【記事】エクソン・バルディーズ号原油流出事故のラッコへの影響 | Effects of the Exxon Valdez Oil Spill on Sea Otters

今回はUSGS(アメリカ地理調査所)のウェブサイトから、"Effects of the Exxon Valdez Oil Spill on Sea Otters"の翻訳をお送りします。
原油流出事故がラッコに与えた影響について簡潔にまとめられています。

ラッコの死体を調査する
ラッコの死体を調査する

ラッコは1989年のエクソン・バルディーズ号原油流出事故で大きな影響を受けました。流出事故に関連性が深いとされるラッコの死亡数は、事故直後の最初の1か月で、推定1500頭から5500頭と見積もられています。アラスカサイエンスセンターの研究者たちは、1989年の事故に最初に対応した人々の一部であり、事故からの回復の過程を記録したり、ラッコやラッコが生息する沿岸生態系への原油汚染の影響をより理解したりするために、今日も研究を続けています。

 

原油流出事故の影響について、我々が正確に理解したり記録したりすることが難しい理由の一つに、ラッコがどの程度繁殖していたかという性格な数字がないということが挙げられます。これは、アラスカ湾におけるほぼ全ての生物たちに言えることで、今日、ほとんどの場所において、このような災害が起こり負傷した場合の評価は変わらず困難なままとなっています。原油流出事故後の初期調査は、影響を受けたラッコの数量の正確な見積もりと、繁殖活動、生存についての研究方法を向上させることを含む、損害の評価に焦点が当てられていました。

 

事故によって最も影響を受けた沿岸の生物たちとその生息地の大規模な生態系調査は1999年に完了しました。底生無脊椎動物(海の底に住んでいる無脊椎動物)が一次生産物をラッコや海ガモのような次のレベルの消費者に受け渡すという食物網に依存する沿岸部の生物たちに対し、原油流出が長期的な影響を与えている証拠が発見されました。生化学的・遺伝子技術は、未だに残る原油が沿岸の生物の回復を長引かせる原因となっていることを示唆しています。その後、原油が他の場所よりも10年ほど早く沈殿した浜を調査したところ、プリンス・ウィリアム湾の20エーカーに広がる柔らかい沈殿物のある潮間帯浜において、予期しないほどの原油が隠れていることが分かりました。


最近のラッコの繁殖調査によると、湾で汚染された地域全体を考えると、回復に向かって顕著な進歩を遂げているようです。我々の予測では2009年までには湾の西部におけるラッコの繁殖状況は事故直後の1993年の予測の2,000頭よりは2,000頭増えると考えています。しかし、ラッコの致死率が90%に及び多くの原油が残っている、汚染が最も深刻な場所だけをみると、まだ回復したという証拠は不完全です。ラッコの潮間帯における潜水行動や発表されている原油との遭遇率に基づく最新の調査によると、原油の汚染が深刻な地域では全てのラッコは少なくとも年に一度、あるいはあるラッコは週に一度、エクソン・バルディーズの原油と遭遇する可能性があることを示しています。1年間に浜に打ち上げられたラッコの死体を回収しその死因を長期間にわたって継続的に研究した結果、致死率が上昇していることが分かっています。それは、ラッコの回復を阻害している最も大きな原因となるものです。またその研究から、原油流出後長期的にみて死んでしまうラッコの数は、原油流出経験直後に死んだラッコの数と同じかあるいはその数を超えることを示しています。

 

残存原油の研究

エクソン・バルディーズ号原油流出事故がラッコに与えた影響とその回復についての我々の研究は続いています。以前、ラッコの回復を評価する基準には、原油流出前のレベルまで個体数が回復していることや、原油に汚染された証拠が失われている状態になっていることが含まれていました。流出以前のデータが不完全なため、流出状態まで個体数が回復していると断定することは困難です。しかし、湾内の、ラッコの致死率が90%に達していた場所では、ラッコの死体の数を個体数の繁殖の概算のベースライン及び回復の基準として用いることができます。最近の調査では、もしこの回復傾向が続くようなら、最も汚染された地域での個体数は数年以内に回復するだろうと見られています。我々は現在遺伝子発現技術を用いてラッコ(と他の生物の)残存原油への汚染に対する反応を評価しています。最近の研究では、ある種の生物においては細胞レベルで原油への反応は消えつつあると出ていますが、ある地域ではまだ原油への反応が残っています。環境の中に原油が残っている限り、沿岸の生物たちが汚染される可能性は残り続けるのです。

 

ラッコの回復を決定することは、プリンス・ウィリアム湾の沿岸コミュニティやアラスカ湾の他の地域の長期的なモニタリングに統合されつつあります。アラスカサイエンスセンターは国立公園局、アメリカ海洋大気圏局、アラスカ大学や他のパートナーと協力し、エクソン・バルディーズ号原油流出信託評議会のサポートを得て、原油流出事故からの沿岸環境回復監視プログラムを確立しています。そのプラグラムにより、将来同様の事故が起こった場合のためによりよく備え、また一般的に沿岸環境に対して影響を与える要因について理解を深め、長期的に観察されるであろう変化の原因について判断することができるようになるでしょう。

U.S. Department of the Interior | U.S. Geological Survey

URL: http://alaska.usgs.gov/science/biology/nearshore_marine/evos.php

August 07 2014 10:31:52.