【記事】失われたオレゴンのラッコ(4):未来 | The Lost Sea Otters of Oregon: Part Four

本日は2019年10月23日付のOregon Wild のブログから、シリーズ最終回The Lost Sea Otters of Oregon: Part Fourをお届けします。
現状を理解し、その影響を知ることは「ラッコがいる未来」のための第一歩です。
全くレベルは違いますが、らっこちゃんねるがこうして細々とラッコのに関する情報をお届けしているのも、日本に戻りつつある野生のラッコたちをどのように受け入れ、守っていくか皆さんが考えるきっかけとなって欲しいと思っているからです。

科学者、部族、地域社会のリーダー、およびその他の専門家は、私たちが認識している以上に機会が近いと考えているようだ。

 

ベイリーは言う。「私たちの組織は、エラカ・アライアンスと呼ばれています。エラカはクラッソップ先住民、チヌーク先住民の言葉でラッコという意味です」

 

これもまたボブ・ベイリーだ。彼は他の利害関係者と協力してデイビッド・ハッチの遺産を継続している。ハッチは数十年前、ラッコの帰還とオレゴン州沿岸での利益の可能性を探るため、エラカ・アライアンスを設立した。

 

沿岸生態系の活性化のような利益。

 

ロバート・ケンタはアライアンスの理事でもある。ケンタはラッコが単なるキーストーン種以上のものとみなされるかもしれないという考えについて話している。

 

「私たちがエラカ・アライアンスシンポジウムを開催したとき、発表者の一人がラッコを指して 「ウルトラキーストーン種」 という言葉を使った。どんな種に対しても、その言葉を初めて聞きました。ラッコは生態系の維持を助けるだけでなく実際に生態系を作っているのだとその人は説明しました」とケンタは説明する。

 

ベイリーは次のように付け加えている。「現在分かっているように、ラッコは沿岸生態系のキーストーン種です。ラッコはケルプの森の繁栄を完全に可能にし、ケルプの森が生物生産性に大きく貢献していることを知っています。ケルプの森は水塊を緩衝して減速し、卵や幼生を保持し、若い魚が遊ぶ場所を提供しています。地上は、鳥の餌場があります。ケルプの森は沿岸の森に似ていると考えられるように、そこにいると、生産性に貢献する非常に多くの生物学的関係をもたらす。ケルプの森がないと生産性は失われます。ラッコはそれを可能にしました」

しかし、ラッコがいなければ、環境は劇的に変化する。草食性のウニは天敵がいなければ、海の景色を損なうほどケルプの森を荒々しく破壊してしまう。そして、ケルプの森に依存している他の海洋生物の多くは、突然脆弱になってしまう。何千年にもわたって発展してきた生態系はバランスを失ってしまうのだ。

 

しかし、ワシントンで見られるようにラッコが沿岸に戻れば、ウニの数が抑制され、ケルプの森が繁栄し、ケルプに依存する他の種が回復する。そして、海藻が沿岸の生態系にもたらす恩恵を示す証拠は急速に増えている。


「商業的にも娯楽的にも重要ないくつかの魚種には、生息地が回復し稚魚の生育場所を提供することなど、他にもさまざまな利点があります」とコーンは語る。

 

実際、ケルプの森の再生を助けるすることで、ラッコは私たちが現在直面している最大の脅威である気候変動と戦うための鍵となるかもしれない。

 

「また、ケルプの補充によって、ケルプの森がそこになかった場合よりも多くの炭素を吸収できる可能性があるという推測もあります」とコーンは付け加える。

 

陸上の森と同様に、ケルプの森は大量の炭素を閉じ込め貯蔵する可能性があり、大気から二酸化炭素を隔離するのに役立っている。ラッコが沿岸の生態系のバランスを回復するにつれ、回復しつつあるケルプの森は、地球を急速に温暖化させている温室効果ガスの吸収に役立つかもしれない。


しかし、このような沿岸の生態系の変化には何十年もかかる可能性があり、ラッコが自らオレゴンへやってくる日は当分なさそうだ。

 

モーザーは次のように言う。「オオカミのような他の種とは異なり、ラッコは新しい生息地を確立するために定期的に長距離を移動することはなく、生物学者が言うように自然に分散することはありません。ラッコは自分の故郷の近くや、浮いているコロニーのような確立された社会構造の近くにとどまる傾向があります。オレゴン州沖では目撃例がいくつかありますが」

 

「オレゴン沿岸で時々ラッコが目撃されることがあります。最近、クース湾の河口近くのアラゴ岬で目撃がありました。デポー湾の近くでも時々目撃されています。これらのラッコは、オリンピック海岸沿いの個体群から南に流れ着いた若いオスであると考えられています−オレゴンの海岸に沿って南下するカリフォルニア海流に乗ってラッコが南へ移動するるという理論に基づいています。更に、オリンピック海岸沿いの個体群は、サンフランシスコ湾のずっと南にあるカリフォルニアの個体群よりも、オレゴンにずっと近いのです。まだまだ長い道のりです」とベイリーは言う。

 

十分な時間があれば、ラッコは最終的にオレゴン海岸に戻ることができるだろう。

 

代替案は積極的な再導入だ。失敗に終わったアラスカからのラッコの移植と違って、ラッコを再確立させようとする現代の試みは、単にラッコをオレゴン海岸に放ち無事を祈るだけでは十分ではないだろう。科学者たちが取り組んでいる重要な問題の1つは、これらのラッコの個体群の源がどこから来るか(カリフォルニアラッコまたは北部の個体群)、そしてそれらがオレゴンの沿岸の生息地とどのように適合できるのかということだ。

 

ドムはこの問題に取り組んでいる。

 

「遺伝子と、ラッコたちがどのような生息地に慣れているかに基づき、アラスカラッコとカリフォルニアラッコのうxひのどちらの亜種がオレゴン海岸に住むのにより適しているかという仮定です。しかしオレゴン海岸沿いの遺跡で見つかったラッコの考古学的な残存物について行われたこれまでの遺伝学的研究を実際に見てみると、より多くの遺伝的な勾配があることがわかります。つまり、アラスカラッコとカリフォルニアラッコ両方の個体群に由来するタイプの遺伝子があるのです。そのため、遺伝学に基づいて、どちらがオレゴン海岸に住むのに適しているかどうかを判断するのは困難です。しかし、その種の生息場所の特徴や環境条件に慣れているラッコを導入しようという議論が生まれる可能性もあります」とコーンは言う。

 

しかし、再導入の仕組みを議論する前に、まず包括的な実現可能性調査を完了しなければならない。この研究では、再導入が沿岸の生態系、経済、コミュニティに与える全体的な影響を調べる。

 

そして、どんな衝突が起こり得るか。

 

ベイリーはこう説明する。 「海の利用者の中にはラッコの再導入を懸念している者もいます。ラッコは貝類を食べますが、ウニがあればそれがラッコにとって好ましい食べ物です。しかし、南部沿岸にはウニの養殖業者がいて、ラッコが現れて今収穫しているウニを獲ってしまうことを懸念している可能性があります。同様にラッコはカニを食べるので、カニ漁従事者は懸念するかもしれません」

 

在来種を歴史的な生態系に再導入する場合と同様に、その復活によって影響を受ける可能性のある地域社会を関与させるためには為すべきことが多い。ラッコが様々な商業漁業や余暇としての漁にどの程度影響を与えるかはまだ不明だが、このプロセスが進むにつれ、コミュニケーションのルートを開くことが不可欠になるだろう。

 

オレゴン州のラッコの将来がどうなるのかはまだ不明だ。しかし、私たちが知っているのは、一般市民が果たすべき重要な役割があるということだ。

 

「一般の人々にとって、彼らは利害関係者そのものであり、人々の意見や価値観は重要であり、彼らの声や意見に管理者は耳を傾けるべきです。一般の人々は、ラッコの再導入に賛成であれ反対であれ、支持者になる大きな可能性を秘めていると思います」とコーンは付け加える。

「私たちは、経済的に重要な種だけでなく、食物連鎖の崩壊など、あらゆる課題、リスク、損失に直面しています。このようなリスクや課題に直面したときには、コミュニティや生息地の回復力を上げ、強化することを常に心掛けてください。そうしたことに理解を深めることで、気候変動による影響や生息地や資源の個体数の全体的な減少に対し回復力を構築する方法として、ラッコの再導入に賛成してくれることになるのを期待しています」とケンタは説明する。

 

 

成功するためには、長い時間をかけて考える必要もある。

 

ハッチは、「ラッコはオレゴンから瞬く間に消えてしまいました。私の祖父が生まれる数年前からいなくなりました。願わくば、私の孫が出来る頃には、孫たちがポートオーフォードやケープアラゴに行って、私の先祖がいつもそうであったように、海岸でラッコたちが遊んでいるのを見られるようになって欲しい。重要なのは、天然資源を守るために直面する日々の課題や毎年の課題に煩わされず、孫に経験して欲しいことを多世代的にに考え始めることだと思います」と結論づけている。

Oregon Wild Blog
The Lost Sea Otters of Oregon: Part Four
October 23, 2019