【記事】ホホジロザメにより母を失ったラッコのラングリー | Sea Otter Pup Langly Orphaned Due to Great White Shark

本日は2018年7月5日付のThe Marine Mammal Centerのニュースより"Sea Otter Pup Langly Orphaned Due to Great White Shark"をお届けします。現在、サンフランシスコ北部のサウサリートにある海洋哺乳類センターの病院では、3頭のラッコが野生に帰ることを目標にリハビリを受けています。

ラングリーの母親は、子どもを無事に浜へ連れてきた。海洋哺乳類保護センターの対応チームは子どもに第2の人生を与えるため介入を行った。

ボランティアで対応しているトニー・サロームが5月7日にラッコの親子を保護した際の記録は衝撃的だ。

 

簡単にアセスメントを行ったが、母親はサメに噛まれ傷を負ったにも関わらず、子どもを安全に浜に連れてくるために非常に多くのエネルギーを費やしたようだった。子どもは母親にしがみついて鳴いていた。プランAは親子を一緒に網で捕獲することだった。母親が子供を守ろうと攻撃してくるかもしれないと心配したが、もはやそれほどの力は残っておらず、むしろ母親を守ろうと戦っているのは子どものほうだった。

センターの保護チームは無事親子を網で捕獲し、ケージに収容し病院へ向かった。しかし、残念なこと母親はサメに噛まれ酷い傷を負っており、大量に失血していた。30マイル(約48km)も離れていないセンターの施設へ向かっている途中、母親は死んでしまった。

 

ラングリーの母親の死の原因となったようなホホジロザメによる噛みつきは、絶滅危惧種であるラッコの主要な死因となっており、カリフォルニア全域におけるカリフォルニアラッコの回復を制限している要因となっている。サメは通常ラッコを捕食することはないが(研究者はサメが好物のアザラシとラッコを間違えると考えている)、サメにとっての試食がラッコにとっては命取りになる。

 

親を失ったラッコの子どもが病院に到着すると、獣医のヘザー・ハリスが受入れのための検査を行い、そのメスのラッコは体調もよく明らかな傷はないと記録した。おそらくは、母親ラッコは子どもをサメから守ったようだった。

 

そのラッコの子どもは保護したボランティアによりラングリーと名付けられた。注意深く、活動的で元気なのは、ラングリーが生きるためのチャンスと戦ってきたという、良いサインだ。しかし、ラングリーは母親がいなくても生きていけるほど成長していたのだろうか。ラングリーの体の大きさや毛皮の状態や歯を注意深く見ると、ハリス博士はよい知らせを発見した。ラングリーは離乳年齢に近いため、間もなく母乳からホタテやカニ、エビやその他の甲殻類などのエサに変わることになっていたようで、すでにこれらのエサをいくらか食べていたようだった。ハリス博士は、ラングリーはよいリハビリ患者だろうと判断した。つまり、ラングリーが完全に固形のエサに変える手伝いをするのは、センターの動物ケア専門家次第だということだ。

 

センターでの最初の1か月、ラングリーは急に栄養豊富な母乳を失ったことや食欲の低下、自分で魚介類をかち割ることに難儀していたため、体重がやや落ちた。動物ケアボランティアはラングリーのため、ムラサキガイを割ったり、カニやエビの足をとったりとラングリーが固形のエサに容易に変えていけるよう、日に6度のエサを一生懸命用意した。

ラッコのラングリーがセンターに到着後健診を受けている Photo by Bill Hunnewell © The Marine Mammal Center, USFWS permit MA101713-1
ラッコのラングリーがセンターに到着後健診を受けている Photo by Bill Hunnewell © The Marine Mammal Center, USFWS permit MA101713-1

仲間を得たラングリー

ラングリーの全体的な体調と食欲はこの2か月間で良くなり、モントレーベイ水族館が保護した同じ年ごとのラッコ仲間を紹介することができると、特に元気になった。

 

ラングリーの新しい水槽仲間は2月、生後数か月の時にモントレーで座礁していた。まだ幼く母親がいなければ生きていくことができなかった。飢えてひどい寄生虫感染症にかかっていたため、体温を保持できず発作もあった。検査の結果、そのメスのラッコはドウモイ酸という成体毒素に晒されてきたことが分かった。この毒素は心臓や脳にダメージを与える可能性がある。

 

モントレーベイ水族館で4か月間集中的なリハビリを受けて過ごし、健康状態が大きく改善したため、他のメスのラッコと一緒に過ごすために移動させることがどちらのラッコにとってもよいことだと考えられた。6月半ば、このメスのラッコはラングリーの仲間になり、いずれ一緒に野生に返すことを目指して、センターに移送された。2頭の若いラッコたちにはすぐに強いきずなが生まれた。いつもお互い仲良く、常にインタラクションを持っている。

ラングリー(上)と水槽仲間(下)Photo by Tony Hoff © The Marine Mammal Center, USFWS permit MA101713-1
ラングリー(上)と水槽仲間(下)Photo by Tony Hoff © The Marine Mammal Center, USFWS permit MA101713-1

当センターを支えてくださる皆さんのおかげで、センターは20年以上海洋哺乳類におけるドウモイ酸をよく理解するための努力を主導してきた。センターの研究は主にカリフォルニアアシカを対象としてきたが、グアダルーペオットセイや最近はカリフォルニアラッコなどの絶滅危惧種もその対象となっている。私たちがケアしている間、この病気についてよく知り、ラッコにどのような影響を及ぼすかを知るため、磁気共鳴映像法(MRI)のような診断機器を用いることになる。

トキソプラズマと戦う3頭目のラッコ

この絶滅危惧種のリハビリのための場所を与えるため、水槽を改装して以来はじめて、センターは3頭のラッコを同時にケアしている。ピップはメスの成獣で、5月末にトキソプラズマで苦しんでいたところを保護された。脳に主に影響を及ぼす寄生虫により命に係わる状態だった。

 

ピップが最初に当センターに到着した際、低体重で野生のラッコらしい行動をしていなかった。弱って、筋肉の痙攣があり、空腹でも自分でエサを獲ることができなかった。こうした症状はすべてトキソプラズマが脳の機能に悪影響を及ぼしているというサインだ。

 

数週間にわたる抗寄生虫治療と特別なケアにより、ピップは神経機能も行動も改善がみられている。好き嫌いが多く薬を飲むのが嫌い(エビや魚に隠してある錠剤を見つけると吐き出してしまう)だが、エサは通常通り食べ健康的に体重を増やした。

 

現在は通常通りグルーミングを行っている。グルーミングは冷たい海の中で生きていくために必要不可欠だ。よく泳ぎ、検査のため捕獲しようと獣医スタッフが近づくと抵抗する。これは野生のラッコとしての本能をまだ持ち合わせているということだ。

ラングリー。Photo by Bill Hunnewell © The Marine Mammal Center, USFWS permit MA101713-1
ラングリー。Photo by Bill Hunnewell © The Marine Mammal Center, USFWS permit MA101713-1

野生へ帰す

これら3頭のラッコはリハビリで引き続き良くなっていけば、お互いに社交的になる機会を与えるため、獣医チームは3頭を一つの水槽に入れることを考えている。

 

ラッコたちが野生に帰る準備ができれば、センターの獣医らにより体内に追跡用の装置が埋め込まれる。ラッコの毛皮は生きていくのに不可欠なため(カリフォルニア沖の冷たい水の中で体温を保つ唯一の手段)、通常アザラシやアシカに取り付けているように衛星通信タグをラッコの毛皮に取り付けることはできない。

 

こうした先進的な追跡装置は、こうした絶滅危惧種を私たちがより理解し保護するのに役立つ。一つは無線送信機で、ラッコが野生で元気にしていることを確認できるよう、浜からその位置や動きをモニターすることができるものだ。これらのタグはラッコの進捗状況を追跡するため、何年もラッコに対して使われてきた。もう一つは、ライフヒストリー・トランスミッターで、死後衛星を経由してラッコの生涯に関する情報を送信するものだ。

 

センターが引き続きカリフォルニアラッコやラッコが向き合っている病気や他の脅威に関する科学的な知識に貢献し、ラッコの個体数回復ひいては絶滅危惧種でなくなることを可能にできればと思っている。

ご協力を!

モントレーベイ水族館からきて仲間になったラングリーの新しい仲間は名前を募集している。サウサリートの海洋哺乳類センターを訪れて名前を応募するか、Facebookやインスタグラムでシェアしてください。Eメールリストに参加すれば、好きな名前に投票したり、どんな名前が選ばれたか知ることができる。

未来を変えよう

ラングリーのような親を失ったラッコのリハビリを行うためには、特別なエサや環境が必要となるため、皆さんのような方からの財政的なサポートがなぜ必要かご理解いただけるでしょう。絶滅危惧種が大好きですか?今日、海洋哺乳類センターへの寄付を通じて、この命を救う仕事を可能にすることができます。

※外部サイト(海洋哺乳類センターの寄付ページ)へ移動します

The Marine Mammal Center

Sea Otter Pup Langly Orphaned Due to Great White Shark

July 5, 2018