【記事】空腹なサメに囲まれるラッコ | Sea Otters Are Walled in by Hungry Sharks

本日は2018年3月16日付のHakai Magazineから、"Sea Otters Are Walled in by Hungry Sharks"をお届けします。ラッコがウニを食べてケルプを守っていることは知られていますが、ケルプもまたラッコをサメから守っており、それが今後のカリフォルニアのラッコの生息域の拡大のカギになるというお話です。

ラッコはウニを食べ、ケルプの森が豊になる。最近の調査でケルプもまたラッコを助けているかもしれないことが分かった。Photo by Sebastian Kennerknecht/Minden Pictures
ラッコはウニを食べ、ケルプの森が豊になる。最近の調査でケルプもまたラッコを助けているかもしれないことが分かった。Photo by Sebastian Kennerknecht/Minden Pictures

安全なケルプの森の外では、ラッコがサメに襲われている

ラッコはウニを食べ、ケルプの森が豊になる。最近の調査でケルプもまたラッコを助けているかもしれないことが分かった。Photo by Sebastian Kennerknecht/Minden Pictures

 

ふっくらと健康そうなラッコが、カリフォルニア州モントレー湾北部にある砂浜に座礁している。ラッコはめったに浜に上がるころがないため、浜にラッコがいること自体何かがおかしいということの現れだ。しかしずっと南の海岸で見つかっている飢餓状態で衰弱しているラッコたちとは異なり、最初一見何も問題がなさそうに見える。しかし、モントレーベイ水族館の上席研究生物学者テリ・ニコルソンは何が原因かを正確に知っている。

 

個体群全体としては、カリフォルニアのラッコたちはサクセスストーリーのようなものだ。20世紀になった頃、科学者たちは猟師らが豊かな毛皮を獲るために、最後のラッコを殺したと考えていた。しかし、1935年にカリフォルニア中央部のビッグ・サー沖で約50頭のラッコが発見された。海洋哺乳類保護法と絶滅に瀕する種の保存に関する法により守られ、ラッコは復活しつつある。

 

数十年その数は増加し、3,200頭に膨れ上がった。しかし、その生息地は制限されているように思われる。ラッコは北はサンタクルーズ、南はサンタバーバラより先では生きていけないようなのだ。数が急増したにも関わらず生息地が限定されているため、個体密度が増加し、場合によっては飢餓や死をもたらしている。

 

個体群が成長し続けるためには、ラッコは生息域を新しく広げる必要があるとモントレーベイ水族館の科学者らは考えている。しかしラッコは今いる場所に閉じ込められているようだ。

 

ニコルソンは過去25年ラッコの個体群の推移を研究しているが、一見健康に見える座礁ラッコが、制限されている個体群を理解する鍵を握っていると考えている。「ラッコの目立つ厚い毛皮を見てみると、貫通するような噛み傷があるのが分かります」これは、サメに噛みつかれた結果だ。

 

一般的に、サメが一口噛めばラッコは死んでしまう。脂肪の多いアザラシを探しているホホジロザメにとって、ラッコはあまり食欲をそそらない毛の塊にすぎない。しかし、ラッコにとってサメがどう考えているかは関係ない。いずれにしても死ぬか、あるいは傷ついてリハビリが必要な状態になるかどちらかだ。

 

最近の研究で、ニコルソンは過去30年以上、725頭にのぼるラッコの座礁記録を追跡し、実際、サメがラッコの生息域を囲ってきたことが分かった。ラッコの個体密度が高い場所では、座礁の63パーセントが衰弱によるものだった。しかし、生息域の端では座礁の最大原因がサメによる噛みつきとなっている。

 

「もし10年前にサメがラッコの個体群を制限していたかどうか質問されていたら、きっとNoと答えていたでしょうね」とニコルソンは言う。

 

しかし、ある地域ではサメによる座礁があり、そうでない地域もあるということはどのように説明がつくのだろう。ニコルソンの新しい研究によると、その答えはケルプ、もしくはケルプがないことにある。ケルプの森はラッコにとって典型的な生息地だ。しかし、ラッコの座礁とカリフォルニアのケルプの生息地図を比べてみると、ケルプの少ない場所でサメによる噛みつきが最もよく起きていることが分かった。

 

しかし研究者らは、ケルプがどのようにラッコをサメの噛みつきから守っているのあについてじゃはっきりわかっていない。ニコルソンは、単純にケルプの葉の中に隠れているラッコがサメには見えないのだろうと思っている。対照的に、ケルプのないところにいるラッコは、腹が減ったサメには見つかる可能性が高い。モントレーベイ水族館のサメの研究者らは関係をより詳細に調査する現地調査の初期段階にいる。

 

しかし、もしサメが安全なケルプを放っておくならば、どうやってラッコの数を増やせばいいのだろうか。ラッコを捕獲して他の場所へ移すというのは一つの方法だが、それが理想的な解決法ではない、と水族館のラッコ研究保全プログラムのマネージャー、アンディ・ジョンソンは言う。

 

そのためには、絶滅に瀕する種の保存に関する法のもとで絶滅の恐れがある種としてラッコを監督しているアメリカ魚類野生生物局の承認が必要となる。ジョンソン氏によると、ラッコの個体数は絶滅の恐れがある種から外される数に近づいている。

 

ジョンソンは、一番望ましいのは「カリフォルニア州にラッコが再定着し、広範囲で生態系が回復すること」だと言う。そのためには、ラッコには隠れるためのケルプがもっと必要なのだ。

Hakai Magazine

Sea Otters Are Walled in by Hungry Sharks

March 16th, 2018