絡まって体に食い込んで肉が切れているアザラシ。ビニル袋に頭を突っ込んでしまったラッコ。
インターネット上には、そのような人間が捨てたゴミで生命を脅かされている動物たちの写真がたくさんあります。
大きくとらえれば、ゴミを捨てるのも人間なら、拾うのも人間。自然にとってはそれが誰であろうと人間であることには変わりがないのです。それなら、同じ人間として、拾うほうにまわるほうがいいと私は思っています。
ラッコやアザラシや、海鳥たちが少しでも心地よく生きていけるように願いながら、毎回ゴミを拾っています。
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