【記事】北クリル諸島のラッコが激減 | The population of sea otters in the North Kuril Islands decreased by 73% over five years

本日は2017年6月29日付のSakhalin.infoから、"Популяция каланов на Северных Курилах за пять лет сократилась на 73%"をお届けします。今年北クリル諸島(千島列島)で行われた個体数調査で、ラッコの数が激減していることが分かりました。エサ不足が原因と考えられていますが、他にも原因が考えられるようです。

sea otter offshore from shumshu island in the kuril island group 5

クリル諸島(千島列島)のラッコたち Photos by Russell Scott

北クリル諸島(千島列島)のラッコの個体数が壊滅的な状態になっている。WWF(世界自然保護基金)ロシアのカムチャツカ・ベーリング・エコリージョナル支部の報告。

 

WWFイニシアチブによる調査により、北クリル諸島のラッコの個体数が過去9年間で70%以上下落していることが判明した。

 

 

Kamchatinfo誌によると、調査は6月に北クリル諸島(占守島:しゅむしゅとう、幌筵島:ぱらむしるとう、及び小さな鳥の島々)沖で行われた。この地域で最後に調査が行われたのは2008年だった。前回の調査と今回の調査を比較すると、全体でラッコの個体数が73%減り、幌筵島(ぱらむしるとう)では80%以上減少した。2008年には5,273頭が計測されたが、2017年はわずか1,418頭だった。

wikipediaより一部加工
wikipediaより一部加工

 

歴史上、これらの島で観測された最大数は2003年で、占守島(しゅむしゅとう)付近では最適数の2.6倍の個体密度だった。ある環境で個体数が過密状態になれば、通常食料資源に影響が及ぶ。2004年以降、個体数は次第に減少し、2003年の15,000頭から2008年と2009年には5,000頭になった。2005年以降は、ラッコが主要なもの以外の生物を食べるようになってきたが、これは明らかにエサが不足していることを示している。

 

「食料資源の状況はラッコの個体数現象の原因と思われますが、それだけがこの深刻な個体数現象の理由ではありません。いくつもの要因が複雑に絡み合って起こったものです。食料資源は、沿岸での水産業が盛んになることで引き起こされた可能性があります。また動物間で感染する病気や捕食者の影響、密猟による直接的な個体数への影響などもあります」海洋哺乳類カウンシルのメンバー、セルゲイ・コルネフは言う。

 

WWFはこうしたラッコの個体群の壊滅的な状況について、海洋哺乳類の減少の原因の迅速な分析と、北クリル諸島におけるラッコの保全のための特別な基準を進めることが必要だと強調している。

 

ラッコーイタチ科の肉食の海洋哺乳類、カワウソに近い仲間

 

ラッコは海洋環境へ独特の適応を遂げており、道具を使う数少ない動物の一つ。ロシア、日本、アメリカ、あカナダの北太平洋沿岸に生息する。18世紀から19世紀におかけてラッコは高価な毛皮目的で乱獲され、絶滅に瀕した。20世紀になり他国同様、ロシアでレッドリストに挙げられた。2009年時点で世界中で実質的にラッコ猟は禁止されている。唯一、アラスカ先住民が例外的に、歴史的に行われている工芸品や食料を維持する目的でアリュート人にラッコ猟が許可されている。