【記事】ワイオミング大学のラッコに関する研究 | UW Researchers Study How to Improve Southern Sea Otters’ Chances of Survival

本日は2018年5月1日付のUniversity of WyomingのNewsより、"UW Researchers Study How to Improve Southern Sea Otters’ Chances of Survival"をお届けします。ワイオミング州はアメリカ大陸中西部にあり、イエローストーン国立公園で有名です。少し専門的な話になりますが、ボトルネック効果についてはこちらの記事に説明があります。

カリフォルニア州モスランディングで浮かんでいるカリフォルニアラッコの群れ。ワイオミング大学の研究者らは、遺伝学的多様性に乏しく、トキソプラズマによる脳障害等、サメによるかみつき、漁師による不法な銃殺に苦しめられているカリフォルニアラッコを繁栄させるための最善策を研究している。この新しい論文は、「広範囲に生息する種に対する特別な配慮を明らかにするための、カリフォルニアラッコの有効個体数の評価」と題し、エボリューショナリー・アプリケーションズ誌で5月1日に発表された。
カリフォルニア州モスランディングで浮かんでいるカリフォルニアラッコの群れ。ワイオミング大学の研究者らは、遺伝学的多様性に乏しく、トキソプラズマによる脳障害等、サメによるかみつき、漁師による不法な銃殺に苦しめられているカリフォルニアラッコを繁栄させるための最善策を研究している。この新しい論文は、「広範囲に生息する種に対する特別な配慮を明らかにするための、カリフォルニアラッコの有効個体数の評価」と題し、エボリューショナリー・アプリケーションズ誌で5月1日に発表された。

ワイオミング大学の研究者らは、遺伝学的多様性に乏しく、トキソプラズマ脳症等、サメによるかみつき、漁師による不法な銃殺に苦しめられているカリフォルニアラッコを繁栄させるための最善策を研究している。

 

現在カリフォルニア沿岸で3,000頭ほどを少し超えているこの小さなラッコの亜種は連邦法である絶滅に瀕する種の保存に関する法のもと絶滅危惧種に指定されている。

 

「この論文はカリフォルニアラッコの回復に必要不可欠な分析とデータを提供してくれます」とワイオミング大学獣医科学生態学プログラム学部のゲノム生物学病理生態学教授のホリー・アーネストが話す。「遺伝子の多様性が乏しく、それが停滞していることをこの論文は証明しています。個体数はやや増加傾向にありますが、遺伝子の多様性は増加していないのです」

 

「ラッコは中心となる場所では回復してきていますが、以前の生息域に再定着しているわけではありません」とワイオミング大学前ポストドクター研究員で、アーネストの研究を共に行ったエリック・ガニエは言う。「カリフォルニアラッコは現在、サンフランシスコ湾の南からサンタバーバラのすぐ北までの間に閉じ込められています。かつてはオレゴンを通じ、アラスカラッコと繋がっていました」

 

アラスカラッコはより個体数が多く、現在はワシントン州の北からアラスカにかけて生息している。

 

ガニエは現在コロラド州立大学でポストドクター研究員で、「広範囲に生息する種に対する特別な配慮を明らかにするための、カリフォルニアラッコの有効個体数の評価」と題した論文の筆頭著者であり、アーネストは上席著者だ。この論文は、エボリューショナリー・アプリケーションズ誌で5月1日に発表された。審査があり自由に閲覧可能なこの学術誌は、進化生物学から健康や社会、経済との関係に関する生物学的疑問に至るまでの様々な概念を用いた論文を掲載している。

 

ワイオミング大学ポストドクター研究員のカイル・グスタフソンもその研究に関わっていた。他にも米国地質調査所、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、カリフォルニア州魚類野生生物局、シアトル水族館、ワシントンDCのスミソニアン保全生物学研究所の研究者らがその研究に協力している。

 

1700年代と1800年代、カリフォルニア沿岸の至ところ、そしてロシアや日本にも「無数の」ラッコが生息していた、とガニエは言う。1900年頃、の度合いが著しかったカリフォルニアラッコは絶滅したと考えられていた。1938年にビッグサー付近で50頭ほどのラッコが再発見された。今日、その数は3,000頭ほどだとガニエは言う。

 

「数が激減すると、遺伝子の多様性が失われてしまいます」とガニエは言う。「個体数が回復してきても、遺伝子の多様性はそれほど早く回復しないため、個体群は脆弱になります」

 

カリフォルニアラッコは生態系にとって重要だ。ラッコのエサにはウニやアワビなどのような無脊椎動物が含まれるが、それらはケルプを食べてしまうからだ。ラッコがこれらの無脊椎動物を食べなければ、様々な魚にエサや生息地を提供しているケルプの森が失われてしまうとガニエは言う。

 

しかし、中心地でラッコの個体数が高い数字を示すようになると、ラッコのエサの供給量が限られてしまう。そしてラッコはその限られた生息域の中で数を増やすことが困難になってしまう。

 

「(カリフォルニア)ラッコの生息域が来たのほうへ広がってくれればと考えている生物学者もいます」とガニエは言う。

 

 

アラスカラッコを移植し、カリフォルニアラッコと繁殖させてカリフォルニアラッコの数を増やし、同時に遺伝子の多様性を促進する可能性もあるが、個体数の低下も考えられる。アラスカラッコがカリフォルニアラッコに病気をもたらす可能性もあり、また北へ泳いで逃げようとしその途中にサンフランシスコ湾付近でサメの襲撃に出くわすからもしれないとアーネストは言う。サメはその地域に集まっており、ラッコがサンフランシスコ湾を超えて北上するのを難しくしている。

 

カリフォルニアラッコはアラスカラッコよりも小さい。顔の構造と頭蓋骨の形もその2亜種では異なっているとガニエは言う。

 

有効個体数の研究

この論文は「有効個体数」という手法を検証したもので、カリフォルニアラッコの回復計画に含まれている。有効個体数は、その種の次の世代に遺伝学的に貢献する動物の評価である。

 

保全遺伝学的技術とその種の進化の可能性を考慮することがますますその種の保全に適用されるようになっている。例えば、有効個体数の推測はその種の保全状態を決定するのに役立つ。しかし、現在の有効個体数を正確に見積もることは今でも困難だとその論文は述べている。

 

この手法の計算方法が最終的な友好個体数に重要な違いを生むとこの論文は述べている。米国魚類野生生物庁の回復プランは、連邦法で定められた絶滅危惧種からカリフォルニアラッコをいつ除外するかを決定するのに、有効個体数を使用している。魚類野生生物庁が古い計算方法を使用していたら、カリフォルニアラッコは恐らく回復には程遠い状況ですぐに絶滅危惧種から外されてしまうだろうとガニエは言う。

 

北太平洋毛皮交易時代に絶滅に近いところまで乱獲されてから、カリフォルニアラッコはかつての生息域の一部に回復してきているが、数は比較的少ないままであるため、有効個体数を正確に継続的に得ることが望ましい。

 

これまでの理論的な論文は複数の手法の有効性を比較してきているが、応用的保全環境においては経験的なデータを用いた推測値の比較には限界がある。

 

「このような研究には十年単位の時間がかかります」とアーネストは言う。アーネストはカリフォルニア大学デイビス校の研究員だった時から、カリフォルニアラッコを13年間研究している。

 

この研究のため、ガニエとアーネストは13年分、1,006頭のラッコから人口統計学的、遺伝学的データを合わせて複数の有効個体数評価値や、遺伝子の多様性や個体群の遺伝子構造の一時的な傾向の評価を行った。カリフォルニアラッコの遺伝子多様性は低く、時間の経過とともに増えていないと論文は述べている。特定の遺伝子単位があると言う証拠はないが、距離により遺伝的隔離が起こっている証拠がいくつかある。

 

「この13年分のデータセットを得たのは、本当に価値のあることでした」とアーネストは言う。

 

これらの結果をもとに、ガニエ、アーネスト及び論文の共著者らはカリフォルニアラッコの絶滅危惧種からの除外基準を発展させることを薦めている。他の広範囲にわたり生息する種や、世代が重なっている種、あるいは性別により分散している種についても、有効個体数の評価値を複数用いることや、個体群の遺伝子評価の基準を発展させるよう助言している。

 

「私たちはカリフォルニアラッコの遺伝的健全性を評価するための新しい基準が必要なのです」とガニエは言う。「それが、ラッコや他の絶滅危惧種にとって次なるステップになるのです」