【記事】規制されている高価なラッコ皮 | Alaska Made: Sea otter pelts are highly prized, tightly regulated

本日は2018年12月24日付けのKTOO Public Mediaより、"Alaska Made: Sea otter pelts are highly prized, tightly regulated"をお届けします。アラスカ先住民にとって、伝統を受け継ぐことは重要です。

ピータースバーグの住人ウィル・ウェアが居間でラッコの手袋の縫製を行っている(Photo by Angela Denning/KFSK)

アラスカは合法的にラッコの毛皮の取引が認められている数少ない場所の一つだ。ラッコは一部地域では絶滅危惧種に指定されているが、アラスカ南東部では激増している。

 

コーストアラスカの「アラスカ製」シリーズの一つとして、今回は、珍重されているラッコの毛皮の取り扱いが許されているのは誰なのか、またどのように取り扱うべきなのかを規定した厳しい規制について、深く見てみよう。

 

ラッコは世界で最も毛の密度が高く、1平方センチメートルあたり最高で100万本の毛が生えている。切った時に舞い上がるほど、フワフワの毛だ。

 

ピータースバーグのウィル・ウェアは自宅の居間でミシンに向かい、縫製を行っている。袖をまくり上げ、細心の注意を払ってアザラシ皮の手袋を縫っている。一番上には、ラッコの毛皮が3インチ(約7.5cm)ついている。

 

ウェアは約8年、ラッコ猟を行っており、時には息子を連れていくこともある。毛皮は近くのケーク村でなめしてもらう。ウェアは無駄がないよう、毛皮を使う。毛皮は1枚当たり200ドルほどするからだ。

 

「なめしてもらうのに非常にお金がかかります。毛皮を買うと高いんです」ウェアはTaakdeintaan族のトリンギット先住民だ。「私たちの部族は、何百年も何百年もラッコ猟を行ってきたんです」

 

アラスカ先住民には、ラッコ猟の制限はない。ウェアは帽子や手袋、スカーフ、テディベアなど様々なモノを作るために年間30頭から40頭のラッコをしとめる。それで沢山稼げるわけではない。ウェアは別にフルタイムの仕事をしている。しかし、ピータースバーグにギャラリーをもっており、オンラインで作品を販売している。

ピータースバーグアメリカ先住民協会でラッコ皮を見せるウィル・ウェア(左)とデレック・ロペス。2011年。(Photo by Ed Schoenfeld/CoastAlaska)

世界のラッコの90%はアラスカに生息しているが、20世紀初頭には毛皮交易のためほぼ一掃された。1960年代、アリューシャン列島からアラスカ南東部へ約400頭が再導入され、それが功を奏した。

 

現在、水産業者はラッコの数が増えすぎたと苦情を言っている。ラッコは、カニやウニなど漁師が商業として行っている海産物を食べつくしてしまう。

 

ウェアは、ラッコはタフで賢く、「見たら本当に可愛らしい。可愛いということは皆さんご存知でしょう。ラッコはたまたま世界で最高の毛皮をまとっているだけなのです」

 

しかし、現在ラッコ皮の取引は衰えている。町では、手縫いで毛皮を縫製する方法を教えるワークショップが行われている。6名ほどの参加者がラッコの茶色の毛皮に覆われたテーブルの代わりに座っている。

 

マーカス・ゴーはジュノーにあるシーラスカ・ヘリテージ・インスティテュートから町へ派遣された講師だ。彼は生徒が縫い目の上に薄く接着剤を塗るのを手伝っている。

 

マーカス・ゴーがジャネット・ストリックランド(左)とポリーン・ヤングにラッコ皮の縫製の仕方を教えている。ピータースバーグのシーラスカ・ヘリテージ・インスティテュートワークショップにて。(Photo by Angela Denning/KFSK)

「手縫いほうがよくなることもあります」とゴーは言う。「このピルボックス帽のような場合です。私はいつもこの帽子は手縫いです」

 

連邦法ではラッコ製品の大量生産は禁じられている。なめした、未加工の皮を所持できる人は少なくとも4分の1のアラスカ先住民の血が必要だ。ラッコ製品は、他人と共同制作することはできない。個人の職人しか加工できない。

 

このような教室は例外だ。

 

しかし、規制の輪を潜り抜けるのはゴーにとってそれだけの価値がある。ゴーは年間40頭ほどのラッコを狩るが、金のためではないと言う。

 

ギリン・レッチャーとマーカス・ゴーがラッコ皮でできたピルボックス帽をかぶって作業している。ピータースバーグのラッコ皮縫製クラスにて。(Photo by Angela Denning/KFSK)

「ラッコ皮やアザラシ皮、その他の海洋哺乳類の皮を使う時、先祖との強いつながりを感じます」とゴーは言う。「他の人々にも、そうしたつながりをもってもらう機会を与えてもらったことに感謝しています」

 

このクラスがなんらかの兆候となれば、アラスカ先住民は工芸を続けていけるだろう。そして、素材となるラッコはたくさんいる。

ラッコ皮は世界でもっとも密度が高く、1平方インチ当たり100万本の毛が生えている。(Photo by Angela Denning/KFSK)

アラスカ南東部のラッコ個体数は順調に増えている。数年前の個体数調査では、約26,000頭だった。科学者は、現在の個体群は40,000頭ほどまで成長すると推測しているが、データは古く、米国魚類野生生物庁は来年、個体数調査のアップデートを急いでいる。