今回は2014年3月24付けの、The Atlanticの"The Exxon Valdez Oil Spill: 25 Years Ago Today"から、1989年の原油流出事故についての記事を紹介します。
直接ラッコに関係する部分は多くはありませんが、写真が多く、事故の規模や影響を垣間見ることができます。
1989年3月24日、石油タンカー、エクソン・バルディーズ号は石油を満タンにしアラスカ州バルディーズマリンターミナルを離れ、プリンス・ウィリアム湾に入ったところでした。午前0時4分、船が座礁し船体に穴が空いたため、そこから周辺に1100万ガロンの原油が流出しました。エクソン社とアリエスカパイプライン社による最初の対応は流出した大量の原油を封じ込めるには不十分でした。また、流出後間もなく嵐が吹き荒れ、原油を広く拡散してしまいました。
最終的に、1000マイル(約1600km)の海岸線が汚染され、何十万頭もの動物たちを死に至らしめることになりました。エクソン社は、洗浄費用と罰金を数十億ドル(数千億円)を負担し、今日に至るまで裁判のために拘束されています。船長のジョセフ・ヘーゼルウッドは舵を取っている間酔っていたという理由で実刑は免れましたが、原油流出に対する不注意という軽犯罪で5万ドル(約500万円)の罰金と1000時間の地域奉仕活動を言い渡されました。原油の大部分は見えるところから消えていますが、今日に至るまでアラスカの海岸の多くが汚染されたままになっており、表面から数インチ掘れば原油が出てくるのです。
1) 1989年6月23日、タグボートと米国沿岸警備隊監視艇によりプリンス・ウィリアム湾より牽引されていく、破損したエクソン・バルディーズ号。1989年3月24日、タンカーはブライ岩礁に座礁し、1100万ガロンの原油を湾内に放出した。当時、アメリカ史上最大の原油流出事故であった。(AP Photo/Al Grillo)
2) エクソン・バルディーズ号から原油を抜き取るエクソン・バトンルージュ号(左の小さい船)。1989年3月29日アラスカ、ヴァルディーズ近郊プリンス・ウィリアム湾にて。(AP Photo)
3) エヴァンス島の礫浜に打ち上げられた粘度の高い原油が地元の漁師の長靴やズボンに付着している。1989年4月11日、プリンス・ウィリアム湾にて。(AP Photo/John Gaps III)
4) 左:コルドヴァの漁師ティム・ティレルがジョンソン湾の浜で原油に汚染された動物たちを発見、死んだラッコをボートに乗せる。1989年4月14日、プリンス・ウィリアム湾にて。
右:油膜が浮かぶアラスカ、インゴット島沖で泳ぐアシカの群れ。事故から3週間後、1989年4月14日(AP Photo/John Gaps III)
5) プリンス・ウィリアム湾の強風が入江に原油を押し流していく。1989年4月10日、スクァイア島。(AP Photo/John Gaps III)
6) ネイキッド島の汚染された波打ち際を歩く洗浄作業員。後ろで初期の洗浄作業が行われている。事故から1週間後、1989年4月2日、プリンス・ウィリアム湾。(Chris Wilkins/AFP/Getty Images)
7) プリンス・ウィリアム湾、グリーン島で日に照らされぎらぎら光る油に汚染された石。この浜は比較的早い時期にエクソン社と沿岸警備隊が環境的に安定していると合意した場所だったが、1989年7月4日に再度油で汚染されてしまう。 (Alaska Resources Library and Information Services)
8) 作業員たちがネイキッド島の原油に浸った浜を洗浄している。1989年4月2日。 (Reuters/Mike Blake)
9) ラトゥシュ島付近の厚い油膜の中、油を掬い取る作業を行っている。1989年4月1日。 (Chris Wilkins/AFP/Getty Images)
10) 事故現場から約35マイル(約56㎞)のナイト島で発見された、原油にまみれたアカエリカイツブリ。この鳥は写真を撮った人々によりヴァルディーズ市にある鳥類洗浄センターに連れていかれた。(AP Photo)
11) 鵜の仲間やウミガラスの仲間など、多くの海鳥が原油流出により死に至らしめられた。(Exxon Valdez Oil Spill Trustee Council)
12) 死んだ赤ちゃんラッコが1頭、成体のラッコが5頭、グリーン島の浜に横たわる。1989年4月3日。 (Chris Wilkins/AFP/Getty Images)
13) 漏れた原油が、プリンス・ウィリアム湾に広がっていく。(Exxon Valdez Oil Spill Trustee Council)
14) DC-6型機から、エクソン・バルディーズ号から流出した油の上に化学分散剤が撒かれる。1989年3月27日。(AP Photo/Bob Stapleton)
15) プリンス・ウィリアム湾で渦巻く油膜。エクソン・バルディーズ号が座礁したところから約50マイル(約80㎞)のところ。(AP Photo/Rob Stapleton)
16) 洗浄作業員がプリンス・ウィリアム湾沖のオイルフェンスに囲い込まれた原油を集めている。ナイト島の沖スヌッグ港に集められた油は、米国沿岸警備隊のスキマーにより吸い取り回収された。1989年4月16日。 (AP Photo/John Gaps III)
17) プリンス・ウィリアム湾、ネイキッド島の南側の湾で泳ぐアシカたち。大損害を与えたエクソン・バルディーズ号が停泊している。1989年4月12日。 (AP Photo/John Gaps III)
18) 四つん這いになり、原油に浸かった石をこすって洗っている作業員。ネイキッド島、1989年4月2日。(Reuters/Mike Blake)
19) アニマルレスキューセンターで、原油に浸かった海鳥がタオルに包まって休んでいる。1989年5月31日。 (Reuters/Mike Blake)
20) ブロック島の岩礁で、付着した原油を獲るため高温高圧水で洗浄する作業員。1989年4月17日。(AP Photo/John Gaps III)
21) スミス島沖に停泊中の米海軍揚陸舟艇。原油流出後の洗浄力を上げるため、蒸気を供給する。1989年5月11日。 (AP Photo/Michael Poche)
22) 陸上の作業員が海上の作業員と協力し、海岸の原油を封じ込め、除去した。(Exxon Valdez Oil Spill Trustee Council)
23) 当初、海岸を洗浄する際には温水が使用されていたが、温水が海岸の生物を殺してしまうことが分かり、水に切り替えた。(Exxon Valdez Oil Spill Trustee Council)
24) 大型のハシケ(河川や運河などの内陸水路や港湾内で重い貨物を積んで航行するために作られている平底の船舶)と海岸で散水洗浄中の作業員の航空写真。原油がオイルフェンスに溜まっているのが見える。ラトゥシュ島、1989年9月11日。(Alaska Resources Library and Information Services)
25) ネイキッド島の浜で、高圧放水ホースで岩を洗浄している作業員たち。1989年4月21日。 (AP Photo/Rob Stapleton)
26) 原油による汚染で死んだいろいろな動物たち。海鳥やラッコが見える。 (Exxon Valdez Oil Spill Trustee Council)
27) プリンス・ウィリアム湾のある島で、原油にまみれた鳥を調べている。1989年4月。 (AP Photo/Jack Smith)
28) プリンス・ウィリアム湾に停泊する作業員用の「水上ホテル」の航空写真。1898年7月。 (Alaska Resources Library and Information Services)
29) プリンス・ウィリアム湾に停泊中の原油除去の補助船。1989年7月。(Alaska Resources Library and Information Services)
30) アラスカ州ヴァルディース市には大規模な洗浄作業計画に何千もの人が出稼ぎに集まり、一時的に新興都市が形成された。集まった人々に生活必需品や住宅、食事などを供給する仕事もまた生まれた。1989年6月6日撮影。 (AP Photo/Jack Smith)
31) 座礁時に舵をとっていたエクソン・バルディーズ号船長ジョセフ・ヘイゼルウッド(左)と三等航海士グレゴリー・カズンズ(その右)がエクソン社の社員と思われる人物(奥)に伴われてヴァルディーズ市の沿岸警備事務所から退出。船長らはタンカーの座礁とそれに続く原油流出についての調査を行っている国家輸送安全委員会の当局者と面会した。1989年3月28日。
(AP Photo/Rob Stapleton)
32) ブライ岩礁に座礁したエクソン・バルディーズ号。1989年3月25日。(AP Photo/Stapleton)
33) プリンス・ウィリアム湾の汚染された海域で捕獲された5頭のラッコたちが現地の動物保護施設に運ばれ、作業員たちに押さえされ洗浄されている。1989年4月18日。(AP Photo/John Gaps III)
34) エクソン・バルディーズ号から漏れた原油にまみれた石や海岸を水圧で洗い流し、洗浄作業が続けられた。1989年3月28日。(U.S. Coast Guard)
35) カトマイ国立公園の管理者レイ・ベーンがアラスカ半島にある公園の浜で、原油溜まりを掘っている。エクソン・ヴァルディーズ号から漏れた原油は、プリンス・ウィリアム湾から数百マイル(1マイル≒1.6キロメートル)離れたところまで流されていた。1989年5月3日。(AP Photo/John Quinley)
36) ヴァルディーズ市のデイヴィル焼却場の視察で、焼却を待つ原油汚染廃棄物に囲まれているアラスカ州環境保全省の局長デニス・ケルソーと原油流出対策委員のメンバーたち。1989年7月4日。(Alaska Resources Library and Information Services)
37) 破損したエクソン・バルディーズ号がプリンス・ウィリアム湾からタグボートに牽引されていく。 (U.S. Coast Guard)
38) アニマルレスキューセンターの外、原油に汚染されたラッコがケージの中で順番を待っている。(Reuters/Mike Blake)
39) 事故から20年、2010年5月5日。アラスカ州エレノア島の浜を掘ると、今でも原油が染み出してくる。(Reuters/Lindsay Claiborn)
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ラッコ保護団体 (木曜日, 09 9月 2021 09:34)
まじで原油流したやつ死ね 死んでも償いきれないわ ラッコや他の動物達かわいそすぎる
o (日曜日, 23 10月 2022 20:55)
「やったらやりっぱなし」とはこの事だなぁと思う。いくら洗浄作業をしても破壊された生態系は元には戻らない。破壊するのだけは得意な人類はほんま地球にとって要らんなと思う。
あ (土曜日, 15 7月 2023 21:12)
本当にかわいそうです心が痛みます。人間のせいでこんなことになるとか最悪です。
名無しさん (水曜日, 06 3月 2024 03:59)
大好きなラッコちゃんがかわいそすぎる
なんかこの事故によってラッコが6000頭ぐらいいなくなっちゃったみたい
どうやらタンカーの事故はだいたいが人的ミスらしい
というか化石燃料を使わないならこんなかわいそすぎる事故は起きないんだけどなー
名無し (水曜日, 06 3月 2024 04:01)
今も原油出てきているならそれを使えばいいじゃん