【記事】カリフォルニアラッコの勝利:裁判所は魚類野生生物局によるラッコ排除海域廃止の決断を支持 | Major Victory for California’s Threatened Sea Otters: Court Upholds USFWS Decision To End “No-Otter Zone”

 ラッコの保護と漁業の妥協点として制定されたラッコ不在海域。却ってラッコに害を及ぼすと判断した魚類野生生物局が2012年にその計画を終了しました。それに対し漁業関係者らが計画の終了を覆すよう求めた訴訟を起こしましたが、裁判所はそれを却下しました。ラッコ不在海域について詳しくはこちらの記事(【記事】ラッコ排除海域| No Otter Zone)先にご覧いただくとよいと思います。

カリフォルニア州ロサンゼルスー金曜日(訳者注:2015年9月18日)、アメリカ地方裁判所の裁判官ジョン・F・ウォルターは、幾つかの漁業団体らがアメリカ魚類野生生物局を相手取り、魚類野生生物局がカリフォルニア州南部のカリフォルニアラッコを保護するために行った決定を覆すことを求めた訴えを却下する判決を下した。カリフォルニアラッコにとっては大勝利となる。環境保護センター、オッタープロジェクト、ロサンゼルス・ウォーターキーパーが魚類野生生物局の代理として間に入った。

この案件は1987年にラッコの保護と漁業関係者の保護のバランスをとるために1987年に制定された「ラッコ不在海域」を、魚類野生生物局が2012年公式に終了する決定を下したことに由来する。1987年の決定は、サンニコラス島にラッコの生息域を作ることと、その代わりにサンタバーバラ郡のコンセプション岬からメキシコ国境に至る範囲からラッコを取り除くという試みであった。残念なことに、この計画はラッコが移殖中に死んだり、移殖したラッコが元の生息地に泳いで戻ろうとした際に死んだりとラッコにとって致命的であることが判明したため、魚類野生生物局は正当にその計画を終了させた。この魚類野生生物局の重要な決断により、ラッコは種の回復には必須である南カリフォルニアにおける自然生息域を取り戻すための足掛かりを得ることができるようになった。

「2012年に『ラッコ不在海域』を終了させ、絶滅に瀕するカリフォルニアラッコが南カリフォルニアの歴史的な生息域に再び住むことができるようになった魚類野生生物局の決定を支持したこの重要な判決を、我々は嬉しく思います」と環境保護センターの上級代理人であるブライアン・セジーは言う。「長い間、カリフォルニアラッコは南カリフォルニアの大部分から姿を消しています。ラッコたちが帰ってくることで、ケルプの森の再構築が進み、我々の海洋生態系全体の健全性が改善されるのです」

「ウニ漁産業を筆頭に、商業漁業のグループは、自分たちの狭い産業の利益のために、不自然で不健全なシステムを主張してきました。裁判官の判決により、ラッコたちはゆっくりと戻って来るでしょう。そして以前のようにより大きなケルプの森とより多くの魚たちが住むことができる、より健全で完璧な生態系に変えてくれることでしょう」オッタープロジェクトのエグゼクティブ・ディレクター、スティーブ・シメックは言う。「海から油をなくしたり、農業汚染と闘ったり、ラッコを元の生息域に戻る手助けをしたりなど、苦悩しているラッコたちを助けるためにわたしたちができることはたくさんあるのです」

判決で、裁判官はまず、ラッコ不在海域の終了で漁業関係者が被害を受けていないため、そもそも訴えるための法的立場にないと述べた。更に裁判官は、魚類野生生物局が1987年の計画を終了させたのは適切な行動であったとし、魚類野生生物局に対しラッコに被害を及ぼすプログラムを継続することを求めることは、「絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律に完全に矛盾するという不合理な結果」を導くものだと述べた。裁判所は、魚類野生生物局はラッコを守り、その目的を達するためには必要な行動をとる義務があるとの判決を下した。

「私たちの海洋生態系は何十年にもわたりバランスが失われていました。ラッコ不在海域を取り除き、ケルプの森を再構築し、保護された海洋域を作ることは、この悪化した状態を転換させるためには必ず必要な行動です」とロサンゼルス・ウォーターキーパーのエグゼクティブ・ディレクター、ブルース・レズニックは言う。「この生息域が守られ、食物連鎖の自然のバランスが取り戻されれば、漁業産業がより強固になることは科学により示されています」魚類野生生物局がラッコ排除区域を終了させるかどうかという必要な決定を何十年も遅らせてしまったことに対し、オッタープロジェクトと環境保護センターが当局を訴えたのち、2010年それらの団体が魚類野生生物局とともに達した法的合意に基づき、2012年12月に魚類野生生物局がラッコ排除区域を終了させることを決定した。

かつて12,000頭から16,000頭を擁した生息域に住むカリフォルニアラッコの数は現在2,800頭ほどで、絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律で「絶滅の恐れがある」動物にリストアップされており、海洋哺乳類保護法では「希少」動物としてリストアップされている。ラッコ不在海域が存在するとラッコの回復は不可能なのだ。

1987年のはじめにラッコ不在海域が制定されてから、保護された個体群を作り原油流出などの大災害から脆弱な大陸沿岸に住むラッコを守るため、魚類野生生物局は140頭のカリフォルニアラッコをカリフォルニアのチャネル諸島の一番遠い島、サンニコラス島へ移殖した。魚介類漁産業、海底石油採掘産業、海軍がこの計画に意義を唱え、その結果ラッコ不在海域(公式には管理水域と呼ばれる)が制定された。残念なことに、移殖計画はすぐに失敗となった。140頭のうち11頭を除く全てのラッコがサンニコラス島からもとの生息地に泳いで逃げたか、もしくは死んでしまったのだ。失敗であったにも関わらず、ラッコ不在海域はそのまま設定されたままで、何年もの間その水域に迷い込んだラッコは捕獲され、追い出されつづけた。この水域でラッコを守ろうとする魚類野生生物局の失敗に対し、オッタープロジェクトと環境保護センターが訴訟を行った。

この案件名はCalifornia Sea Urchin Commission v. Bean (C.D. Cal. 2:14-cv-08499-JFW-CW)である。

 

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環境保護センターは非営利の弁護士事務所で、主にサンタバーバラ、ベンチュラ、サンルイスオビスポ郡において教育や啓蒙活動、法的行動や取り組みを通じ、地域の環境保護や強化を行っている。1977年以来、環境保護センターは環境保護を進める地域密着の組織である。沿岸や海洋資源、空地、野生動物、人間及び環境の健全性の保護が主な領域である。詳しくは以下を参照:www.EnvironmentalDefenseCenter.org

 

オッタープロジェクトは科学に基づいた政策と啓蒙活動を通じカリフォルニアラッコと人間の利益のため、川の流域と沿岸海域を守る活動を行っている。1998年に創立し、沿岸海域の健全性を向上させ、ラッコの回復の障壁となっている問題を解決するために活動している。オッタープロジェクトについて詳しくは以下を参照:www.otterproject.org

 

ロサンゼルス・ウォーターキーパーは1993年に設立され、主張やフィールドワーク、地域での活動を通じたサンタモニカ湾、サンペドロ湾とその近郊水域の保護及び改善を使命をしている。ロサンゼルス郡全域の水路の水質保全を強化する訴訟や規定のプログラムを通じ、これらの目標を達成させるために活動している。ロサンゼルス・ウォーターキーパーの訴訟・啓蒙活動チーム、海洋チーム、水質チームはこの使命のため、相互的なプロジェクトを遂行している。ロサンゼルス・ウォーターキーパーについて詳しくは以下を参照:www.lawaterkeeper.org