【記事】オレゴン州ラッコ復活実現可能性調査、連邦から資金を得る | Bringing back Oregon's sea otters gets federal bucks for feasibility study

本日は’2020年2月12日付のKUOWより、"Bringing back Oregon's sea otters gets federal bucks for feasibility study"をお届けします。オレゴン州では、将来的なラッコの再導入の再挑戦に向け、少しづつ動きがみられています。それでも、実際に導入されるのは数十年先になるかもしれません。

野生のラッコをオレゴン州沿岸に呼び戻そうとする団体が、大きな一歩を踏み出した。連邦政府は、可能な再導入の取り組みの実現可能性調査を開始するための助成金を与えることになった。

昔、ラッコはオレゴンの太平洋岸にたくさんいた。しかし1世紀以上前に、毛皮猟師たちがラッコを一掃してしまった。ラッコは50年前にカリフォルニア州、ワシントン州、ブリティッシュコロンビア州、アラスカ南東部への再導入に成功した。しかし、その後オレゴン州に自然に戻ってはいない。

 

オレゴン州にラッコを復活させようとしている非営利団体『エラカアライアンス』 (Elakha Alliance) の名称は、『クラツォップ・シノウカン』 (Clatsop-Chinookan) 語でラッコを意味する言葉に由来する。

 

エラカアライアンスのボブ・ベイリー理事長は、「はい、ラッコかわいいですが、それがラッコを再導入する理由ではありません」と述べた。「ラッコはキーストーン種です...ラッコがもしここにいたらどうだったかを考えると、オレゴン沿岸の生態系とその生産性や回復力は(ラッコがいないことで)間違いなく損なわれてきたといえるでしょう」

 

特にラッコはウニの個体数を抑制している。ウニはケルプの森を食べてしまう。もしラッコが戻ってきたらもっとケルプの森が繁茂するはずだとベイリーは言う。ケルプは様々な海洋生物たちにシェルターと食物を提供し、また炭素を隔離する。

 

ベイリーは、オレゴン州でラッコを再導入する可能性を探る実現可能性の研究実施するため、米国魚類野生生物庁から4万ドルの資金を獲得することができたのは「本当にうれしい」と述べた。

 

ベイリーはインタビューで、「私たちにとってそれが全てです」と述べた。「これは、どの鍵が使えるかどうかを調べる鍵穴です。それ以外は、この実現可能性調査の結果次第です」

 

ベイリーは、『野生生物協会』 (The Wildlife Society) オレゴン支部のユージンで開かれた年次会議の出席者たちに4月に予定されているこの研究の開始について説明した。

 

米国魚類野生生物庁 (Fish and Wildlife Service) の現場責任者、ミシェル・ズワルツは、ラッコのオレゴン沿岸への復帰の可能性について最終決定権を持つであろう連邦および州当局の頭にある多くの問題について議論した。

 

「適切な生息地が十分にあるでしょうか」とズワルツは修辞的に尋ねた。「十分な餌があるでしょうか?コミュニティや他の種にどのような影響があるでしょうか?」

 

ズワルツは、実現可能性調査のための魚類野生生物局の資金は純粋に「調査のため」であり、ラッコの再導入に最終的にゴーサインが出ることを想定しているわけではないと強調した。ズワルツはこの問題にとって人間は、生物学的あるいは生態学的な考慮事項と「同じくらい重要です」と述べた。

 

「ラッコの再導入に対する大衆の支持はあるでしょうか?沿岸地域の経済にはどのような影響があるでしょうか」と彼女は続けた。「プラスの影響とマイナスの影響があるかもしれません。しかし、私たちは、再導入の潜在的な影響が何なのか、一般の人々が十分な情報を得て理解できるようそうした情報を公開することが重要だと考えています」

 

とてもかわいいラッコは観光業界にはいいかもしれない。しかし、水産業界は慎重だ。ラッコが食べるものの一つにダンジネスクラブがあるが、これはオレゴン州の商業漁業にとって唯一の最も価値あるものだ。

 

「はっきりとした懸念と注意をもって進めることになります」と、オレゴン・ダンジネスクラブ委員会の広報責任者、ティム・ノボトニーは言う。

 

ノボトニーは、「ラッコは他の場所の漁業とはあまり良い反応を示していません」と述べ、特にアラスカについて言及した。

 

オレゴン州南部では、僅かながらウニ漁も行われている。ベイリーは、こうした商業漁船の船長ともすでに連絡を取っているという。

 

ラッコのファンも懐疑論者も、ラッコは新陳代謝が高く、生き残るためにはたくさん食べる必要があるとわかっている。シアトル水族館の自然保護研究責任者、ショーン・ラーソンによると、ラッコは毎日体重の25%のエサを消費している。

 

オレゴンの海岸はにぎやかなで、以前ほど自然が残っている場所ではない。しかし、長年ラッコの専門家であるラーソンは、ラッコがカリフォルニア州中央部で回復することができるなら、おそらくオレゴン州でも同じことが起こるだろうと述べた。

 

ラーソンはインタビューで、「モントレー周辺は人口密度の高い海岸線です」と述べた。「人々はエルクホーン湿地帯という河口域を見つけました。『いいね。ここは守られている。たくさん人がいるのはわかってる。何が起こるかは分からない。とりあえずラッコをここに移動させてどうなるか見てみよう』と、こういういう感じなのです。それは大成功でした。おそらく、現在は100頭近くのラッコがそこに生息しているはずです」

 

 

カリフォルニアラッコの群れ(CREDIT: LILIAN CARSWELL / USFWS)

ラーソンは、ワシントン州とブリティッシュコロンビア州の海岸線に生息する野生のラッコの個体数の監視に携わっている。現在、同地で見られるラッコの個体群は、1969年から71年の間にアラスカから移植された少数のラッコの子孫だが、同じ時期にオレゴン州南部沿岸で放流されたラッコは数年後に謎の失踪をした。

 

ベイリーは、来年の冬までに、実現可能性調査の草案を公開したいと述べた。エラカアライアンスによると、ラッコたちがまだどの個体群からかわからないが、そこで捕獲されオレゴン州に移されるまでには、再導入の研究や合意の形成、そして許可までに何年もかかる可能性があるという。

 

オレゴン州立大学海洋哺乳類研究所の修士課程の学生が最近発表した研究によると、人間の活動に支障が出る可能性はしばらく置いておいても、オレゴン沿岸には約4,500頭のラッコが生息可能な適切な生息地があることが分かった。多くの岩の多い岬とブルケルプの森があるオレゴン南部の海岸線は、最高に質の高い生息地だった。

 

しかし、研究論文の著者であるドミニク・コーンは、野生生物の管理者は、人間がオーバーラップして利用するこが再導入の成功に影響を与える可能性のあることを考慮しなければならないだろうと警告している。コーンは他の商業漁業、レクリエーションボート、船舶交通、ワイルドライフ・ウォッチングと同様、ウニ漁業が相互作用の最大の影響を受ける可能性があることを確認した。

 

沿岸部族、特にシレツ・インディアン部族およびコキール・インディアン部連合が、再導入を強く支持している。シレツ族の文化資源技術者でエラカアライアンスの理事を務めるピーター・ハッチは、ユージンで開催された野生生物科学会議で自らの仲間にとってのラッコの重要性を説明した。彼は、豪華で柔らかいラッコの毛皮はかつて、部族の一員が所有したり譲渡したりできる最も貴重な財産の一つだったと指摘した。

 

「私たちにとってチャンスの時です」とハッチは言う。「しかし、最終的にラッコをオレゴン沿岸に連れ戻せるようになるには、多くのことを正しく行う必要があります」

 

ラッコは18世紀から19世紀にかけて毛皮交易の一環として太平洋岸北西部沖で局地的に絶滅に追いやられた。

 

エラカアライアンスは最近、第2の助成金を獲得したという情報を得た。エラカアライアンスは、オレゴン州沿岸のラッコの復活を支援するコミュニケーション・アウトリーチ事業者を雇用し、同事業者に11万ドルの助成金を支払う。