【記事】「ラッコ排除海域」中止の差し止めを求めた裁判、退けられる | Court Calls Third Strike on Industry Challenges to Decision to End Failed Otter Translocation and “No Otter Zone” Program

本日は、2018年3月1日付のEarthjusticeのウェブサイトより、"Court Calls Third Strike on Industry Challenges to Decision to End Failed Otter Translocation and “No Otter Zone” Program"をお届けします。かつてラッコを守るために作られた「ラッコ排除海域」は失敗に終わり中止されましたが、水産業者がその中止の差し止めを求めて裁判を起こしていました。ラッコ排除水域については詳しくはこちら(【記事】ラッコ排除海域 | No Otter Zone)をご覧ください。

勝訴:控訴裁判所は、南カリフォルニア沿岸のラッコの歴史的生息域からラッコを排除する「No Otter Zone(ラッコ排除海域)」プログラムが失敗に終わったためその終了するというアメリカ魚類野生生物局の決断を支持した。

カリフォルニア州サンフランシスコ  本日、連邦第九巡回区控訴裁判所は「No Otter Zone(ラッコ排除海域)」で知られる、失敗した政府のプログラムを終了させるという二つの地方裁判所の判決を支持した。アメリカ魚類野生生物局は南カリフォルニア沿岸の歴史的なラッコの生息域からラッコを排除するとカリフォルニアラッコに損害を与えるプログラムであるとの決定を行っていた。

 

「この判決は、失敗した『No Otter Zone』プログラムを復活させようという誤った動きを止めさせるものです」とアースジャスティス(訳者注:環境や動物保護のNPO)の弁護士、アンドレア・トレースは言う。「No Otter Zoneを終わらせることはカリフォルニアラッコを保護するうえで正しいことであり、今日裁判所はそれを認めました。ラッコは私たちの沿岸生態系において代わりがいません。ラッコはケルプの森や海草棚を必要としており、そうした生息地はラッコを必要としています。裁判所の判決は、人間に邪魔されることなくラッコが南へ生息域を拡大することができるようにし、ラッコや沿岸生息域を救うものです」

 

アメリカ魚類野生生物局がNo Otter Zoneはラッコが生き延び、回復する機会を喪失させるものだという決定を下したにも関わらず、複数の水産業の団体が当局を相手取り、No Otter Zoneを履行する責務を負うと訴えた。二つの地方裁判所は水産業団体を退ける判決を出したため、それらの団体はその判決を上訴していた。

 

「この判決はラッコや、あらゆる場所にいる絶滅危惧種にとっての勝利です」とアメリカ・ヒューマン・ソサイエティの野生生物・動物リサーチ管理弁護士、アナ・フロスティックは言う。「裁判所は、政府が保護しなければならない危惧種の助けにならないプログラムに関し、改訂したり終了したりすることは政府の義務であるということを強調しました」

 

今日、連邦第九巡回区控訴裁判所は水産業団体を支持しない判決をし、プログラムがラッコの回復を促進せず妨げになると判明した際、実験的なラッコの移植管理プログラムを終了させることは、全く魚類野生生物局の権限の範囲内であるということを再確認した。

 

「裁判所の判決はアメリカ魚類野生生物局が、人工的なバリアをなくしラッコが自然に生息域を拡大できるようにしたという正しい決断を認めたものです。ラッコが回復するには、歴史的なラッコの生息域において広く分布できることが必要になります」とフレンズ・オブ・ザ・シーオターの理事長、ジェニファー・コバートは言う。「20年近くもNo Otter Zoneを終わらせるために戦ってきたことが裁判所に認められて非常にうれしく思います」

 

「原告の主張は、たとえ当局が絶滅危惧種を保護するどころか逆効果で有害であると決定していても、そのプログラムを継続を要求するものであると解釈できる。これは全く意味をなさない」と強調した。

 

「ラッコたちがケルプの森に浮かんで、手をたたいてその勝利を祝っているのが目に浮かびます」と生物多様性センターのオーシャンズプログラムディレクター、サカシタミヨコは言う。「この判決はカリフォルニアのラッコたちを回復へと戻してあげるものなのです」

 

アースジャスティスは、フレンズ・オブ・ザ・シーオター、ディフェンダーズ・オブ・ワイルドライフ(野生生物を守るNPO)、米国動物愛護協会、生物多様性センターを代表し、魚類野生生物局の決断の弁護に介入した。

 

「絶滅危惧種であるラッコにカリフォルニアに戻ってきてほしければ、回復を妨げるのではなく、促進するプログラムが必要です」とディフェンダーズ・オブ・ワイルドライフのカリフォルニアプログラムのデイxれくたー、キム・デルフィノは言う。「アメリカ魚類野生生物局は、No Otter Zoneはラッコの必要な生息域へのアクセスを妨げ、ラッコに役立つよりもむしろ害になると分かったのです。裁判所はそうした事実を再確認したのです」

 

裁判所の判決はこちら(英語)

背景

1986年、アメリカ魚類野生生物局によりラッコをサンニコラス島に移植し、2つ目の個体群を打ち立てるという計画の一環として、議会は「No Otter Zone」を設置することとした。当時、当局は、移植が絶滅に瀕する種の保存に関する法律で保護され絶滅危惧種に指定されているカリフォルニアラッコの回復に役立つと考えていた。「No Otter Zone」は、ラッコが新しい場所へ進出すれば水産業の妨げになるとの水産業者らの不満に対し、議会が設置したものだった。

 

移植されたラッコの多くはもといた水域へ泳いで帰ろうとした。また、捕獲や輸送の結果死んでしまうラッコもいた。アメリカ魚類野生生物局は最終的に「No Otter Zone」の施行はラッコの回復機会を妨げるものと断定した。2003年、当局は、ラッコがコンセプション岬の南の歴史的な自然の生息域に拡大し、ラッコの回復が達成できるよう、再度「No Otter Zone」の廃止を決定した。

 

水産業団体は、魚類野生生物局が再度「No Otter Zone」を設定するよう、2つの裁判を起こしていた。2015年9月、連邦地方裁判所の判事ウォルターは、そのプログラムの目的はラッコの保護であったがそれがラッコの生存や回復に有害であると判明したにも関わらず、失敗した「No Otter Zone」プログラムを当局に継続させるというのは合理的でないと表明した。

 

2017年3月、カリフォルニア中央地区連邦地方裁判所のドリー・M・ギー判事も、プログラムを終了させるというアメリカ魚類野生生物局の決定に賛同する判決を下した。