【記事】可愛いだけじゃないーラッコは湿地帯のヒーロー | More Than Just Cute, Sea Otters Are Superheroes Of The Marsh

本日は、2014年12月14日付のnprの記事、"More Than Just Cute, Sea Otters Are Superheroes Of The Marsh"の書き起こしをお届けします。最初は絶滅に瀕するラッコそのものを助ける目的でしたが、今はラッコを助けることで環境を改善し守るという、より大きな目的を持っています。

エルクホーン・スラウ・ナショナル・エストゥアリーン・リサーチ保護区でカニを食べようとするラッコ。非常に可愛らしい。しかしより重要なのは、ラッコが間接的に農業排水の有害な影響とたたかい、水の中の生態系を守っているということだ。(Rob Eby/AP)
エルクホーン・スラウ・ナショナル・エストゥアリーン・リサーチ保護区でカニを食べようとするラッコ。非常に可愛らしい。しかしより重要なのは、ラッコが間接的に農業排水の有害な影響とたたかい、水の中の生態系を守っているということだ。(Rob Eby/AP)

アラン・ラス(ホスト)

可愛い動物の動画が大人気だと聞くとウンザリするものですが、シカゴのシェッド水族館で泳いだり遊んだりする赤ちゃんラッコの動画は好きにならずにはいられません。まだご覧になっていらっしゃらなければ、ぜひインターネットで探してみてください。どこにでもありますから。さてこのラッコは、今週ABCの「グッドモーニングアメリカ」という番組で、またしても話題になりました。名前を授かったのです。


(テレビ番組「グッドモーニング・アメリカ」より)


「名前はルナです!」

(歓声)

女性「完璧な名前ね」

男性「いい名前だね」

女性「ルナを見て!」


ラス:今日、野生のカリフォルニアラッコは3,000頭足らずしか生息していません。150年前の4分の1です。しかし、研究者たちは、ラッコの保護はラッコのためだけにとどまらないと言っています。ジェームス・デラフーシーがカリフォルニア中央部で、ラッコが私たちに及ぼす影響についてレポートします。


ジェームス・デラフーシー:モントレーベイ水族館の屋上、巨大なプラスチックの水槽の中に、母親代わりのラッコ・アビーが養子の赤ちゃんラッコ671号と一緒に浮かんでいます。今日、671号は体重を測らなければいけないのですが、そのためにアビーから引き離さなければなりません。アビーは嬉しくありません。


(ラッコの鳴き声)


デラフーシー:最長で9か月間、アビーはこの赤ちゃんラッコを育てることになります。準備が整ったら、671号はエルクホーン湿地帯という、保護されている塩沼へ放されます。ここがティム・ティンカー氏の仕事場です。ティンカー氏はアメリカ地質調査所のためにラッコの追跡を行っているのです。


ティム・ティンカー:ラッコに注目しているのは、単にラッコが可愛らしく、見ていて楽しいからというだけではありません。生態系の機能において、非常に大きな役割を果たしているからでもあるのです。


デラフーシー:エルクホーン湿地帯。ここは、今は保護されていますが、20年前はここにはラッコは全く生息していませんでした。塩沼は荒れ果てていました。農地から常に排水が河口へ流れ込み、人工的な栄養素を蓄積させました。

モントレー湾の潮だまりで泳ぐ母子ラッコ(Mike Fiala/AP)
モントレー湾の潮だまりで泳ぐ母子ラッコ(Mike Fiala/AP)

ティンカー:投げ捨てているようなものでした。ここに肥料を投げ捨てると、藻が大量に発生します。それがアマモという海草の表面で繁殖し、海草を窒息させてしまうのです。

 

デラフーシー:このアマモという海草は、様々な動物たちにとっての食物網のふるさとのようなものでした。その藻が繁殖するまでは。通常、虫が藻を食べてコントロールしているのですが、ラッコがいなければ、ラッコの大好物であるカニが、そうした虫を食べつくしてしまうのです。カニはどんどん増えました。

 

ティンカー: 塩沼の土手の中に、穴がたくさんあります。それは、カニのアパートです。そこにカニが住んでいるのです。

 

デラフーシー:カニのアパートですか(笑)

 

ティンカー:私はそう呼んでいます。

 

デラフーシー:ブレント・ヒュー氏は、カリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究者です。ヒュー氏は、カニのアパートがたくさんあると、湿地帯の土手そのものが支える力を失ってしまうと言います。ブレント・ヒュー:生態系は、文字通り、海へ崩れていきます。なぜなら、土手がなくなると、それを支える塩沼の植物も失われてしまうからです。

 

デラフーシー:そして、こうした影響は他の動物、人間にさえも及びます。エルクホーン湿地帯のような生息地は、あらゆる生態系の利益をもたらしています。漁業業者は、自然の魚の生息地から恩恵を受けます。家は、嵐や海面上昇に対して自然のバリアから恩恵を受けます。植物は、湿地帯を沈めてしまう二酸化炭素から、恩恵を受けます。そこへラッコがやってきたのです。政府による数十年にわたる保護の元で、ラッコが帰ってきてカニを食べ始めました。それは、藻が減り、海草が増え、カニのアパートが空になり、泥地の塩沼がまだ保たれています。生態学者のティム・ティンカー氏は、この大きな変化に彼自身とても驚いていると述べました。

 

 

ティンカー:突然、ラッコを含む食物網という新しいものが、肥料が流れ込んでいたとしても、海草を健全に保つということを教えてくれたのです。私たちがまったく考えもしないことでした。

 

デラフーシー:水族館へ戻る途中、ティンカー氏は、ラッコの保護に対する考え方が変わってきていると述べました。

 

ティンカー:

本当にラッコが必要なのです。私たちを救ってくれているのです。わたしたちが依存している生態系を救ってくれているのです。そういう意味では、15年前に始めた時とは、異なるものです。

 

デラフーシー:ラッコという、可愛らしい一つの種を救うというだけではありません。ラッコを救うことは、生態系全体を救うことでもあるのです。だから、ラッコが必要なんです、とティンカー氏は述べました。

NPRニュース、ジェームズ・デラフーシーがお伝えしました。

カリフォルニア州モントレー。遊ぶラッコ。(Paul Sakuma/AP)
カリフォルニア州モントレー。遊ぶラッコ。(Paul Sakuma/AP)

記事元:
NPR

More Than Just Cute, Sea Otters Are Superheroes Of The Marsh

JAMES DELAHOUSSAYE DECEMBER 14, 2014 5:39 PM ET