【記事】ウィフィンが残したもの | How One Sea Otter's Death Is Helping Scientists Track A Dangerous Parasite

本日の記事は5月16日付のEarth Touch News Networkの記事、How One Sea Otter's Death Is Helping Scientists Track A Dangerous Parasiteをご紹介します。先日亡くなったラッコ「ウィフィン」の死は決して無駄にはならないというお話。

今年はじめ、その救出の様子がソーシャルメディア上で感動を巻き起こしたカナダのラッコ、ウィフィンの話をご紹介しました。そのラッコは、バンクーバー水族館海洋哺乳類保護センターで生きるために戦っていました。残念なことに11週間の後、先週の土曜日、ウィフィンは天国へ旅立ちました。このような悲しい結末になりましたが、ウィフィンは前向きな影響も残していきました- 科学者たちが様々な動物や人間がかかるであろう病気を診断し、治療する新しい方法を進展させる手助けになるということです。

 

ブリティッシュコロンビア州スークの人気のハイキングトレイルの近くで発見された時、ウィフィンは凍え、飢え、非常に衰弱していました。

「私たちのチームは、重体の動物たちの容体を安定させることについては非常に経験があります。」

獣医のマーティン・ハウリナ博士は述べています。

「大概の動物たちに比べ、ウィフィンの容体は悪い状態でしたが、この2か月半の間、このチームは容体を安定させ、少しでも心地よくさせるために目覚ましい仕事をしてきたと思います。」

 

ウィフィンの発作と低血糖は何度か安定しましたが、その容態は決して良くなることはありませんでした。定期的なMRIの撮影時、ウィフィンは呼吸ができなくなってしまいました。

 

「ウィフィンはまだ体重が増えていませんでした。筋肉の喪失が激しく、頭部振戦(とうぶしんせん:頭の震え)がみられ、衰弱していました。」

水族館のスタッフは最近の報道でそのように話しています。

「しかし、もっと心配だったのは、何度も行われた血液検査でトキソプラズマの感染値が増大していることでした。

 

トキソプラズマ原虫は単細胞の原生動物(1つの細胞しかも他ない小さな寄生虫)で、全身性トキソプラズマ症を引き起こすものとして知られています。ラッコの体内で、トキソプラズマは深刻な脳症を引き起こし、カリフォルニア沿岸におけるラッコの主な死亡原因の一つとされています。もし検査の結果、ウィフィンの死の原因がトキソプラズマであると断定された場合、この病気が北へ広がっているということを示します。これが、ウィフィンのケースが重要である理由なのです。ウィフィンがどこでどのようにこの寄生虫に感染したかを知ることで、トキソプラズマがどのように広がるのかを知ることができるのです。

 

「もし原生動物による病気がいくつか進行している場合、(実際あるのですが)、どの寄生虫によるものか判断しなければなりません。」とハウリナ博士は言っています。

 

トキソプラズマ原虫は、主に齧歯動物やネコ科の動物を媒介にしており、それが「猫の寄生虫」と呼ばれることもある所以ですが、感染した動物の肉を食べれば、人間にも感染する可能性があります。実際、今年初め、ベルーガに感染が発見されたことで科学者たちを驚かせました。

 

人間の場合、健康な免疫システムが働いていれば、感染しても症状がでることは通常はありません。しかし、病気にかかっている人や妊婦などの場合、トキソプラズマは多くの深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。最もよく見られるのが、失明と流産です。

 

他の動物にとって寄生虫はより破滅的で、ハウリナ博士はウィフィンの事例から得られる知識が、北の海域に住む動物たちを守る手助けになるだろうと考えています。

 

「これらの病気は、今や、北極圏やその他のいわゆる『手つかずの環境』と呼ばれている地域で見つかっています。病気を特定し、どのようにこれらの地域に広がっていったかを記録に残すことは非常に大切です。こうした病原虫は、その生活サイクルを完成させるために猫のような宿主を必要とします。したがって、宿主の環境に関係する病原虫が、どのように海洋環境に広がっていくのかを調べることは、環境的な見地から言っても非常に重要なのです。」

と博士は述べています。

 

分子寄生虫学者のマイケル・グリッグはトキソプラズマ原虫の進化を別の環境的見地から研究しています。新しい環境における寄生虫の発生と、北極圏の氷の減少の関係です。

 

「氷が解ける際に起こっているのは、環境のバリアが失われているということです。その結果、北部から寄生虫を解放することになり、影響を受けやすい動物たちの住む南部へ広がってしまうのです。」

 

グリッグは同様に、温暖な環境にしか生息しない病原体が、北極圏で広がり、そこに住む動物たちに病気を引き起こしていると言っています。これは、地球温暖化の進行から寄生虫が利を得ているということを示しています。

 

グリッグと彼のチームは、新種の肉胞子虫(別の種類の単細胞の原生動物)であるサルコシスチス・ピニペディが2012年に北極海でハイイロアザラシ406頭が死んでいた謎の原因であることを突き止めました。そのアザラシの大量死以降、その病原虫により、トド、ハワイモンクアザラシ、セイウチ、そしてアラスカからブリティッシュコロンビアにかけてホッキョクグマやグリズリーベアが死んでいます。

 

バンクーバー水族館のチームがウィフィンの生体標本の検査結果を心配して待っている一方で、MRIとCTスキャンが動物放射線技師のもとに送られました。小さな病変の証拠を見つけ出すことで、将来的に病気の早期診断に役立つことが期待されます。

 

ハウリナ博士はこのように述べています。

「目標は、それぞれの動物たちのために、できうる限りの最良の決断を、できうる限り早くすること、それから私たちがさらに事態を大きく捉えることができることです。」

 

ウィフィンのサポーターは、ウィフィンについての話をハッシュタグ#GoWhiffenを使って、ツイートし続けています。

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