【記事】アラスカ州でラッコの座礁が相次ぐ | Cordova sea otter latest in statewide trend

本日は2016年3月16日付の The Cordoba Timesから、"Cordova sea otter latest in statewide trend"をお届けします。アラスカ州でもラッコの座礁が相次いでおり、アラスカ州唯一の受け入れ期間であるアラスカシーライフセンターは対応に追われているようです。

アラスカシーライフセンターの獣医師は2016年が彼らの野生生物対応プログラムにとって、今年がまた記録的な年になりそうな、あらゆる兆候があると言う。アメリカ魚類野生生物局に認可を得たアラスカで’唯一の海洋哺乳類対応団体であるこの非営利団体は、すでに今年、ラッコに関するものだけで80件もの通報を記録しているが、この状況は動物が座礁するシーズンである夏前にすでに始まっている。2015年はセンターへラッコ300頭の通報があり、そのうち実際センターが関わったのは116件だったが、9月のピーク時には前年2014年の同じ期間の16倍も多く、その数と比較されるほどになるかもしれない。

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今月初めにカチェマック湾で座礁していた子どものラッコEL1616号に続き、今週始め、ラッコEL1620号がコルドバからセンターへ到着した。EL1620号は大きさも体重も健康であるように見受けられたが、最終的にEL1620号を引き受けることを決定したアラスカシーライフセンター野生生物対応チームにとって、そのラッコが座礁していた場所や他の要因は懸念をもたらしている。小さく、可愛らしく、フワフワの子どものラッコEL1616号はまた別の物語があった。

ラッコの赤ちゃんEL1616号

2月19日、アラスカシーライフセンターのCEO(最高経営責任者)、タラ・リーマーはスワードの商工会議所の月例昼食会に出席していた。その週、センターの動物ケアスタッフは、24時間体制で監視を必要とする座礁動物の受け入れのための30日間の隔離期間がちょうど終了し、やっと一息ついたところだった。通常の条件下では、動物のケアチームは、動物に対する日常のケアを普段の勤務日内にやりくりすることができる。しかし、21日を除いたこの10か月間、チームは継続的に24時間体勢の監視をしなければならなかった。商工会議所で自治区議会のマリファナの合法化への取り組みに関する最新情報を聞きながらリーマーが少しリラックスしていた時、センターの飼育長であるブレット・ロングからリーマーの携帯電話にテキストメッセージがきた。生後7日ほどと推定されるラッコの赤ちゃんが親とはぐれているのが’ホーマーで発見されたというのだ。座礁したラッコの子どものプロトコルによると、母親がエサをとりに行っている場合があるため、人間が干渉する前に観察期間をおかなければならない。この赤ちゃんラッコの場合、母親が戻って来なかっただけでなく、栄養不足でシャチに囲まれていたこともわかった。リーマーは静かに昼食会を退席した。

 

センターではすでに4頭のラッコを収容しており、担当部門はおおわらわだった。社長兼最高経営責任者(CEO)として、リーマーはセンターのキャパシティや資源を評価するという難しい仕事を担っている。

アラスカシーライフセンター
遭難動物監視ガイドライン


まずは通報を!座礁したり怪我を負った海洋哺乳類を発見しても、自分で拾わないこと!
座礁海洋動物ホットラインへ電話すること:

1-888-774-SEAL (7325)

重要:米国魚類野生生物局や海洋大気庁海洋漁業局の認可を得ていなければ、海洋哺乳類を拾うことは違法になる。海洋哺乳類保護法には、動物の邪魔にならない距離もしくは自然な行動を変えさせない距離をとって観察するよう謳われている。

遭難している可能性のある動物を観察する場合、人間と動物の安全にとって下記全てのガイドラインに従うことが重要である。

  • 動物に近づいたり、触ったり、エサをやったりしないこと。
  • 他の人やペットなどが近づかないように助けること。
  • 動物の体のな特徴や行動を全て記録すること。
  • そのエリアにいる他の全ての動物も観察すること。
  • 観察の時間を詳しく記録すること。
  • 動物が海に戻ったら、見えなくなるまで観察すること。
  • 動物の健康状態の悪化がみられた場合、アラスカシーライフセンターへすぐに電話すること。
  • 特に指示されていない場合は、2時間ごとにアラスカシーライフセンターへ観察した様子を報告すること。
  • 可能であれば、そのエリアの動物の写真を撮ること。可能であれば誰か別の人に観察を続けてもらったり、動物に人間が近づかないよう手伝ってもらう。アラスカシーライフセンターの野生動物対応スタッフが次に何をすればよいか指示することになっている。

リーマーは次のように説明した。「私たちはラッコの世話をするための資金を、連邦や州からは一切受けていません。このプログラムの維持は寄付頼りです。私たちは、野生生物の保護や原油流出対応の準備へのサポートに関しセンターへ寛大な貢献をしてくださるアラスカ州の個人の皆様、そしてシェル・エクスプロレーション社、コノコフィリップス社に対し、特に感謝しています」

 

幼くして座礁した動物たちは、上手く生きていくことができない。また、幼いラッコは最長9か月間、母親に完全に依存している。小さな患者を受け入れるということは、母親の代理としてその期間中基本的なトイレトレーニングやグルーミングからエサの獲り方を教えることまで、生きていくのに必要なスキルを全て教えなければならないということだ。ラッコの子どもを受けれないという決定をすることは即ち、その子どもは生きていくことができないということを意味する。

可愛らしさは忘れて

「私はラッコを見に来る人々に伝えています。可愛らしいことは置いておいて、ラッコが素晴らしい動物であることを説明させてください、と」とラッコのケアが専門であるアラスカシーライフセンターの哺乳類学者エミー・ウッドは言う。「ラッコは生きるために毎日戦わなければなりません。ラッコの生活は全ての面において容易くはありませんが、私はラッコほど生活に適応した動物を他に知りません」

 

ウッドとその同僚のジェイミー・マリンズはラッコのケアに関して合わせて20年の経験がある。二人は、ラッコが自力で生きていかなければならなくなってしまった際、日々のラッコのケアを担当する5名のスタッフのメンバーに含まれ、受入れる座礁動物の30日24時間体制での隔離期間のケアの割り当てが必要で、かつ生後6か月までのラッコに必要な24時間体制のケアを与えなければならない14人のメンバーにも含まれる。野生動物のリハビリはスタッフも資源も必要とし、また多くの場所でラッコは害獣であると考えられてはいるのに、なぜそうした仕事が重要なのかと尋ねると、二人の答えは明快だ。

 

「ラッコは猟師たちも含む私たち皆が頼りにしている生態系の中で大きな存在を占めています」とウッドは言う。「ラッコと健全な海洋生態系との関係を理解すれば、なぜラッコが私たち皆にとって大切か分かると思います」私が話したVIPたちや漁師たちはみな、海洋生態系に頼っている私たち皆にとってラッコがどれほど大切かを知って帰っていきました。健全な海や健全な水産業が必要なら、ラッコが必要なのです」

 

マリンズが付け加えて言う。「それを理解し、原油流出のような事件がラッコの個体群にとってどれほど壊滅的かを考えれば、ラッコの継続的な健全性を確保するためにあらゆる手段を講じることが大切だということが分かります」

 

ラッコは忠実で、頑固で、気まぐれで、ブラックベアと同じくらいの噛む力がある、とウッドとマリンズはラッコのケアの実情についての冗談を言う。その結果、初心者の哺乳類学者が経験を通じて学ぶように、ラッコは「毛皮のあるチェーンソー」というあだ名を付けられている。ラッコは毎日最大体重の30%を食べる。それは、200パウンド(約90kg)の大人に換算すると、1日にチーズバーガーを130個、マカロニチーズ(訳者注:マカロニをチーズで和えた、インスタント食品の代表)96箱に相当するのですとウッドとマーリンは説明し、笑う。しかし、そうした旺盛な食欲も、魚や他の野生生物のとって必要不可欠な生息地を提供するケルプ床をウニや他の動物が征服するのを防ぐという重要な役割の一部でしかない。

安定

最終的に、リーマーとロングは、赤ちゃんラッコ1616号の受け入れを決定し、野生生物対応チームを再び始動させた。チームはセンターのトラックに用具を載せホーマーへ向かい、最終的に小さな患者を載せてセンターへ戻ってきたのは午後9時ごろだった。赤ちゃんラッコEL1616号は栄養不足と判断され、体毛の状態から母親と離れてしまったと確認された。ウッディ博士は初期の給餌計画を処方し、それ以降EL1616号は慎重に監視されている。座礁動物はすぐに判明できない状態に苦しんでいることもあり、状態を安定するのに数日、数週間要することもしばしばだ。継続的なケアや日常的な予防医学の一環として、研究者らはこうした動物たちのニーズについてより多く学ぶことができる。定期的な人口ミルクによる給餌が始まり、すべてが上手くいけば、その後貝などの固形の食と混ぜたピューレ状のエサになる。ラッコ、特に子どものラッコは、保温機能や水に浮かぶ機能を体毛に依存している。ラッコは、体毛がそのような生命にかかわる機能を維持できるよう、常に自分でグルーミングすることを教わらなければならない。

 

前の週末、ラッコEL1616号は引き受けから17日たって未だ24時間体制のケア下にあったが、十分状態が安定したとしてセンターの集中ケアセンターのI Sea U(訳者注:ICU=「集中治療室」をもじったもの)へ移された。その集中ケアセンターは野生に帰す可能性のある動物が人間と最小限の干渉ですむよう設計された隔離部屋で、一般人がそうした動物を見学することができる。来場者は現在、この特別な隔離部屋の高い位置に備え付けられた大きな窓越しに、小さな毛玉状のラッコを見ることができる。すでにラッコ1616号はチームからグルーミングの技術を学びつつある兆候がわずかに見られる。

調査は進行中

アラスカシーライフセンターの獣医キャリー・ゲツ博士によると、全てのラッコの死因において一般的に増加がみられ、状況を悪化させる可能性のある何か新しいものがあるという。

 

「藻類の大発生の増加やエルニーニョのパターンが盛る影響がどのくらいあるのかは説明するのは難しいのです」とゲツは言う。「でも、藻類の大発生やエルニーニョが今年も続くとみられることから、困難をもたらすような影響が何かあるに違いないという気はしています」

 

今週、チームには嬉しいニュースがあった。6か月ほどたったラッコのアトカ、ケスク、プキクが卒業して野外プールへ移った。野外プールではそのラッコたちを見ることができ、動物ケアチームのメンバーと海洋哺乳類についてより多く学べるオター・エンカウンターという舞台裏ツアーへ参加することもできる。

 

また一方、アラスカシーライフセンターの野生動物対応チームは次なる通報と、周期的な夏の座礁シーズンの始まりに向け、備えている。

 

アラスカシーライフセンターのリハビリテーションプログラムやオター・エンカウンター・ツアーを含むラッコについての情報は、アラスカシーライフセンター(907)224-7908もしくはウェブサイトwww.alaskasealife.org、またはFacebookへコンタクトを。

 

編集者注:ジェニファー・ギビンズはコルドバタイムズの編集者であり、最近の多くのジャーナリストのように、アラスカシーライフセンターでも働いています。

The Cordoba Times

Cordova sea otter latest in statewide trend

by - Jennifer Gibbins Posted 03/13/2016