【記事】ラッコを守る弁護士 | THE OTTERS’ ADVOCATE

本日は2017年12月8日付けのEarthjusticeの’ブログより、"THE OTTERS’ ADVOCATE"をお届けします。アースジャスティスは、環境や動物保護などのために法廷で戦う法律家を擁する団体です。アメリカでは現在、絶滅に瀕する種の保存に関する法律が変わろうとしており、それに対抗するため多くの団体が活動しています。

モントレー湾でエサを食べるラッコ
モントレー湾でエサを食べるラッコ

キム・スタインハートはどこにラッコがいるか知っている。作家でありラッコの熱烈なファンでもあるスタインハートは、カリフォルニア沿岸の水路や湿地帯をめぐり、この絶滅に瀕する海の動物の生息地を見つける。

 

ある秋の午後、スタインハートはカリフォルニア州モスランディングの泥道の脇に車を止めた。数名のアースジャスティスのメンバーも一緒だ。スタインハートの直感は正しかったようだ。母ラッコとその子ども、年配のオスの3頭が湾の中で遊んでいる。朝のいつもの食事で、水面を滑るように泳いだり、朝の光の中で跳ねたりしていた。大きな音をたて、小さな毛でおおわれた手でムラサキガイをもって齧る。オスはじっと仰向けに浮かんで休んでいるが、母親はバランスよく子どもをお腹の上に乗せ行ったり来たりしている。母親がわずかの時間道路の下の土管の中に消えると、子どもは高い声で鳴き、その声は母親が現れるまでどんどん大きくなる。

 

「20世紀になる頃、ラッコたちは毛皮を求める人間に乱獲されほとんど絶滅状態になりました」とスタインハートはいう。「その時から今の個体数、約3,200頭まで回復しました。持続可能性という点では、この数は非常に小さいのです。回復まではまだまだ遠い道のりです」

キム・スタインハートはカリフォルニア沿岸エルクホーン湿地帯近くの自然の生息域に暮らすラッコを撮影している。
キム・スタインハートはカリフォルニア沿岸エルクホーン湿地帯近くの自然の生息域に暮らすラッコを撮影している。

スタインハートはこうしたメッセージをカリフォルニア沿岸のあちこちで聴衆に伝えてきた。そして現在、スタインハートはその言葉をさらに広めるため、アースジャスティスを手伝っている。ラッコにスポークスマンがいるなら、それはスタインハートだろう。代理人がいるなら、それはアンドレア・トゥリースだろう。

 

ラッコが横にくるくると回っているそばで、アースジャステイスの代理人はスタインハートと一緒にそれを見ていた。その光景は、楽しくもありまたこの脆弱な動物を現在の政治状況下で守っていけるのだろうかという悪い予感のようなものをもたらす。議会のメンバーは、ラッコが生き残りのために必要な足掛かりを得る手助けとなる連邦法、絶滅に瀕する種の保存に関する法律をだめにする法案を提出している。

 

このように大切な法的ツールがないとどうするか尋ねると、トゥリースは率直に答える。「そのような質問をされると夜眠れません」と答える。「絶滅に瀕する種の保存に関する法律がなければ、こうした陸地や海の景観、生き物たちを守っていくのは信じられないほど難しくなるでしょう」

 

トゥリースはモスランディングのエリアに疎くはない。熱心なダイバーでありmカヤックやパドルボードを楽しむ人として、トゥリースは週末になると近くのエルクホーン湿地帯へ赴く。そこは、邪魔をすることなく安全にラッコを観察することができる場所だ。

 

「カリフォルニアへ引っ越して初めてラッコを見た時、とたんに恋に落ちました」とトゥリースは言う。

 

ラッコは過去100年、長い道のりをたどってきたが、今でも喪失のリスクがあるため、国によるセーフガードが維持されなければならない。

1750年代から1800年代、毛皮交易商人は環太平洋の何十万頭ものラッコを殺した。カリフォルニア沿岸では、カリフォルニアラッコは絶滅したと考えられていたが、1938年カーメルの牧場主が数十頭のラッコがなんとか生き延びていたことを発見した。1977年の絶滅に瀕する種の保存に関する法律による保護を勝ち得て以来、ラッコはめざましい回復を遂げてきた。

しかし、スタインハートはラッコの回復はまだ不安定だという。

 

「ある程度の規模の原油流出が起これば、実際ラッコの個体群は一掃されてしまうでしょう」とスタインハートは言う。原油を積んだタンカーがアラスカから定期的にラッコの生息域を通ってやってくる。最悪の例はプリンス・ウィリアム湾でのエクソン・バルディーズ号による原油流出事故で、この時はアラスカのラッコ3,000頭近くが殺された。「その数は、カリフォルニアに住むラッコの数全てと同じなのです」とスタインハートは言う。

絶滅に瀕する種の保存に関する法律がなければ、こうした陸地や海の景観、生き物たちを守っていくのは信じられないほど難しくなるでしょう

1980年代初め、米国魚類野生生物局がラッコの回復プログラムを検討した際、原油流出の脅威を考慮し、サンタバーバラ沖のチャネル諸島の一つに実験的な個体群を作ることにした。しかし、140頭のラッコたちをカリフォルニア南部の海域に再導入することに関し水産業は懸念を表明したため、当局は妥協しなければならなかった。実験的個体群がいる場所以外のカリフォルニア南部の水域を「ラッコ排除水域」としたのだ。

 

その排除水域の実施は実に扱いづらいものだった。「ラッコが実験的個体群のいる場所からラッコ排除水域へ泳いでいった場合、魚類野生生物局はラッコを捕獲し実験的個体群の場所へ戻すか、カリフォルニア中央部のラッコのもとの個体群へ戻すということを行っていたのです」とトゥリースは言う。

 

驚くほどのことではないが、この計画はあまりうまく行かなかった。「ラッコは地図を見たりしませんから」トゥリースは皮肉を込めて言う。

 

時間がたつにつれ、ラッコ排除水域は有害であることがどんどん明らかになってきた。「ラッコたちは浜へ戻ろうとするのです。捕獲のストレスで死ぬラッコもいました」とトゥリースは言う。魚類野生生物局はラッコ排除水域を廃止したが、いくつかの水産業のグループがそのプログラムの復活を求めて裁判を起こした。アースジャステイスは今のところそうした裁判で優位にたっているが、最終的に裁判で勝つまではまだ裁判での反論を続けていかなければならない。

 

「私たちは魚類野生生物局の代わりに決定を守るため介入しました。その真の目的は、絶滅に瀕する種の保存に関する法律を守ることにあります」とトゥリースは言う。ゴールは「ラッコの生存を助けるだけでなく、ラッコが繁栄、回復し絶滅危惧種法のリストから外れることです」

法廷で海洋生物のために戦っていない時は、アースジャスティスの代理人、アンドレア・トゥリースをカリフォルニアの海で見かけることがある。
法廷で海洋生物のために戦っていない時は、アースジャスティスの代理人、アンドレア・トゥリースをカリフォルニアの海で見かけることがある。

絶滅に瀕する種の保存に関する法律がなければ、トゥリースが法廷で勝とうとしているようなものは非常に困難になってしまう。しかし、保全に関するランドマークともいえる法律を弱体化させ危害を加える提案が議会に多く現れている。ユタ州の共和党代表ロブ・ビショップのような立法者らはその法律を「無効にし他の法律に置き換える」べきといい、ワイオミング州の共和党上院議員ジョン・バラッソは「現代にふさわしく変える」べきだとソフトな言葉で攻撃している。アースジャスティスは絶滅に瀕する種の保存に関する法律を守るため、広く連携を行っている。

 

ラッコは生態系において非常に重要な役割を果たしているため、キーストーン種と考えられている。例えばラッコはウニを食べるが、そうしなければウニはケルプの森を食べつくしてしまう。その代わりケルプの森は多くの海洋生物を擁し、二酸化炭素を吸収し、気候変動に対する緩衝帯となっている。

 

「ラッコに関して言えば、もし絶滅に瀕する種の保存に関する法律が亡くなってしまえばラッコはいなくなり、ケルプの森も海草も失われます」とトゥリースは言う。「そうした場所を生息域とする生き物に依存する水産業も失われてしまうかもしれません。こうしたこと全体がネガティブな連鎖となりますが、多くの人はそのような結果をありがたいとは思わないでしょう。一度に一つの生き物を守っているだけだと思っている人がいるかもしれませんが、実は生態系全てを守っているということなのです」

電話をする際、多くを話す必要はありません。名前とどこから電話しているか、そして下記のメッセージを言うだけでいいのです。

訳者注:米国在住の方が対象です

こんにちは、私は[州・市]の[フルネーム]と申します。この度、絶滅に瀕する種の保存に関する法律、査読を行う科学、絶滅危惧種及びそれらを守るために法廷へ行くことができるアメリカ人の権利に関わる5つの危険な法案、 H.R. 424, H.R. 717, H.R. 1274, H.R. 2603 及び H.R. 3131に反対するよう、代議士の____氏にお願いします。

 

他の法案の中でもこれらの法案は危機に瀕するワイオミング州や中西部のオオカミに対する保護を覆し、これらの州におけるオオカミ猟を可能にし、違法な野生生物の不法取引に対する法の行使を損ない、不法な政府の行動を市民が法廷に持ち込む能力を棄損し、科学的な査読の基準に合わないものを科学的根拠として州や自治体、部族政府により提出された情報を監督機関が受け入れることを容認することになってしまいます。

注意:中には、多くの電話を受けている事務所もあります。もし忙しそうなら、またかけなおしてください。その間、まだE-mailで連絡していなければそうすることもできます。みなさんの意見を伝える時間を割いてくださってありがとうございます。

カリフォルニアラッコは回復しつつあるものの、大規模な原油流出が起これば死滅してしまう可能性もある。
カリフォルニアラッコは回復しつつあるものの、大規模な原油流出が起これば死滅してしまう可能性もある。

Earthjustice

THE OTTERS’ ADVOCATE

December 08, 2017