【記事】ラッコの個体数増加を阻む脅威 |Threats to Southern Sea Otters Taking a Toll on Population Growth

本日は11月17日付のThe Epoch Timesの記事、"Threats to Southern Sea Otters Taking a Toll on Population Growth"をご紹介します。ラッコの個体数増加を阻む要因、そしてわたしたちに何かできるのかを考えます。

餌を食べるラッコ 2004年4月6日アラスカ州バルディーズ (Photo by David McNew/Getty Images)
餌を食べるラッコ 2004年4月6日アラスカ州バルディーズ (Photo by David McNew/Getty Images)

9月の終わりに今年のラッコ啓蒙週間が始まった際、アメリカ地質調査所が2014年のカリフォルニアラッコの生息数に関する報告書を公表しました。毎年、研究者やラッコの啓蒙活動団体は報告書によりラッコの個体数の回復を顕著に示されることを期待しています。しかし、ラッコの保護に対して相当の努力がなされているにも関わらず、個体数が頭打ちになっていると発表されています。最近アメリカ地質調査所による報告書には2014年のカリフォルニアラッコの個体数は2,944頭で停滞していることが示されています。これは昨年のカリフォルニアにおけるラッコの数2,939頭から僅かに増えただけです。


この現象を説明するものとして、カリフォルニア中央沿岸部の主要な生息域では、これ以上の数のラッコを抱えることができないということが挙げられます。この地域では、利用可能な食料や資源、スペースに対し、すでに飽和状態の数のラッコを支えているということが考えられます。食料に対する深刻な競争がなければ、中央沿岸部の狭い生息域に多くのラッコを抱えることができるのです。こうした競争は、ラッコが生息数を増やすにあたって非常に大きな重圧になるのです。ラッコにとって、唯一の解決策は生息域を北や南に広げることです。そうすることにより、散らばるためのスペースを得て数を増やすことができるのです。しかし、残念ながら、ラッコはガビオタ・ステイト・ビーチの先、コンセプション岬より南にはその生息域を広げる様子が見られません。

生息域が北に広がらない理由

研究者たちは、中央沿岸部のラッコたちが北へも南へも生息域を広げることが困難になっているということをよくわかっています。なぜこのようなことが起こるのかということに光を当て、カリフォルニアラッコが直面し、増加の傾向がある2つの脅威についてみてみましょう。サメによる捕食と病気の蔓延です。


サメに噛まれることは、カリフォルニアラッコの死因の一位です。何年もの間、サメの捕食により、現在の生息域の北限であるピジョン岬の先にラッコの生息域が広がることができていません。サメは一般的にラッコを食べてしまうわけではありませんが、研究者たちはサメが通常餌としているアザラシやアシカと間違えてラッコを噛ってしまうのではないかと考えています。サメに噛まれてしまたラッコの多くはその場で死んでしまうか、もしくは噛まれた傷が原因で感染症を患い死に至ります。


過去10年以上にわたり、ラッコがサメに噛まれる数が劇的に増加し続けていますが、これは生息域の南、カユコスからコンセプション岬にかけての地域でラッコがサメに遭遇する数が増えている結果によるものです。研究者たちは、この地域でラッコとサメの遭遇が増えているのか判明しようと努力しています。


しかし、サメとラッコの争いは自然における海洋生態系の一部にすぎず、太平洋沿岸のラッコ全てにとって存在するものです。より憂慮されることは、ラッコが病気や感染症にかかるという脅威が増しつつあるということです。これらの病気や感染症は、カリフォルニア沿岸の人間の活動と密接に関係していると考えられています。


病気は、ラッコが生息数を増やし生息域を広げることを妨げている主要な要因です。毎年、ラッコの死の40%は寄生虫やバクテリア、真菌などによる感染症に直接的に関連しています。こうした病気の多くは、汚染された陸地からの排水により引き起こされ、悪化させられています。


似たような脅威は、沿岸近くの淡水生態系における毒性藻類の「水の華」と関係があります。「水の華」は水温の上昇や、窒素やリンを含む農業排水の結果である栄養濃縮により引き起こされる、藻類の異常発生です。カリフォルニアで現在問題となっている夏の水不足と、塩分の増加もまた「水の華」の原因となっています。

「水の華」が発生したカリフォルニア州ワトソンビルのピント湖。ラッコの生息域の近くにある。( photo from seaotters.com)
「水の華」が発生したカリフォルニア州ワトソンビルのピント湖。ラッコの生息域の近くにある。( photo from seaotters.com)

ある種の「水の華」はミクロシスチンのような、人間や野生生物にとって有害な毒素を産出することがあるため、特に危険です。最近、研究者によると、カリフォルニア沿岸の淡水生態系で発生した毒素ははるか遠く、モントレー湾のような沿岸海洋生態系にまで達しているということが発見されています。ミクロシスチンという毒素は、魚、ムラサキガイ、甲殻類や他の無脊椎動物など、カリフォルニアの沿岸海洋生態系で見つかっています。残念なことに、ラッコはこれらの餌を大量に食べるため、ミクロシスチン毒によって苦しめられることになります。ミクロシスチンはラッコに深刻な肝臓の病気を引き起こすと、特に他の脅威と組み合わさると、生存の可能性は極めて低くなってしまいます。研究者によると、これらの毒に関連する死の多くは2005年から発生していると考えています。それは、淡水の「水の華」による毒素がどんどん沿岸に達しているということを意味しています。この原因は、水の状態に影響を与える気候変動とも一部関連があると考えられています。


自然資源の管理者や気候変動の研究者は、気候変動がカリフォルニアの生態系に与える影響について引き続き理解しようと試みています。しかし、海面上昇や水温上昇、海洋酸性化等により、沿岸の生息域の変化の増加が反映されています。これらは疑いなくラッコやカリフォルニア沿岸の生息域に影響を及ぼします。たとえば、海洋酸性化はある種の生物の繁殖能力や、貝や殻などを維持する力を衰えさせます。強力で自然な保護がなければ、これらの生物は生存し、繁殖することができなくなってしまいます。これは、ムラサキガイや二枚貝などを大量に食べるラッコにとっては、非常に大きな問題なのです。

回復のための努力

2014年のラッコの個体数の報告から、カリフォルニアラッコの啓蒙活動団体や研究者たちの間ではこうした脅威がラッコの個体数にどのような影響を与えているか、また、個体数の回復をサポートするために何ができるかということを緊急課題としなければならないという感覚が固まっています。そして、キーストーン種としてのラッコの健康状態によりカリフォルニアの沿岸生態系や他の海洋生物に関する必要不可欠な情報が提供されており、気候変動に直面するにあたりその重要性は増しています。


ラッコの個体数の回復をサポートするために私たちにできることはたくさんあります。わたしたちは力を合わせて水質やカリフォルニア全域の沿岸地域の健全さの向上に取り組まなければなりません。こうしたことがラッコが生息する場所の健全さを増大させるだけでなく、生息域の北や南の健全さを向上させ、ラッコの生息域の拡大に繋がるのです。カリフォルニア州はすでに州全域における水質の監視と報告を増やすというステップを踏みはじめ、2007年にはカリフォルニア水質管理評議会を設置しました。これらの情報から、どの地域が助けを必要としているのかを知ることができるようになりました。


カリフォルニア沿岸地域の住民は、水域の健全性や海洋環境へ流れ込む汚染排水の削減のため、より厳しい基準を要求するよう地元の水委員会に対して促すことでサポートすることができます。農業で使用される栄養剤のような、陸地の汚染を減らすことで、沿岸の生息域や、そこを棲家とする野生生物たちへ毒素や細菌などが達しないよう防ぐことができます。カリフォルニアの住民はまたサポートを必要としているラッコの調査機関に対し、カリフォルニア州税を通じてカリフォルニアラッコ基金へ寄付し貢献することもできます。(州税の確定申告の際、申告書に記入すれば自動的に還付金の一部をラッコ基金へ寄付することができる)


人間が引き起こす直接的な脅威を減らすために行動を起こせば、カリフォルニアラッコやその沿岸生息域を健全にすることができ、他の脅威に対し立ち向かう際にも、よりましになるのです。今行動を起こすことが、私たちにとってこの瀕死の動物を救い、それらが依存している生態系を救う最良の機会なのです。


ヘイリー・スチュワートはディフェンダーズ・オブ・ワイルドライフdefendersblog.orgのカリフォルニア・プログラム・アソシエイトです。オリジナルの記事と更なる情報についてはこちらをクリックしてください。

記事元:

The Epoch Times

Threats to Southern Sea Otters Taking a Toll on Population Growth

By Haley Stewart, www.defendersblog.org | November 17, 2014