【記事】青いイルカの島のラッコたち(2) | Sea Otters on the Island of Blue Dolphins, Part 2

本日は2018年7月27日付のSea Otter Savvyのブログより、"Sea Otters on the Island of Blue Dolphins, Part 2"をお届けします。カリフォルニア沖のサンニコラス島でラッコの調査を行っている生物学者のお話です。

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パート3>>

サンニコラス島のラッコ調査チームは、まずラッコを探して曲がりくねった道をその名の通りロック・クラッシャー(岩砕き)と呼ばれる浜へ車で向かう。ロック・クラッシャーは島の西南端にあり、波が打ち付ける、異世界のような形の岩や、ゾウアザラシや、サンニコラス島で最もラッコを見られる可能性が高い場所として知られている。この場所のケルプは海岸から沖2キロメートルまで連なり、ラッコの個体群の成長に最適な場所となっている。調査の初日は、しかしながらこうしたものは海に漂う濃い霧に隠れほとんど見えなかった。風は穏やかで空気も静かで、波も穏やかだった。最も近くにある岩と休んでいるゾウアザラシだけが見えた。その先はパールがかったグレーの中に溶けていた。今日は、サンニコラス島は秘密を霧の中に隠しているようだ。

 

よく眠った次の朝、私たちは明け方に起きて天候とその日の計画を確認した。高台にある私たちの宿舎から一塊の霧が見えるが、まだ視界がはっきりしないということを示している。サンニコラス島のラッコ個体数調査の監督は米国地質調査所西部生態学調査センターのブライアン・ハットフィールドが30年間その責任を負ってきた。予想通り、ハットフィールドは島を不均衡に4分割(南東部、南西部、北部、ボイラーズと呼ばれる沖の岩礁)し、メンバーに岩の多い海岸線を割り振った。サンニコラス島はチャネル諸島で2番に小さく、葉っぱの形をした島の西端から東端まで8kmしかない。調査員は最新の注意を払って担当セクションでラッコを探し、地図に記録しなければならない。やや霧がかかっていたが、チームはラッコを探して道を行くのに心が躍っていた。

 

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私が担当したセクションはボイラーズという岩礁で、その島を訪れるラッコ生物学者の中では悪名高い。この浅い岩礁は島の南西端沖3.5kmのところに頭を出しており、ジャイアントケルプ(Macrocystis pyrifera)の広大な繁殖地の足場となっており、またラッコを含む他の多くの生物に生息地を与えている。この場所の担当になった調査員は、最遠で4km沖のラッコを発見するだけでなく、数を数えなければならないという専門的な「ラッコ発見」スキルをもっていなければならない。こうした目的を果たすため、最も信頼できる道具はクエスター社の望遠鏡だ。通常のスポッティングスコープではなく、天空を観察するための(イタチ科の動物ではなく)本物の望遠鏡だ。

 

ボイラー岩礁の東にある丘の観察に適した場所に着くと、霧と視野を競うレースになっていることに気が付く。霧が動き出した。数分後には深い霧が風にのって岸に押し寄せてきたやめ、ケルプ床にいるラッコが見えるチャンスはなくなってしまった。霧が晴れるまで2時間待たなければならなかったが、少なくともアシカが吠える声やゾウアザラシがカツカツと鳴いたり波が頽れたりする音が私の仲間だった。昼の太陽の熱で、ついに霧が引き、私の望遠鏡の前にボイラー岩礁のケルプがカーペットのように広がった。

ゆっくりと望遠鏡をケルプ床の東端から反対側へ動かし、ケルプより濃く見える小さなラッコの姿を探す。1頭いれば、通常他にもいる。2頭、3頭、8頭、12頭の群れー4つの群れと何頭か単独のラッコを見つけた。その日の終わりまでに数えたラッコは、ボイラー岩礁で成獣40頭と幼獣5頭を超えた。チームの仲間と合流して、自分のセクションがその日数えたラッコの合計数の半分を占めていたことを知った。1980年代に移植が行われてから、サンニコラス島のラッコの合計が100頭に達したのは一度だけだ。今日はそれより少ないだろう。

サンニコラス島のラッコは繁栄しているようだ。ここのラッコは多くの高カロリーのエサを簡単に見つけている。広大なジャイアントケルプ床が島をぐるりと囲み、エサになる動物の生息地、ラッコが捕食者から隠れる場所、幼獣にとっての安全な場所を提供している。南カリフォルニアの喧騒は100マイル(約160km)も離れている。個体数が増えたり減ったりする理由を理解するのは単純なことではなく、はっきりした仮設にたどり着くことすら500ピースのパズルを組み立てるようなものなのだ。サンニコラス島のラッコが利用可能な場所いっぱいに個体群を成長させると期待していたが、移植から30年たってもラッコはこの島の環境収容力に達していないのだ。

 

ラッコの代謝(従って食欲も)は非常に高いため、どの場所に置いても、ラッコの個体群に関するパズルの鍵になる一つのピースはエサだ。その生息地で何が入手可能で何が豊富にあるか、そしてラッコたちは何を食べ物として選ぶのか。こうしたことから、このような四半期ごとの探検の重要な目的は、採餌データの収集で、これは2003年に私が論文のために行っていたことと全く同じなのだ。チームメンバーは信頼性の高いクエスターの望遠鏡を使いエサを獲っているラッコの場所を視認し、できるだけ長く追跡してエサを特定し、その数と大きさを推定する。比較点として、2003年にラッコたちが何を食べていたかは分かる(パート1参照)。エサは変わったのだろうか。大きく高カロリーのアカウニは今でも主要なエサなのだろうか。生息地自体に見られる変化とどのように関係しているのだろうか。カリフォルニアの本土でウニ砂漠(磯焼け)が増えているが、サンニコラス島のラッコは、科学者がラッコとそのエサであるウニの関係という深い謎を解き明かす手助けをしてくれるかもしれない。ラッコとウニ、カリフォルニア沿岸のケルプがどのように絡み合っているか、青いイルカの島のラッコたちパート3をお楽しみに。

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サンニコラス島の潮溜まりにいるムラサキウニ(Strongylocentrotus purpuratus) 。ウニは砂岩にゆっくりと自分用の穴を掘る。

Sea Otter Savvy

Sea Otters on the Island of Blue Dolphins, Part 2

July 27, 2018 by Gena Bentall