【記事】逆境に打ち勝ってきたテルマにさよなら | Zoo says goodbye Thelma, sea otter who beat the odds

オレゴン動物園のラッコのテルマは肺一つで長生きし、常に逆境に打ち勝ってきましたが、高齢による合併症による健康状態の悪化のため、土曜日安楽死となりました。

1998年、テルマは子どもの時に保護され、死んだ時は19歳ほどだったと考えられています。これはラッコにとっては老齢です。2012年、テルマは、飼育員や獣医師らが間もなく人生の終わりを迎える動物たちのケア方法について焦点をあてたオレゴン動物園の高齢動物たちに関するオレゴニアン紙（訳者注：地方紙）の記事に掲載されました。

「私たちにはテルマが年老いていることや、長くは生きられないということを知っていましたが、まだテルマがいなくなってしまったということが信じられません」と15年以上テルマと働いてきた動物園の上席海洋生物飼育員ニカッシオ＝ヒスキーは語りました。「どんな場面でも、テルマは逆境に打ち勝ってきました。信じられないほどタフですが、同時に本当にやさしく、子育て精神がありました」

オレゴン動物園にステラーコーブマリンライフハビタット（訳者注：展示コーナー名）がオープンした際、テルマは2000年、仲間のエディとともにポートランドへやってきました。どちらのラッコもモントレーベイ水族館ラッコ研究保全プログラムにより保護されましたが、最終的にアメリカ魚類野生生物局から野生に返せないと判定され、オレゴン動物園への移動を勧められたのです。

毎年非常に多くの親を失ったラッコの子どもが住む場所を必要としているため、ラッコの繁殖は許可されておらず、人間のケアのもとにあるラッコは避妊しなければなりません。しかし、2001年1月5日、避妊インプラント（訳者注：妊娠しないよう体内に装着する器具）をつけ、まだかなり若かったにも関わらず、テルマは出産して皆を驚かせました。その子どもは名前をオジーもしくは短くオズと名付けられましたが、人間のケアのもとで妊娠し、生まれ、育った初めてのカリフォルニアラッコとなりました。オズは今ジョージア水族館で暮らしています。

2006年、テルマはまた逆境を克服しました。飼育員はテルマが食べ物に興味を持たないため「テルマらしくない」ことに気づき、その後の検査でテルマの肺がきちんと膨らんでいないことが分かりました。獣医師だは肺を修正するための手術を試みましたが、非常に状態が悪く、獣医師らはテルマが生き延びるためにはその肺を完全に取り除くことが一番だと判断しました。ラッコにこのような治療が行われたのは初めてで、飼育員らはそれがうまく行くかどうか確信できませんでした。

「驚くべきことに、テルマは生き延びただけでなく、元気になりました」とニカッシオ=ヒスキーは話しました。「テルマを見ただけでは分かりませんが、テルマは過去10年、肺1つで泳いだり潜ったりエディとじゃれあったりしていました」

テルマは高齢になっても引き続きアクティブで元気でした。2015年、当動物園は前年カリフォルニアの海岸で保護された親を失ったラッコのジュノの養母となり育て上げたということで、テルマをその年のベストマザーに選出しました。2014年に初めてテルマと会った時、ジュノはわずか生後5か月でした。

「テルマはジュノにとって素晴らしい養母でした。きっとそれはテルマがオズを育てた経験があるからでしょう」とニカッシオ=ヒスキーは語りました。「2頭は印象的なペアでした。ジュノは今よりずっと小さき、体中が茶色い毛で覆われていて、一方テルマの毛は年とともに顔と首のあたりが白くなっていました。ラッコにしては高齢でしたが、テルマはまだ活発で、エネルギッシュで、遊び好きでした」

キーストーン種と考えられているラッコは太平洋の海洋生態系において健全なケルプの森を促進し、何千もの生き物を支える重要な役割を果たしています。

ラッコは絶滅に瀕する種の保存に関する法律で絶滅危惧種のリストに掲載されています。かつてはオレゴン沿岸を含む日本からバハ・カリフォルニアに至る環北太平洋に生息し、その数は15万から30万頭であったと考えられています。毛を珍重されたため、ラッコは1800年代から1900年代初めごろの間絶滅寸前まで乱獲されてしまいました。1911年には、激しい毛皮捕獲が世界のラッコの数を2,000頭ほどまでに減らしてしまいました。

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October 9, 2017