【記事】可愛らしさの対価ーラッコの人生が大変である5つの理由 | The high cost of being cute —  5 reasons life’s tough for sea otters

 本日は2015年10月1日付のモントレーベイ水族館のブログから、"The high cost of being cute —  5 reasons life’s tough for sea otters"をお届けします。ラッコの毛はふわふわで、それがラッコをより可愛らしく見せる特徴の一つですが、その毛を持つことでラッコは大きな対価を払っているのです。

皆さんがラッコについて何かしっていることがあるとしたら、これでしょう。

「ラッコは犯罪的にカワイイ」

もしくは、このかわいらしさは少なくともルール違反と言えるでしょう。


ところが、こんなに可愛らしくいることは信じられないほど大変なことなのです。実際、ラッコは毎日毎日乗り越えなければならないハードルが5つあるのです。

1.ラッコはふわふわである

もし、一息ついてキャー♡と言いたいなら、どうぞ


しかし、なぜラッコはアザラシやイルカよりもふわふわなのでしょうか。他の海洋哺乳類と異なり、むしろ陸生哺乳類に似て、ラッコは体温の維持を厚い体毛とその間に捉われた空気の層に頼っています。海で生きるようになって100万年から300万年ほどしかたっていないため、ラッコは他の脂肪層のある動物たちのような進化した体温維持機能がなければどうしようもなくなってしまうのです。

まだこういうお腹になる準備はできてないようだね

2.ラッコは本当にふわふわである

ダウンジャケットやドライスーツ(内部に水が浸入しない保護スーツ)のように、空気による断熱は非常に温かい。海では、そうした空気は体を浮きやすくし、ラッコが潜る時には邪魔になってしまいます。これは大変です。ラッコは、アザラシに比べてエサを獲りに潜るのが2倍大変なのです


更に、アザラシやクジラが潜っても脂肪層はあまり圧縮されず、常に温かいです。しかし、ラッコが潜ると、体毛の中にある空気の多くが押し出されてしまいます。深く潜れば潜るほど、空気がより圧縮され、よりラッコは冷えてしまいます。

この泡はどこから・・?お尻じゃないですよ。

3.ラッコは本当に本当にふわふわである

脂肪層は断熱の役割を果たすだけではありません。脂肪の多い動物は、1日を通じてエネルギーにすることができる貯蔵庫としての役割もあります。一方、体毛は体温を保持する役割のみなので、食事と食事の間にはエネルギーを消費し続けるのです。


したがって、ラッコはその毛の生えたかまどに燃料を供給しつづけるため、たくさんのエサを食べなければなりません。授乳中の母親ラッコは、自分と子どものために1日にほぼ体重の3分の1も食べます。人間の母親に例えたら、毎日Lサイズのピザを25枚食べるようなものです。・・・すでにそのくら食べてます?

はらぺこラッコがカニを食べる

4.ラッコは本当に本当にばかげているほどふわふわである

脂肪層は脂肪の多い食事をとらなければならないという以外はメンテナンスしなくても機能します。脂肪は皮膚の下にあるので濡れることもなければ汚れることもなく、冷たくなることもありません。そのままです。しかし、ネタばれ注意!体毛は水に入ると濡れます。また常にメンテナンスが必要です。

可愛らしいけれども、決死の行為


ラッコは毎日何時間もグルーミングに費やします。皮膚から分泌される油で体毛のコンディションを整え、アンダーファー(下毛)に空気を吹き込み、トゲのある毛を防水できるよう整えます。しかし、原油流出などで汚れてしまうと、体毛はその働きを止めてしまいます。10℃の海でウエットスーツを脱いだようなものです。グルーミング、そしてきれいな海は、ラッコが生き残っていくために不可欠です。だから、ラッコは脆弱なのです。

5.ラッコは本当に本当にばかげているほど極めてふわふわである

ラッコは1平方インチ当たり100万本(イエネコの体全体にある毛と同じくらいの毛)が生えています。これは動物の中でもっとも密度が高いものです。

この毛は、18世紀から19世紀にかけて勤勉な人間を抵抗できなくしてしまいました。ラッコはかつて日本からメキシコにかけて見られましたが、毛皮貿易の終わりには個体数は99%激減しました。非常に少数から復活をしていたため(カリフォルニアのラッコはビッグサーで生き残った50頭)、遺伝子の多様性に欠けており、隠れた問題を持つ可能性があります

Image: USGS/WERC


しかし約1世紀にわたり保護活動が増加し、ラッコはかつての生息域の一部で復活しつつあります。2015年、カリフォルニアでは約3,000頭が数えられました参考:【記事】カリフォルニアラッコ、増加傾向もサメの噛みつきによる問題増加 | Numbers Encouraging, but Shark Bites Still Problematic for Sea Otter Recovery)。


だから、わたしたちはこうした象徴的な動物であるラッコを理解し、守ろうと努力しているのです。モントレーベイ水族館は30年以上もラッコの研究を続けてきました。それには、みなさんの協力が必要です。


わたしたちのラッコ保護活動やラッコが住む海を守る活動をずっと続けるためにも、ご協力をお願いいたします