【記事】野生で妊娠し飼育下で出産した初めてのラッコ | Sea otter pup conceived in wild is first born in captivity

本日は2015年1月22日付のSanta Cruz Sentinelから、"Sea otter pup conceived in wild is first born in captivity"をご紹介します。保護されたラッコがカリフォルニア大学サンタクルーズ校ロングマリン研究所で出産しました。自然で妊娠したラッコが飼育下で出産した初めての例だそうです。

カリフォルニア大学サンタクルーズ校ロングマリン研究所で野生で妊娠したラッコが初めて飼育下で出産し、研究者たちがラッコの子育てを観察できる稀有な機会となっています。


感謝祭の前日、それは数分のうちに起こりました。チームでそのそばにいたのは、シニア・アニマル・トレーナーのコートニー・リベイロ=フレンチ氏ただ一人でした。


リベイロ=フレンチ氏は、妊娠しているラッコ、クララが奇妙な動きをしているのに気が付きました。水面上でくるくるとずっと回転し、餌に目もくれませんでした。クララは昨年8月にモスランディングの砂浜でモントレーベイ水族館により保護されましたが、人間に慣れすぎたため野生に返すことが難しいとアメリカ魚類野生生物局に判断されたラッコでした。


「突然、クララは回るのを止めました」リベイロ=フレンチ氏はクララが丸くなって口で赤ちゃんをくわえようとしているのをみました。


「クララは自分で子どもの頭を引っ張り出そうとしていました。それから、子どもの鳴き声が聞こえたのです」甲高い赤ちゃんの鳴き声でした。


この赤ちゃんラッコにはまだ名前がありません。研究者たちは、離乳後この子どものラッコを自然に返すことを計画しているからです。人間に対して興味を持たないよう、研究者たちは子どものラッコへの干渉を制限し、母親と一緒にいる水槽を目隠し用のフェンスで仕切っています。子どもの雌雄はまだ分かっていません。


しかし、ラッコにおける子育て中の母親が必要とするエネルギーを調べる初めての研究がはじまりました。

UCSCロングマリン研究所で、母親の真似をして食べる子ども (Joe Tomoleoni -- Contributed)
UCSCロングマリン研究所で、母親の真似をして食べる子ども (Joe Tomoleoni -- Contributed)

カリフォルニアラッコ


ステイタス: 絶滅の恐れがある

 

生息数:2,944 (カリフォルニア沿岸、2014年)

 

授乳末期症候群(End-lactation syndrome):

離乳させたばかりの母親は生理学的・免疫的に弱っているため、感染症や病気にかかりやすくなり、ある地域では非常に高い死亡率を引き起こしている。

 

主な死因:感染症、病気、サメの咬合(噛まれること)による傷、餌不足

 

詳細:カリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究についてはwilliams.eeb.ucsc.eduを参照。
アメリカ地質調査所の最新の生息数調査についてはtinyurl.com/otter2014を参照。

 

参考:アメリカ地質調査所及びカリフォルニア州魚類野生生物局

 


カリフォルニアラッコは、ラッコ猟が野放しで行われ、その数が1930年に約50頭となっていましたが、1977年の「絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律」により絶滅の恐れがある種に挙げられています。カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のポストドクターの研究員であるニコル・トメツ氏によると、昨年、その数は「絶滅の恐れがある」リストから外れるラインのわずか下、約3,000頭だったとのことです。


トメツ氏は6年に渡って授乳末期症候群について研究してきました。これは、子どもが離乳したばかりのラッコに見られるものです。こうした痩せ細り弱くなった母親は子育てのためにエネルギーを使い果たすため、感染症や病気にかかりやすくなります。実際、ラッコの死因の一番の原因でもあるとトメツ氏は語っています。

「授乳末期症候群は他の原因となるようなものにかかりやすくしてしまいます。それによって、寿命が縮まってしまいます」とトメツ氏は言います。


毎日体重の4分の1の餌を必要としているという点で、ラッコはすでに高いカロリー需要があります。言わずもがなですが、子育て中のラッコには更にそれが加算されます。子育て中のラッコが実際どの程度の餌を必要としているのかはまだ分かっていません、とトメツ氏は述べています。


週に一度、トメツ氏のもとで、クララと子どもは大きなドームの中に入り、酸素の消費量を計測しています。それにより、クララが毎日どのくらいのカロリーを必要としているのか計算できるのです。カーメル・オッター・コーヴ基金の出資によるこの研究は、カリフォルニアラッコの主要生息域であるカリフォルニアの中央沿岸部で見られる授乳末期症候群を理解する鍵となるかもれひません、とカリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究員で共著者でもあるテリー・ウィリアムズ氏は語っています。


トメツ氏によると、中央沿岸部では、食べられるウニやアワビ、貝類、その他の底生の生物が限られているため、ラッコの数のキャパシティは上限に達しているようです。ラッコ間で餌に対する競争が激しくなると、よりその症候が出やすくなります。

ラッコはかつてメキシコのバハからアラスカ、日本にかけて生息していました。現在その生息域はサンタバーバラからピジョン岬に限定されているとトメツ氏は言います。


生息数を増やすためには、より生息域を広げる必要があるとウィリアムズ氏は言っています。


「雌のラッコたちにいったい何が起こっているのか、みんな疑問に思っていると思います。それが生息数の増加が失速していることや、生息域の拡大にとっての鍵になるでしょう」とウィリアムズ氏は述べています。

記事元:
Santa Cruz Sentinel
Sea otter pup conceived in wild is first born in captivity
By Kara Guzman,  Posted: 01/22/15, 7:02 PM PST