【記事】ラッコレスキュー:原油流出事故の影響 2 | Sea Otter Rescue : The Aftermath of an Oil Spill part 2

1989年3月24日、1艘の巨大タンカー、エクソン・バルディーズ号がアラスカ州プリンスウィリアム湾のブライ岩礁にぶつかり座礁し、当時米国史上最悪の原油流出事故となりました。
バルディーズとスワードにラッコレスキューセンターが作られ、多くのスタッフとボランティアが、油で汚染されたラッコを懸命に助けます。この洗浄・リハビリを行ったポイントデファイアンス動物園水族館のローランド・スミス氏の本、Sea Otter Rescueの翻訳をお届けします。本の写真は掲載できませんので、Archive.org(https://archive.org/details/seaotterrescueaf00smit/page/n71)でご覧ください。

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1 米国史上最大の原油流出事故

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アラスカ州プリンス・ウィリアム湾の寒冷で透き通った海にはかつて1万から1万5000頭のラッコが生息していた。ラッコは湾内の数千マイルに及ぶ海岸線沿いで繁栄していた。

 

プリンス・ウィリアム湾はかつて「アラスカのエメラルド色の宝石」と呼ばれていた。その湾の美しさとそこに住む野生生物を悲劇的に破壊する出来事が起こるまでは。湾の北端にあるアラスカの小都市、バルディーズから全てが始まった。1989年3月23日の夜、エクソン・バルディーズ号という名の巨大タンカーが巨大なタンクに4200万ガロン(約1億5900万リットル)の粘りのある有害な原油を積み、バルディーズにあるターミナルを発ち、湾内の危険な海域を進んでいった。

 

空から見たバルディーズ港(Alaska State Archives)
空から見たバルディーズ港(Alaska State Archives)

スーパータンカー

バルディーズ市は規模は小さいがアラスカの中でも最も混雑している港の一つだ。毎日あらゆるところから巨大タンカーがバルディーズの石油ターミナルへやってきては、巨大なタンクに何百万ガロンもの原油を積み込んでいく。一年に900ものタンカーが「満タン」にするためにターミナルのドックに入ると推定されている。原油はノーススロープの油田から採掘され、800マイル(約1280km)のパイプラインをポンプで運ばれ、最終的にバルディーズまでやって来る。バルディーズに到着すると、原油は巨大タンカーが製油所へ運ぶまで巨大な貯蔵タンクに貯められる。原油は製油所でガソリン、化学製品、プラスチックなどの製品となる。

 

世界中に3,200以上の原油を製油所へ運ぶ巨大タンカーがある。これらのタンカーが「巨大」と呼ばれるのは、長さが900フィート(約810m、アメリカンフットボールのフィールドの3つ分)で、幅150フィート(約135m)以上あるからだ。こうした船の中には、一度で7000万ガロン(約2億6500万リットル)の原油を運ぶことができるものもある。

 

その大きさゆえ、巨大タンカーは舵を取ることが非常に難しい。岩礁や大きな岩にぶつからないよう、船長はまだ障害物が何マイルも先にある時から、障害物の周りをまわるための舵を切り始めなければならない。

 

Roland Smith
Sea Otter Rescue - The Aftermath of an Oil Spill
Published in  1999