【記事】ラッコの個体数増加と生態系の変化 | Rising sea otter population signals major ecological changes

 本日は2016年1月25日付のTHE PEAKから"Rising sea otter population signals major ecological changes"をお届けします。ラッコの復活により沿岸生態系にはさまざまな影響が生じます。生態系自体の変化、そして人間の文化や生活、経済活動への影響。対立するだけでなく、異なる立場への理解を深めることで全ての関係者にとってより良い未来を探します。

100年前に絶滅寸前までに追いつめられたが、ラッコは復活を遂げつつある。Image Credits: Illustration by Janis McMath
100年前に絶滅寸前までに追いつめられたが、ラッコは復活を遂げつつある。Image Credits: Illustration by Janis McMath

サイモン・フレーザー大学の生物学の教授がラッコが沿岸生態系に及ぼす影響を研究

ラッコがブリティッシュコロンビアの沿岸に戻りつつあるということは、近いうちに生態系に大きな変化が起こることを意味している。そうした変化を研究するため、研究イニシアチブが結成された。

 

このプロジェクトを主導する科学者がサイモン・フレーザー大学資源環境マネジメント学部の教授、アン・サロモンだ。サロモンは学生らとともに2010年からケルプの森を研究し、時間の経過によるケルプの森への変化を調べている。

 

この情報をもとに、サロモンらはラッコが復活することにより将来的にケルプの森がどのように変化していくか、そして特にこうした資源に依存している沿岸の生態系がどのように影響を受けるかを予測できるだろうと考えている。

 

しかし、ラッコが沿岸に再度生息地を確立することは、単なる保全活動の話ではない。サロモンによれば、「保全という難問であり、人間が何千年にもわたって憂慮し考えてきたこと」だという。ドキュメンタリー「Coastal Voices: Navigating the Return of the Sea Otters」(訳者注:【記事】ラッコの復活をめぐる対話 | Coastal Voices: Navigating the Return of the Sea Otter 参照)では、先住民のリーダーや高齢者、資源管理者、科学者らが集い、こうした複雑な問題について話し合った2014年のワークショップを取り上げた。これは食糧保障や食の主権、また先住民の権利や財産の保有権、自治権についての基本的な問題を含んでいる。

 

人間とラッコ、ケルプの森との関係は1000年に及ぶ。これは長年考古学的、民俗学的、伝聞的な歴史において明白である。しかしラッコは18世紀から19世紀にかけての太平洋海洋毛皮貿易と植民により一掃されてしまい、その二つが沿岸生態系の管理方法を変えてしまった。

 

ラッコの絶滅がウニやアワビ、貝、カニなどのエサになる生物の増加をもたらした。これらは人間にとってもなじみのある食材であるため、ラッコの復活によりこうした食糧としての魚介類が減り、それに伴い地元経済に影響が及ぶことを考慮しなければならない。

 

メディアリリースの概要で触れたように、ラッコの個体数の増加は間接的にウニの個体数の減少をもたらし、それによりウニが精力的に食べてしまうケルプの森の復活を助けることになる。従って、ラッコの復活はケルプを利用する魚の漁獲率の増加やキチジ(魚の一種)の幼魚の定住の促進と関係している。しかし、サロモンは、ラッコの復活はまた同じく絶滅危惧種であるアワビが食べられてしまうことも意味すると言う。

 

メディアリリースによると、植民以前は人間とラッコの相関関係はバランスが取れていたと説明する。先住民は自分たちの食糧資源を守る一方で、ラッコの数を繁栄できる程度に維持していた。

 

 

サロモンはこうした複雑な事情に基づき様々なバックグラウンドや経験を持つ人が協働しラッコの復活をマネジメントする必要があると言う。このプロジェクトにより、沿岸部の住民と政策担当者に対し、生態学的、社会経済学的、文化的な視点からラッコの生息域の再建の管理に必要なリソースや共有すべき知識が与えられることが望まれる。

 

サロモンとそのパートナーらは、沿岸のコミュニティがラッコの復活に対して備える手助けを続けるため、今年の夏このプロジェクトを実行に移す予定だ。「私たちはみな、システムを異なるレンズを通して見ています。また私たちはみな異なる知識を持っています。だから、それを合わせればもっと学ぶことができるはずなのです」

THE PEAK

Rising sea otter population signals major ecological changes

January 25th, 2016 by Amanda Smith