【記事】絶滅に瀕するラッコが抱える新しい問題、個体数過密 | Endangered Sea Otters Have a New Problem: Overpopulation

本日は、2015年12月30日付のtakepartから"Endangered Sea Otters Have a New Problem: Overpopulation "をお届けします。
ここでいうOverpopulationとは、ラッコの数が増えすぎているということではなく、生息域が限定されているためそこでの定員がオーバーしているという意味です。

カリフォルニアのある地域に住むラッコは数が多過ぎて生息域にそれ以上の数を抱えきれなくなっているーしかし、他の多くの脅威に直面しているラッコもいる

(Photo: Mark Boster/'Los Angeles Times' via Getty Images)
(Photo: Mark Boster/'Los Angeles Times' via Getty Images)

1年前、保護活動家らはカリフォルニアの象徴であるラッコの回復が頭打ちになっていると警告した。2014年には、その地域でラッコの生息数はたった5頭増えただけで、この信じられないほど可愛らしい海洋哺乳類が危機的状況だと危惧する者たちもいた。

 

しかし、それほど早くはない。

 

カリフォルニアラッコは、多くの者が指摘しているように、保護活動のサクセス・ストーリーだ。かつてカリフォルニアでは絶滅したと思われていたが、1938年に約50頭が再発見された。それ以来、集中的な保護活動が行われ、その数は約3,000頭まで増えた。

 

そう、個体数の増加はここ数年鈍っているが、今はそれが何故かわかっており、悪いニュースが理由ではない。今月行われた海洋哺乳類学会のカンファレンスで発表された研究によると、ラッコは順調に増えているために現在の生息域で「環境収容量」に達しているのだ。つまり、その環境からエサを得られる最大量のラッコが存在するということだ。生息域の中央部では、単にこれ以上数を増やすことができないということなのだ。

 
著名なラッコの研究者である、アメリカ地質調査所のティム・ティンカーはこれを「ラッコ科学における大きなOSのアップグレード」と呼び、ラッコがその生存に影響を与える多くの脅威にさらされている「崖っぷち」の種であるという以前の認識を変えるものだと言う。

 

ティンカーは、30名以上の研究者による15年分の研究を総括した。データを集めるのは容易なことだとティンカーは言う。ラッコは海岸から1マイル(約1.6㎞)以内にとどまり、簡単な望遠鏡で観察することができる。そのため研究者らは、ラッコの行動は体の調子、繁殖状況などを研究することができた。ラッコはエサを持って水面に上がり、仰向けになって食べるため食生活についても記録するのは容易だ。

 

新しい研究は、絶滅の危機に陥ったため遺伝子多様性が制限されてしまったのではないかという疑問や、他の外的要因によりラッコの回復が制限されてしまっているのではないかという疑問を片づけてしまうものだ。ティンカーはこれらを「ひび割れた仮説」と呼ぶ。

 

しかし、そのサクセス・ストーリーも限界がある。ティンカーは、ラッコが環境収容力の限界に達しているのはラッコの生息域中央部であるカリフォルニア州モントレー付近だけだと指摘する。生息域の北端・南端に住むラッコは未だ脅威にさらされている。

 

もっとも注目すべきは、ティンカーが指摘しているように、サメの噛みつきによるラッコの死亡数が10倍にもなっているということだ。サメはラッコを食べないが、理由は不明だが、サメはラッコに噛みついて殺し始めている。こうした捕食者の攻撃により、生息域の北端と南端のラッコの数は年に1%から2%の割合で減少しているとティンカーは言う。

 

他にも脅威が増大している。別のプレゼンテーションで、カリフォルニア大学サンタクルーズ校のPh.D候補生のマックス・タルジャンは生殖可能なメスに遭遇できないオスが多いという報告を行った。オスのラッコは成獣になると新しい縄張りに拡散していくが、メスのラッコは生涯生まれた場所近くにとどまる。そのため、タルジャンンの報告によると、オスのラッコの80%は生涯メスと交尾することもなく、子どもの親になることもないため、将来的に個体数力学に影響を及ぼすのではないかと報告している。

 

また、モントレーベイ水族館の生物学者テリ・ニコルソンは現在のエル・ニーニョがラッコに海洋性の寄生虫による神経症に苦しむラッコを増加させていると報告している。

 

しかし、現在のところ、ラッコはできる範囲でなんとかうまくやっているようだ。そして保護活動のサクセス・ストーリーも、祝うべきものだ。

 

この記事はパッカード財団の出資によるCOMPASSのフェローシップによるものです。

takepart

Endangered Sea Otters Have a New Problem: Overpopulation

DEC 30, 2015 John R. Platt