【記事】適正なラッコの個体数とは | How many sea otters are good?

本日は2019年4月17日付のFiarbanks Daily News-Minerより、"How many sea otters are good?をお届けします。コディアック付近でもラッコが増加してきているようですが、人間と資源をシェアしている以上、人間による「管理」は必ず問題になってくるでしょう。

コディアック周辺の海洋生態系においてラッコは重要な役割を果たしている

先日、ある4月の晴れた日、天気が雨やみぞれに戻る前にと、私はコーヒーを飲みに港へ赴いた。この夏、クルーズ船が増えることを考えていて、野生生物観察が思い浮かんだ。

 

その野生生物はドックのすぐそばでくつろいでいた。2頭のラッコが怠惰な様子で見ずに浮かび、私のことや私のカメラや、数メートル離れたところに繋いであるイヌのことすら気にも留めていなかった。可愛らしく、ラッコらしい様子で並んで浮かび、時々手を繋いだり足ヒレを小刻みに動かしたりしていた。太陽がそのブロンドの顔や高級そうな栗色の毛皮を照らし、水滴がひげを飾っていた。

 

オーシャンサイエンスディスカバリープログラムで、コディアックの小学4年生はラッコとラッコが食物網で果たす役割についてちょうど学び終えたところだった。そのプログラムは10年継続しているが、子どもたちはラッコ、ウニ、ケルプの森の繋がりについて学ぶのだ。

 

簡単に言うと、ラッコはウニを食べ、ウニはケルプを食べる。ラッコがいなければウニはケルプを食べつくし、生物多様性のない生態系ができあがる。腹ぺこのラッコがウニをコントロールすれば、ケルプが育ち森となり、多くの生物のすみかとなる。このプログラムを通じ、子どもたちはまたラッコの物語がロシア時代のコディアックの歴史とどのようにつながっているのかを学ぶ。子どもたちはラッコの毛皮に手で触れ、毛皮貿易商がなぜラッコ猟をしたがり、その毛皮に中国人がなぜ多くの金を払ったかを知ることができる。

 

しかし、コディアック周辺やアラスカ南東部ではだれもがラッコの個体数増加を歓迎しているわけではない。ロシア時代にラッコが乱獲により絶滅近くになると、1911年にラッコは厳格な保護の対象となった。アラスカ南東部では当時地元の生物のリストからはフワフワの顔は完全に消えてしまっていたが、1960年代に約400頭が再導入された。何年もの間、個体数は少なく発展中の水産業とはうまく共存しており、全ては良好だった。しかし、ラッコは順調すぎてラッコが多くいる場所で商業的な漁が落ち目になってきた。コディアックの小学校4年生なら誰もがしっているように、ラッコは食欲が旺盛で、ウニや貝、ナマコや他の多くの無脊椎動物や魚などを体重の30%ほども食べる。対して人間は毎日体重の4%ほどしか食べないし、馬は6%ほどだ。アラスカ南東部やコディアック周辺でも、漁師の中にはより積極的なラッコの個体数管理を求める人もいる。

 

アラスカ大学シーグラントの研究では、アラスカ南東部におけるラッコの個体数の増加とそれがもたらす魚介類の個体数に対する影響について詳しく考察している(https://bit.ly/2Pd8ray)。コディアックでは、ラッコが増加しているのが見て取れるが、私が知る限りでは近年あるいは現在個体数増加に関する調査は行われていない。カリフォルニアではラッコが生息していない場所ではウニ砂漠(磯焼け)になるところもあればケルプの森が繁栄しているところもあるとの研究がある。カリフォルニアには、アラスカには生息しないウニの天敵が2種いる。カリフォルニアシープヘッドと呼ばれる魚と、スパイニーロブスターだ。その研究では、ウニの捕食者の個体密度がうまくウニの個体数を制御しているものとみている。

 

カリフォルニアやアラスカ南東部あるいはコディアックの沿岸地域について懸念しているにしろそうでないにしろ、食べ物を巡りラッコと直接競争することになるなら、適正なラッコの数というものがあるように思われる。生態系の多様性が失われてしまうためラッコに消えて欲しくないと思う一方で、ラッコは非常に大食漢なのでおいしい魚介類をめぐる大きな競争相手でもある。

 

問題はシンプルだ。ラッコが現在何頭いて、その地域には何頭のラッコが適正なのか。その答えはより複雑だ。なぜなら、その答えは年毎に変わるかもしれないからだ。だとしたら、単純な試行錯誤ゲームをすることなく地域の資源に対する生態系を元にした管理をうまくすることができるだろうか。水産業管理者にとって、非常に難しい問題だ。

 

その間、この夏ここの動物たちを見るためにはるばる何千マイルもやってきた観光客に、喜んでラッコを見せてあげたいと思う。子どもを胸に乗せた母親や、年配の大きなオスなど、私たちがいても気に留めないラッコたちがいたらとても嬉しい。私にとっては、人間の強欲のために乱獲され絶滅の危機に瀕しながらも、同じ人間の慈悲により救われ、驚くべき復活を遂げたフワフワの顔をしたラッコの物語に、美と慰めを感じる。

 


*Switgard Duesterlohはオーシャン・サイエンス・ディスカバリー・プログラムを運営しており、学校の子どもたちに実地の海洋科学学習ユニットを提供している。

Fiarbanks Daily News-Miner
by Switgard Duesterloh

How many sea otters are good?

April 17, 2019