【記事】ラッコのセルマ、オレゴン動物園の今年のベストマザーに | Rescued otter pup's adoptive mother is 'Mom of the Year'

少し遅れてしまいましたが、母の日に関連する記事をご紹介します。2015年5月8日付のオレゴン水族館のzoo newsより、"Rescued otter pup's adoptive mother is 'Mom of the Year'"をお届けします。オレゴン動物園の今年の母の日のベストマザー賞は、みなしごラッコを育てたセルマに与えられました。

Photo:Oregon Zoo
Photo:Oregon Zoo

高齢のラッコ、セルマがオレゴン動物園のステラー・コーヴでみなしごラッコのジューノを抱っこする

今年はキヤとその子どもたちでライオンが一般の注目を集めていますが、オレゴン動物園は今日は、別の母親ーセルマという名前の、2015年ベストマザーのラッコに注目したいと思います。


高齢のセルマは代理母ラッコに選ばれ、昨年カリフォルニアの海岸で保護されたメスのみなしごラッコのジューノを育てました。昨年5月最初にセルマに会った時には、ジューノは僅か5か月でした。


「2頭の相性はぴったりでした」動物園の上席海洋動物飼育員、ニコル・ニカッシオ=ヒスキー氏は言いました。「ジューノは今よりずっと小さく、身体中茶色のふわふわの毛で包まれていましたが、セルマの体毛は顔や首の辺りが白く変わっていました。セルマはラッコにしては高齢ですが、元気です。非常にエネルギッシュで、遊ぶのが大好きです」


飼育員たちが最初にジューノをセルマのいる場所に通した時、セルマは朝食のシーフード、エビと貝を堪能していました。


「セルマは、ジューノがやってきて自分の後ろ足に触れるまで、ジューノに対してとくに反応しませんでした」ニッカシオ=ヒスキー氏は言いました。「その時、セルマはジューノを抱きしめて体中のにおいを嗅ぎはじめました。そしてしっかりジューノを抱いて水槽の中や水の中を泳ぎました。その後別の水槽へ2頭を移しましたが、ジューノがセルマのお乳を飲もうとしていました。それは、2頭に絆が結ばれているという素晴らしいしるしだったのです。

※この動画に音声はありません

ジューノは昨年の晩春、オレゴン動物園へやってきました。1月にカリフォルニアの海岸にうち捨てられていたのを発見され、モントレーベイ水族館のSORAC(ラッコ保護調査プログラム)が保護をアレンジしました。しかし、そこではジューノを育ててくれる経験ある大人のラッコの都合がつかなかったため、ジューノはアメリカ魚類野生生物局により野生に帰すことができないと判断され、同局がオレゴン動物園への移動を許可しました。


「わたしはここの職員を非常に誇りに思っています」オレゴン動物園の北米と海洋動物を管轄するキュレーターのエイミー・カティング氏は、言いました。「皆、もう1頭ラッコを受け入れ、このおちびちゃんに住まいを与えることができると信じていました。このリハビリ施設にジューノを受け入れる余裕がないなか、職員たちが頑張らなかったら、ジューノにはほとんど未来がなかったでしょう。もちろん、セルマとパートナーのエディが年老いていくのを見るのは辛いことです。でも、ジューノはオレゴン動物園における次世代のラッコとなってくれました。私は、2頭の年老いたラッコたちにジューノと一緒に過ごせる時間があるということを嬉しく思います」


2012年、セルマとエディは、Oregonian誌の記事に登場しました。その記事は、飼育員や獣医が人生の終わりを迎えるオレゴン動物園の高齢の動物たちをどのようにケアしているかということについて特集していました。エディは翌年、動物ケア職員が肘の関節炎の治療の一環として、おもちゃのバスケットボールでダンクシュートの練習をさせたことから、更に有名になりました。この裏でのエクセサイズの様子はネットで広まり、オレゴン動物園のYouTubeチャンネルで130万回以上も再生されました。

エディが有名になったダンクシュートを決める動画

エディとセルマは、アメリカ魚類野生生物局からの長期貸与として2000年からオレゴン動物園に住んでいます。ジューノと同様、セルマとエディも1998年にカリフォルニア沿岸で親とはぐれていたのを保護されました。自分の力で自然の中で生きていくスキルが十分でなかったため、モントレーベイ水族館へリハビリのために連れていかれましたが、最終的にアメリカ魚類野生生物局から野生に帰すことができないと判定されました。


ラッコはキーストーン種であると考えられており、太平洋沿岸の海洋生態系において非常に重要な役割を果たしています。ラッコが健全なケルプの森を促進し、そのケルプの森が何千もの生物を擁しているからです。


ラッコは、絶滅危惧種のリストにおいてはThreatened(絶滅に瀕している)ものに挙げられています。かつてはオレゴン沿岸も含む北太平洋、日本からバハカリフォルニアにかけて、15万から30万頭が生息していたと考えられています。その毛皮が珍重され、1800年代終わりから1900年代初めにかけて、絶滅近くまで乱獲されました。1911年までに、攻撃的な毛皮猟により、世界中のラッコの数は約2,000等までに激減してしまいました。


今日、乱獲からは守られていますが、ラッコは油の流出や漁網、感染症などに脅かされています。生物学者たちは過去30年以上で、個体数が50%減ったと推測しています。オレゴン州沿岸において1907年以降野生のラッコは生息地を確立していませんが、単独のラッコは目撃されています。最近では2009年デポー湾で目撃されています。


オレゴン動物園のラッコたちや、野生のラッコを守る方法についてはこちらをご覧ください。
oregonzoo.org/discover/animals/southern-sea-otter

訳者注:2つの動画はYouTubeのOregon Zooチャンネルから引用しています。参考のため記事中に引用していますが、元の記事にはありません。