【記事】サンフランシスコにラッコは帰ってくるか | Can Sea Otters Make a Comeback in the San Francisco Bay?

少し古く(2013年9月)なりますが、QKEDのCan Sea Otters Make a Comeback in the San Francisco Bay?という記事から。

サンフランシスコのピアでは、たくさんのアシカを見ることができますが、ラッコもその仲間に入れる日が来るのでしょうか。

ラッコがサンフランシスコ湾で浮かんだり潜ったり、塩沼の豊かな海草に囲まれて泳いでいる姿を想像してみてください。

1800年代初頭までは、そうした風景をよく見ることができました。この地域からラッコがいなくなってもう久しくなります。1840年代、毛皮目的の漁師が、コルテマデラクリーク付近に生息していた最後のラッコたちを狩ってしまったからです。残ったラッコたちは、1938年にビックサー付近で発見されており、約50頭程度と思われる数から徐々に増えています。

カリフォルニアラッコは、サンタバーバラの北から、ピジョンポイントにかけて、またチャネル諸島の西端、サンニコラス島にもわずかに生息しています。

 

最近発表された、年度別のカリフォルニアラッコの生息数調査には、困難な中にも希望的な見通しが見られます。全体的に生息数は増加しているようですが、国の絶滅危惧動物のリストから外されるレベルには達していない状態が続いています。南端に生息するラッコたちは、ホホジロザメに噛まれて致命傷を負った率が高いと出ています。ホホジロザメはラッコを食べるわけではなく、じゃれているだけなのですが、噛まれてしまうとラッコたちが生き延びることはできません。

 

モントレー湾のエルクホーン・スルーはラッコが最大の生息数を誇り、アメリカ地質調査所(USGS)の所員でカリフォルニア大学サンタクルーズ校のティム・ティンカー教授と様々な研究所やNPOの科学者たちによる新たな研究対象となっています。

 

ティンカー博士は次のように述べています。

「ラッコは研究対象として非常に重要な生物です。食物連鎖の頂点に位置する動物であり、生態系の健全さと直接的な関係があります。」

エルクホーン・スルー・ラッコ調査の予備データによると、興味深いことが判明しました。

 

ティンカー博士はまた、

「この沼地では、ラッコの主食はカニ、貝、虫、また巻貝や他の沼の底に住むものです。データによると、ラッコが生息している沼地には、より健康的な海草の寝床があることが今のところわかっています。カニが少なくなれば等脚類(フナムシのような虫)やウミウシ類などは海草についている藻類を食べるため、海草の成長を促すのです。」

とも述べています。

 

沼地に住むラッコはコンブを寝床にするのと比べてどうなのでしょう。博士によると、コンブを自分の体や仔に巻き付けて流されないようにする代わりに、沼地に棲むラッコは海草を使うか、もしくは沼地の水路に隠れて浮いているのだそうです。

 

「ラッコは、いわば『炭鉱のカナリア*注』の海版で、人間に影響する可能性のある環境汚染を示す動物でもあります。私たちはラッコが食べるのと同じ海産物の多くを食べますから、ラッコの食べ物にある有毒物質は私たちが食べる海産物にも存在する可能性があります。」モントレーのピントレイクから広がった、ラッコを死に至らしめた汚染物質についての動画もぜひご覧ください。

 

エルクホーン・スルーでは、河口に住むラッコをより完全に、より深く理解するために、個々のラッコを追跡調査しています。研究者たちはすくい網やその他さまざまな方法でラッコを捕獲します。こちらが、2013年9月19日にエルクホーン・スルーで研究者たちがラッコを捕獲した際の動画です。(カリフォルニア州魚類野生動物局より)おそらく、この捕獲調査により、ラッコをいかにしてかつての生息地域へ戻すかを研究者たちが理解し、資源管理者たちにそのためのよりよい情報を提供する手助けとなるでしょう。そして、いつか私たちがラッコたちを地元、サンフランシスコ湾で見ることができるかもしれません。

 

ラッコの保護に関しては、Friends of Sea Ottersというウェブサイトで更に学ぶことができます。ラッコの数を数える技術を試すなら、USGSのウェブサイトにOtter Spotter Gameがあります。また、エルクホーン・スルーで休んだり遊んだりしているラッコを観察できるラッコカメラ(昼間のみ)も設置されました。多くは雌とその仔たちです。また、私たちが分かち合っている、素晴らしい自然環境や陸海の接点を享受し、守ることでラッコたちを救うこともできるのです。

 

注*いわゆる炭鉱のカナリアは、炭鉱においてしばしば発生するメタンや一酸化炭素といった窒息ガスや毒ガス早期発見のための警報として使用された。本種はつねにさえずっているので、異常発生に先駆けまずは鳴き声が止む。つまり危険の察知を目と耳で確認できる所が重宝され、毒ガス検知に用いられた。

Wikipedia カナリア

 


元記事:KQED SCIENCE

Sharol Nelson-Embry / September 27, 2013

http://blogs.kqed.org/science/2013/09/27/can-sea-otters-make-a-comeback-in-the-san-francisco-bay/