アーカイブ(2018年5月)

2018年

5月

26日

【記事】ラッコとハクトウワシのつながり | Eagles Deck Out Their Nest With Kelp

本日は2018年5月25日付のHakai Magazineより、"Eagles Deck Out Their Nest With Kelp"をお届けします。ラッコが以前の生息地へ戻ることでその地域の生態系に様々な影響をもたらしていますが、それが海だけでなく陸地で暮らす動物にも出始めているという内容です。

生物学のエリン・レヒシュタイナーは小さなアルミ製のボートに乗り、クイーンズサウンドの海をゴシュリングロックスへ向かっていた。ここはカナダのブリティッシュコロンビア州中央沿岸部から離れた島々の一つだ。2015年2月、レヒシュタイナーはこの地域で海の頂点捕食者であるラッコの研究のため訪れた。しかし、レヒシュタイナーが訪れた際別のものに目を惹かれた。風で歪んだ高さ2.5メートルほどのトウヒ(訳者注:松の仲間)のてっぺんにあるハクトウワシの巣だ。

 

ハクトウワシは縄張りで営巣する。一度営巣に適した場所を見つけたら、そこから離れることはめったにない。実際、この巣は1990年代に記録されているが、当時その巣は全て木でできていた。今日、その巣はほとんどが明らかに海岸で拾ってきた乾いた海草で作られている。

 

「私たちが知る限り、こうしたものが見つかったのは初めてのことです」とレヒシュタイナーは言う。彼女はハカイ研究所とビクトリア大学で博士号候補者としてラッコの研究を行っている。

 

ケルプで作られたワシの巣の発見は、レヒシュタイナーが言うところによると、ブリティッシュコロンビア州沿岸から一度は絶滅しそこから回復しつつあるラッコが、どれほど海や陸、そしてその先へと影響を及ぼしているのかという、最も新しい例だ。

 

1970年頃にブリティッシュコロンビアへ再導入されたラッコは、現在歴史的な生息域の大部分に再入植し拡大している。ラッコがいなくなってしまっていた間、ラッコのエサであるウニがその地域のケルプを食べつくし一掃してしまった。ラッコが回復するとケルプやケルプに支えられている多くの生物も戻ってきた。

 

ラッコ・ルネサンスの影響は劇的だ。新しく生まれたケルプの森は、メバルやアイナメ、その他の多くの生物が繁栄している。浜に打ち上げられたケルプは沿岸に住む小さな生物に隠れ場所を提供し、窒素栄養化の源となる。対照的に、ラッコのいない海ではウニ砂漠(訳者注:磯焼け)があるに過ぎないとレヒシュタイナーは言う。

 

ゴシュリングロックスのような樹木の少ない場所では、ケルプもワシを支えているようだ。ラッコがケルプの繁茂を助ける以前は、レヒシュタイナーが言うには、ゴシュリングロックスのハクトウワシは最も近い木が豊富な場所へ行くために、エネルギーを費やして3キロメートルも内陸へ何度も飛ばなければならなかった。

 

新たな建築素材を手に入れられるようになることは、ラッコは戻ってきたことによりハクトウワシが得られる利益の一部に過ぎない。ワシにとってはラッコの赤ちゃんは重要なタンパク質源えあり、ケルプの森に集まる魚もそうだ。これにより、ワシのエサである海鳥はそのプレッシャーを減らすことができる。

 

発見されたケルプでできた巣はたった一つだが、これにより、研究者らが生態系のコミュニティがどのようにお互いにつながっているのかをという理解を深めているとレヒシュタイナーは言う。「本当にすごいと思うのは、海の頂点捕食者と陸で目に見えて起こっている現象がこのように明らかにつながりがあるということです」

 

カリフォルニア大学サンタクルーズ校の海洋生物学者でラッコそのと生態系への大きな影響に関する権威でもあるジェームス・エステスは、この意見に賛同する。

 

「ケルプはこの場所において、沿岸生態系の基礎となるもので、ラッコが増えればケルプも増えます」とエステスは言う。この発見は「沿岸生態系におけるキーストーン種としてのラッコによる生態学的影響の範囲を広げることになるでしょう」

 

*エリン・レヒシュタイナーの研究はTula Foundationによる資金援助を受けています。同基金はハカイマガジンやハカイ研究所へも資金提供を行っています。ハカイマガジンは研究所や同基金とは独立して編集されています。

Hakai Magazine

Eagles Deck Out Their Nest With Kelp

May 25th, 2018

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2018年

5月

24日

【記事】ラッコがアメリカ西海岸から消された歴史 | How Sea Otters Were Once Nearly Wiped Out in Western North America

本日は2018年4月27日のTIME誌の生地より、"How Sea Otters Were Once Nearly Wiped Out in Western North America"をお届けします。寄稿者のRICHARD RAVALLI氏は今年12月にラッコの歴史に関する本Sea Otters:A Historyを出版されます。

ケルプの中で休むラッコ カリフォルニア州モントレーベイVW Pics/UIG/Getty Images

「このような素晴らしい動物がまだその種としての人生を取り戻していないのは非常に残念なことだ」-ジョン・ウッドハウス・オーデュボン

 

今年は、カリフォルニアのゴールドラッシュが始まって170周年にあたる。(訳者注:米墨戦争が48年に終戦、カリフォルニアはアメリカ領となり、49年にアメリカの州へ昇格した)1948年サッターズミルでジェームズ・マーシャルが金鉱を発見し、北アメリカ西海岸の社会的・政治的環境が一変しただけでなく、自然環境も変わった。そのため、今日ではマザーロード・ゴールドベルトでの掘削は以前のごく一部に限られてしまっている。しかし、水圧掘削が地表に傷をつけ河川を汚染するようになる以前は、カリフォルニアの沿岸からかつて数十万頭生息していた動物をはぎとった。フォーティナイナーズ(訳者注:1849年頃から金の採掘のためカリフォルニアへ向かった人々)の中にはラッコに対する仕打ちを目撃する者もあり、特に一人、ゴールデンステート(訳者注:カリフォルニアの別称)で世界的な注目を始めて集めるようになったファー・ラッシュ(毛皮ラッシュ)に対し、心に残る賛辞を残した者がいた。

 

ジョン・ウッドハウス・オーデュボンは著名なナチュラリストであるジョン・ジェームズ・オーデュボンの末の息子で、1849年10月に鉱夫らの一団とカリフォルニアへやって来たが、父のライフラークであった自然史に関する標本や西部の自然の説明図の作成を続けたいとも考えていた。若いオーデュボンには残念なことだったが、採掘で大儲けするという意味でも、植物や動物を採取すると言う意味でも失敗に終わった。しかし、「北米の四足類」という、父の死後1854年に出版された一連の本の3冊目で、重要な現地の動植物について記載している。オーデュボンはその本で、金の採掘場へ向かう途中、サンホアキン川を渡っている際ラッコを見たと報告している。その生物は彼の仲間に二度撃たれ、その後川の向こう岸に消えた。彼らが出会ったのがもし本当にラッコ(Enhydra Lutris)であったなら、内陸にいる、またサンフランシスコ湾支流で暮らす最後の個体であったかもしれない。

 

カリフォルニアにおいて約半世紀の間ロシア人がアラスカ先住民やアメリカ先住民を徴集して行ったラッコ猟により、現地のラッコの個体群は殲滅し、絶滅近くまで減少してしまった。スペイン当局は外国人による密猟を止めることができなかった。(訳者注:1821年に独立するまでメキシコはスペイン領だった)後にメキシコ当局が猟を規制しようとしたが、その規制もほとんど効果がなくまた遅すぎた。ラッコは地上でもっとも密度の高い毛を持ち、その美しく密度の高い毛皮は非常に高価で買い取られた。

 

19世紀後半、アメリカ人がその動物を追い求め、北米の太平洋沿岸へやってきた。1860年代、70年代までにはその地域で地政学的、商業的な変化が起こり、ラッコ猟は海へと進出し、残り少ないラッコを探しだし殺すという探検に変わった。特に、1867年にアメリカがロシアからアラスカを購入してからは、アリューシャン列島やクリル諸島全体で精力的に海洋哺乳類を追いつめていった。20世紀初頭の進歩主義時代になりラッコ猟は遂に禁止されたが、太平洋の野生生物へのダメージはすでに相当であり、完全に元に戻ることはないだろう。

 

最後のカリフォルニア北部のラッコに関するオーデュボンの説明には、彼の'Enhydra Marina"という絵が添えられている。これは疑いの余地のなく、最も美しいテクスチャーで、絹のような、光沢のある毛皮など全てのイメージを生き生きと描いているが、魚を抱えているのがラッコらしくない。ラッコは通常、そのようなことはしないからだ。

 

the University of Michigan Special Collections Library
the University of Michigan Special Collections Library

この作品は人間が魅了されたものと、ラッコに関する知識の欠如が合わさったものを示している。私たちは今日、ラッコを、太平洋の観光地の海に浮かんだり、水族館の展示水槽で遊んだりしている可愛らしく愛でるべき生物として見たり考えたりしている。しかし、沿岸に暮らす愛でるべき象徴的な存在としてみなすことで、血なまぐさい過去や北アメリカ西海岸から完全に消されそうになったラッコたちの歴史をぼかしてしまうことになる。従って、私たちはラッコやその歴史についてより考えなければならない。オーデュボンが1世紀以上前に言ったように、ラッコは種としての人生を取り戻す必要があるからだ。

 

※リチャード・ラヴァリはカリフォルニア州ロックリンのジェスップ大学の歴史学准教授。最初の著作Sea Otters: A Historyがネブラスカ大学出版より今年後半に出版される。

TIME

How Sea Otters Were Once Nearly Wiped Out in Western North America

April 27, 2018 ‘Written by RICHARD RAVALLI

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2018年

5月

19日

【記事】生息域を拡大できないカリフォルニアラッコの苦悩 | Sea otters rebound but struggle to regain historic range

本日は2018年5月17日付のAP Newsから、"Sea otters rebound but struggle to regain historic range"をお届けします。
一度壊れてしまったシステムは、容易に元に戻すことができません。だからこそ、これ以上壊れることがないようにしなければならないのです。

カリフォルニア州モスランディング(AP)-カリフォルニアラッコがカリフォルニア州中央部にある加工沿岸域で穏やかな波に浮かび、日光浴をしている。一方、西海岸一帯の専門家は、ラッコがいなくなった間崩れてしまった海に、沿岸に必要な捕食者を復活させる方法を見いだせず苦心している。

 

カリフォルニアラッコは毛皮をとるために産業規模での狩猟が行われた数世紀の間にほぼ一掃されたが、国や州の保護により1930年代に生き残っていた50頭ほどが回復し、今日3,000頭ほどになった。

 

しかし、問題もある。カリフォルニアラッコは頂点にいる肉食獣で通常は他の生物の個体数を一定にし、生態系のバランスをとっている。しかし、「行き詰まっているのです」とモントレーベイ水族館の上席生物学研究員のテリ・ニコルソンは言う。

 

数十年にわたり政府が保護しているにも拘らず、今日ラッコは歴史的な生息域の4分の1ほどを占めているに過ぎない。連邦の野生生物政策はラッコを自力で拡大させる必要を述べている。しかしラッコの生息域は実際過去20年以上、動いていない。

 

「現時点では、個体数が増えるには生息域の拡大が必要です」と水族館のラッコプログラムのマネージャー、カール・メイヤーが言う。メイヤー曰く、「限定された環境にラッコを詰め込む」ことは無意味だ。

専門家はアメリカの西海岸のカリフォルニアラッコをもとの生息域に復活させるため苦心している。これはヨセミテ国立公園にオオカミを復活させたように、捕食者の葉安役割が世界的に認知されるようになってきたものの一部である。

エルクホーン湿地帯と呼ばれる塩性河口域に集まるラッコやゼニガタアザラシやペリカンに囲まれてボートを進めながら、メイヤーは話した。

かつて捕鯨の町であったモスランディングにある再生された湿地帯は、現在の生息域であるカリフォルニア州中央沿岸部300マイル(約480km)の一部を成している。

 

その朝、オスのラッコたちが水の中で動かないようにお互い手を絡め合って眠り、春の日差しで腹を温めている。水路の奥では、メスのラッコが腹に若い子どもを乗せたり、厚い毛皮のおかげで成獣よりもっと浮きやすい生まれたばかりの赤ちゃんラッコをそばに浮かべている。

 

腹を空かせたカモメがユムシをかじるメスラッコを追いまわしている。それを子どもが目を見開いてみている。

 

海洋哺乳類では標準より小さいが、ラッコはイタチ科の中では最大でオスは最大100パウンド(45キログラム)ほどまで成長する。ラッコの毛は地上で最も密度が高く、体温を保っている。

 

カリフォルニアラッコをかつての生息域へより多く戻す試みは、頂点捕食者を歴史的な縄張りに戻す利点に対する認知が世界的により深まったことを反映している。

2018年3月26日に撮影された写真。カリフォルニア州モントレーのモントレーベイ水族館の展示水槽の底へ潜っていくラッコ。(AP Photo/Eric Risberg)

例えば20世紀前半、イエローストーンでオオカミの導入実験を行った後、アメリカ政府は20世紀後半までにはイエローストーン国立公園にオオカミの再導入の援助を行った。オオカミが狩りを行うようになり、大きすぎたシカやヘラジカの群れが小さくなった。その結果、イエローストーンでは様々な生き物が復活した。ビーバーや魚、そしてポプラの木までもが復活したという生態学者もいる。

 

野生生物当局は猛禽類からクマに至るまで捕食者を再生する試みを世界中で行ってきたが、その動物が生活を脅かすと思う人がいる場合は議論を呼ぶ。

 

水産業の一部の人々は、ラッコの復活に反対している。アラスカの漁師は当地で増加するアラスカラッコが、人間が寿司として食べるアメリカオオキタムラサキウニ(アカウニ)を食べてしまうと糾弾する。野生生物専門家は、価値のある魚介類を含む沿岸生態系全体はラッコや他の捕食者がランスを取らなければ、崩壊に直面するだろうと反論する。

 

人間が捕食者の再生を助けようとすることすら、容易ではないのだ。

 

時に「それはハンプティダンプティ症候群です」とオレゴン州立大学の生態学者で、陸上の肉食獣の再生は半分しか成功していないことを発見したビル・リップルは言う。

 

「まず捕食がいなくなった後に連鎖的にことが起こっている間、生態系が機能しなくなるという状況を目にすることがありますが」とリップルは言う。「その生態系をもとに戻すよいうことが本当に容易ではないこともあるのです」

 

カリフォルニアラッコに関して言えば、遠い昔に乱獲されたが、「私たちはどのような環境が普通なのかということすら知らないのです」とアメリカ魚類野生生物庁の海洋保全・ラッコ回復コーディネーターのリリアン・カーズウェルは言う。

 

ラッコが1世紀以上もその生息域からいなくなってしまったため、そして、別の捕食者であるヒトデに謎の大量死が起こったため、食欲旺盛なアメリカムラサキウニが西海岸で大発生している。

 

アメリカムラサキウニの数はコントロールを逃れ、北カリフォルニアのブルケルプの森は2014年以降その90パーセントが壊滅してしまったとカリフォルニア州魚類野生生物局の環境科学者シンシア・キャトンは言う。

 

2018年3月26日に撮影された写真。手前にアマモ、奥にラッコが見える。カリフォルニア州モスランディングのエルクホーン湿地帯で。(AP Photo/Eric Risberg)

ケルプの森は沿岸で暮らす生物にとって水中で隠れ場所になり、エサの貯蔵庫であり、養育室としても重要だ。

 

ウニに丸裸にされた場所へラッコがやってくると、ホホジロザメにすぐに見つかってしまう。

 

ホホジロザメによるラッコへの襲撃は今世紀少なくとも8倍に急増し、ラッコの一番の死因になったと海洋専門家は言う。

 

ラッコは海洋哺乳類の中では特殊で、脂肪層ではなく毛皮に頼っているため、通常サメはラッコを一口かじって捨ててしまう。しかし、ラッコはその多くがそのため死んでしまう。

 

ケルプで覆われている場所ではサメによる噛みつきはほとんどないことをニコルソンと水族館の同僚たちが発見し、エコグラフィー誌に3月発表した。

 

ケルプを助けるため、北カリフォルニアのメンドシノ沿岸の職業潜水師らがアメリカムラサキウニを手で回収したり吸い取りホースを使ってウニを吸い取ったりして、貴重なケルプの森の手入れを行っているとキャトンは言う。

 

アメリカムラサキウニはアメリカオオキタムラサキウニ(アカウニ)とは違って、人間にとってもラッコにとっても良い食べ物とはならない。大規模なアメリカムラサキウニの除去にインセンティブを与えようとアメリカムラサキウニの商業的な利用を試みている専門家もいる。

 

モントレーベイ水族館では、1984年から280頭の座礁したラッコを保護し野生に返してきたが、若いラッコたちがカニや他のエサよりもアメリカムラサキウニに慣れるような試みも行っている。

 

最終的には、カリフォルニアラッコの専門家はいつかラッコを車に積んでケルプが残っている場所へ乗せていき、再定着することを勧めるかもしれない。

 

2018年3月26日に撮影。カリフォルニア州モスランディングにあるエルクホーン湿地帯で、ラッコに気を付けるようドライバーに注意を喚起する看板。 (AP Photo/Eric Risberg)

それまでの間、科学者たちは他に何かできることがないか頭をかきむしるだろう。

 

西海岸の生き物はみな、数百万年かけてそれぞれの命を進化させてきたとカーズウェルは言う。わずかここ数世紀の人間による開発は、ラッコとケルプ、ウニ、サメ、その他の動物のネットワークを引き離してしまうに十分だった。

 

「色々な意味で、私たちは再生の時代にあるのです」とカーズウェルは言う。「特に海洋環境において再生の機会、状況を反転するための機会を強調しなければならないように思います」

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2018年

5月

13日

【記事】モントレーベイ水族館の愛らしいラッコたち | Otterly adorable at the Monterey Bay Aquarium

本日は2018年5月13日付のThe Mercury News紙より、"Otterly adorable at the Monterey Bay Aquarium"をお届けします。以前参加したラッコ保全ツアーの様子はこちらでお読みいただけます。

ふわりと浮かぶ芸術作品のように青い水の中を漂う真珠色のクラゲ。魅惑的な形で渦巻状に連なる銀色のイワシ。視線をくぎ付けにし、目を真っすぐにのぞき込むタコ。

 

モントレーベイ水族館の魅力は尽きないが、ラッコほご可愛らしいものはないだろう。北米で最も小さい海洋哺乳類であり、海にいる子犬のようなこの動物は展示動物の中のスターで、にぎやかな来場者が海の泡の中でラッコたちが遊んでいるのを見に来る。水族館の来場者はもちろん、この可愛らしいラッコが水槽の中を跳ねまわったり、追いかけっこをしたり、フィーディングタイムにエサを食べる様子に見とれることができる。

 

しかし、もしラッコを家のバスタブで飼いたいと思うことがあるような人なら、ラッコ保全ツアーをおススメしたい。洞察に満ちた、約1時間の水族館のラッコ保全プロジェクトのバックヤードを見ることができるこのツアーは、6歳以上にぴったりだ。

 

「私は、ラッコたちは海のもふもふ大使だと思っています」とラッコ中心のツアーを長年行っているボランティアのラリー・ヒルは言う。「ラッコは非常に愛すべき動物なので、みんな海のことを学びたくなるのです」

 

実際、水族館が保護してきたラッコの赤ちゃんは人間との絆が強すぎたため、ラッコが人間を好きにならないように、スタッフらはダースベーダーのような黒いヘルメットで変装することになってしまった。こうすることで、ラッコの子どもが最終的に野生で自由になった際に信任を得られるのだ。

モントレーベイ水族館で保護されたラッコ
モントレーベイ水族館で保護されたラッコ

シルのような、お話し好きで物知りのガイドがいれば、日に体重の25%を食べるラッコのライフサイクルについて大いに楽しませてくれるだろう。しなやかなアクロバット師のように、ラッコは常に水の中で跳ねまわるが、ほとんどの時間足ヒレや鼻は水の上に出している。ラッコが丸くなって仰向けになり、眠っている子猫のようになるにがそういうわけだ。足を濡らさないでおくのが好きなのだ。

 

ラッコはケルプの中のクマとも呼ばれてきた。フワフワなのと同じくらい獰猛だからだ。かつてはシベリアコートとして高くもてはやされ、毛皮目的で絶滅寸前まで乱獲されたラッコは、大きくは水族館のパイオニア的な保全活動により、回復を遂げてきた。史上初めてのプログラムとして、水族館は1984年以来800頭の赤ちゃんラッコを助けてきた、野生には約3,186頭のラッコがいるが、モントレーのエルクホーン湿地帯に集まるラッコの少なくとも半分は、このプログラムの直接の子孫たちだ。

 

メスラッコの中には子育てに興味を示さないものもいるが、すぐに新しい子どもと絆を深めるものもいる。メスラッコたちは子どもに泳いだり潜ったり貝の開け方を教えたりする。腹にフワフワの子どもを乗せることすらある。Uberスタイルのラッコだ。波にゆれて絡まるように見えるラッコの群れは、ラフトと呼ばれる。

 

モントレーベイ水族館のラッコは、展示水槽で来場者の前で跳ねまわっているか、あるいはバックヤードで保護されたラッコの子どもに野生で生き抜く術を教えている。ラッコの子どもは深い青い海に出て自力で生きられるようになるために少なくとも育てるのに1年かかる。

 

バックヤードツアーに参加すると、怪我をしてひとり浜で座礁していた子供を育てるシングルマザーのローザのようなラッコのことを深く知ることができる。この子どものラッコはサメの襲撃により親を失ってしまった。このラッコは808号と呼ばれる元気な男の子で、順調に回復し代理母から生きるための命綱を学んでいる。

 

念のためだが、参加者はツアーの中でラッコの豊かなベルベットのような毛皮に触ったりエサをやったりすることはできない。私の7歳の子どもはそれにたいそうガッカリしていた。だが、水族館の屋上にある水槽をモニターで観察することはできる。

 

その後、30秒ごとに600ガロンの水が降り注ぐ心臓がどきどきするようなウエーブクラッシュから、よちよち歩くカッコいいペンギンまで、啓蒙的な水族館の海に関する残りの展示を見ることができる。

 

魅惑的な海の生き物を見せてくれる窓から離れる前に、水族館の裏のデッキに行くことを忘れないで欲しい。ここには、外海と水族館の守られた海が交わるところだ。野生のラッコの母親が岩の上で出産するところを見られるかもしれない。それほど真剣に見る人でなくても、拍手喝さいだろう。ラッコ好きなら、忘れられない思い出になる。

ラッコ保全ツアー

モントレーベイ水族館は約1時間のラッコ保全ツアー($12~$15)を毎日、6歳以上を対象に行っている。水族館自体はモントレーのキャナリー・ロウ886番地で午前10時から午後5時まで営業している。入場料は$30~$50。水族館やラッコのフィーディングのスケジュール、ラッコ保全ツアーの詳細についてはwww.montereybayaquarium.orgを参照いただきたい。

The Mercury News

Otterly adorable at the Monterey Bay Aquarium

May 13, 2018

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2018年

5月

10日

【動画】ケルプの中でくつろぐ野生のラッコの親子 | Sea otter Mom and Pup in kelp

ケルプで遊ぶ子どもが可愛らしいです。
撮影日: 3/18/2017

撮影地: Coast Guard Pier, Monterey, USA

撮影: らっこちゃんねる | Sea Otter Channel

ラッコの母親は子どもが一人でエサを獲れるようになるまで約半年間、子どもに付きっ切りで献身的に世話をします。この幼獣はまだ毛が生え変わっていないため、潜ることができません。母親は子どもの毛づくろいをし、乳を与え、エサを獲りますが、子育て期間中は母親は通常の倍近くのエネルギーを必要とするため、子育てが終わる頃には衰弱して病気になったり、様々なストレスから死んでしまうことも少なくありません。

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2018年

5月

07日

【動画】野生のラッコの群れ | Raft of wild southern sea otters

穏やかな午後のラッコの群れです。人による邪魔もなく、平和な時間です。
撮影日: 4/28/2017

撮影地: Moss Landing, CA, USA

撮影: らっこちゃんねる | Sea Otter Channel

 

ラッコの群れはラフト(いかだ)と呼ばれています。モスランディングの港にはオスの群れがあり、集まって休んだり、グルーミングをしたり、遊んだりしている様子を見ることができます。これらのラッコは若いオスや高齢のラッコなど、縄張りを持っていないラッコです。時折メスが混ざっていることもあります。

 

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2018年

5月

02日

【記事】ワイオミング大学のラッコに関する研究 | UW Researchers Study How to Improve Southern Sea Otters’ Chances of Survival

本日は2018年5月1日付のUniversity of WyomingのNewsより、"UW Researchers Study How to Improve Southern Sea Otters’ Chances of Survival"をお届けします。ワイオミング州はアメリカ大陸中西部にあり、イエローストーン国立公園で有名です。少し専門的な話になりますが、ボトルネック効果についてはこちらの記事に説明があります。

カリフォルニア州モスランディングで浮かんでいるカリフォルニアラッコの群れ。ワイオミング大学の研究者らは、遺伝学的多様性に乏しく、トキソプラズマによる脳障害等、サメによるかみつき、漁師による不法な銃殺に苦しめられているカリフォルニアラッコを繁栄させるための最善策を研究している。この新しい論文は、「広範囲に生息する種に対する特別な配慮を明らかにするための、カリフォルニアラッコの有効個体数の評価」と題し、エボリューショナリー・アプリケーションズ誌で5月1日に発表された。
カリフォルニア州モスランディングで浮かんでいるカリフォルニアラッコの群れ。ワイオミング大学の研究者らは、遺伝学的多様性に乏しく、トキソプラズマによる脳障害等、サメによるかみつき、漁師による不法な銃殺に苦しめられているカリフォルニアラッコを繁栄させるための最善策を研究している。この新しい論文は、「広範囲に生息する種に対する特別な配慮を明らかにするための、カリフォルニアラッコの有効個体数の評価」と題し、エボリューショナリー・アプリケーションズ誌で5月1日に発表された。

ワイオミング大学の研究者らは、遺伝学的多様性に乏しく、トキソプラズマ脳症等、サメによるかみつき、漁師による不法な銃殺に苦しめられているカリフォルニアラッコを繁栄させるための最善策を研究している。

 

現在カリフォルニア沿岸で3,000頭ほどを少し超えているこの小さなラッコの亜種は連邦法である絶滅に瀕する種の保存に関する法のもと絶滅危惧種に指定されている。

 

「この論文はカリフォルニアラッコの回復に必要不可欠な分析とデータを提供してくれます」とワイオミング大学獣医科学生態学プログラム学部のゲノム生物学病理生態学教授のホリー・アーネストが話す。「遺伝子の多様性が乏しく、それが停滞していることをこの論文は証明しています。個体数はやや増加傾向にありますが、遺伝子の多様性は増加していないのです」

 

「ラッコは中心となる場所では回復してきていますが、以前の生息域に再定着しているわけではありません」とワイオミング大学前ポストドクター研究員で、アーネストの研究を共に行ったエリック・ガニエは言う。「カリフォルニアラッコは現在、サンフランシスコ湾の南からサンタバーバラのすぐ北までの間に閉じ込められています。かつてはオレゴンを通じ、アラスカラッコと繋がっていました」

 

アラスカラッコはより個体数が多く、現在はワシントン州の北からアラスカにかけて生息している。

 

ガニエは現在コロラド州立大学でポストドクター研究員で、「広範囲に生息する種に対する特別な配慮を明らかにするための、カリフォルニアラッコの有効個体数の評価」と題した論文の筆頭著者であり、アーネストは上席著者だ。この論文は、エボリューショナリー・アプリケーションズ誌で5月1日に発表された。審査があり自由に閲覧可能なこの学術誌は、進化生物学から健康や社会、経済との関係に関する生物学的疑問に至るまでの様々な概念を用いた論文を掲載している。

 

ワイオミング大学ポストドクター研究員のカイル・グスタフソンもその研究に関わっていた。他にも米国地質調査所、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、カリフォルニア州魚類野生生物局、シアトル水族館、ワシントンDCのスミソニアン保全生物学研究所の研究者らがその研究に協力している。

 

1700年代と1800年代、カリフォルニア沿岸の至ところ、そしてロシアや日本にも「無数の」ラッコが生息していた、とガニエは言う。1900年頃、の度合いが著しかったカリフォルニアラッコは絶滅したと考えられていた。1938年にビッグサー付近で50頭ほどのラッコが再発見された。今日、その数は3,000頭ほどだとガニエは言う。

 

「数が激減すると、遺伝子の多様性が失われてしまいます」とガニエは言う。「個体数が回復してきても、遺伝子の多様性はそれほど早く回復しないため、個体群は脆弱になります」

 

カリフォルニアラッコは生態系にとって重要だ。ラッコのエサにはウニやアワビなどのような無脊椎動物が含まれるが、それらはケルプを食べてしまうからだ。ラッコがこれらの無脊椎動物を食べなければ、様々な魚にエサや生息地を提供しているケルプの森が失われてしまうとガニエは言う。

 

しかし、中心地でラッコの個体数が高い数字を示すようになると、ラッコのエサの供給量が限られてしまう。そしてラッコはその限られた生息域の中で数を増やすことが困難になってしまう。

 

「(カリフォルニア)ラッコの生息域が来たのほうへ広がってくれればと考えている生物学者もいます」とガニエは言う。

 

 

アラスカラッコを移植し、カリフォルニアラッコと繁殖させてカリフォルニアラッコの数を増やし、同時に遺伝子の多様性を促進する可能性もあるが、個体数の低下も考えられる。アラスカラッコがカリフォルニアラッコに病気をもたらす可能性もあり、また北へ泳いで逃げようとしその途中にサンフランシスコ湾付近でサメの襲撃に出くわすからもしれないとアーネストは言う。サメはその地域に集まっており、ラッコがサンフランシスコ湾を超えて北上するのを難しくしている。

 

カリフォルニアラッコはアラスカラッコよりも小さい。顔の構造と頭蓋骨の形もその2亜種では異なっているとガニエは言う。

 

有効個体数の研究

この論文は「有効個体数」という手法を検証したもので、カリフォルニアラッコの回復計画に含まれている。有効個体数は、その種の次の世代に遺伝学的に貢献する動物の評価である。

 

保全遺伝学的技術とその種の進化の可能性を考慮することがますますその種の保全に適用されるようになっている。例えば、有効個体数の推測はその種の保全状態を決定するのに役立つ。しかし、現在の有効個体数を正確に見積もることは今でも困難だとその論文は述べている。

 

この手法の計算方法が最終的な友好個体数に重要な違いを生むとこの論文は述べている。米国魚類野生生物庁の回復プランは、連邦法で定められた絶滅危惧種からカリフォルニアラッコをいつ除外するかを決定するのに、有効個体数を使用している。魚類野生生物庁が古い計算方法を使用していたら、カリフォルニアラッコは恐らく回復には程遠い状況ですぐに絶滅危惧種から外されてしまうだろうとガニエは言う。

 

北太平洋毛皮交易時代に絶滅に近いところまで乱獲されてから、カリフォルニアラッコはかつての生息域の一部に回復してきているが、数は比較的少ないままであるため、有効個体数を正確に継続的に得ることが望ましい。

 

これまでの理論的な論文は複数の手法の有効性を比較してきているが、応用的保全環境においては経験的なデータを用いた推測値の比較には限界がある。

 

「このような研究には十年単位の時間がかかります」とアーネストは言う。アーネストはカリフォルニア大学デイビス校の研究員だった時から、カリフォルニアラッコを13年間研究している。

 

この研究のため、ガニエとアーネストは13年分、1,006頭のラッコから人口統計学的、遺伝学的データを合わせて複数の有効個体数評価値や、遺伝子の多様性や個体群の遺伝子構造の一時的な傾向の評価を行った。カリフォルニアラッコの遺伝子多様性は低く、時間の経過とともに増えていないと論文は述べている。特定の遺伝子単位があると言う証拠はないが、距離により遺伝的隔離が起こっている証拠がいくつかある。

 

「この13年分のデータセットを得たのは、本当に価値のあることでした」とアーネストは言う。

 

これらの結果をもとに、ガニエ、アーネスト及び論文の共著者らはカリフォルニアラッコの絶滅危惧種からの除外基準を発展させることを薦めている。他の広範囲にわたり生息する種や、世代が重なっている種、あるいは性別により分散している種についても、有効個体数の評価値を複数用いることや、個体群の遺伝子評価の基準を発展させるよう助言している。

 

「私たちはカリフォルニアラッコの遺伝的健全性を評価するための新しい基準が必要なのです」とガニエは言う。「それが、ラッコや他の絶滅危惧種にとって次なるステップになるのです」

 

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2018年

5月

01日

【記事】グスタフでオオカミがラッコを捕食 | Wolves are eating sea otters near Gustavus. What does that mean for the deer?

本日は2018年4月27日付のKTOO Public Mediaから"Wolves are eating sea otters near Gustavus. What does that mean for the deer?"をお届けします。同じアラスカのカトマイ国立公園カナダのバンクーバー島でもオオカミによるラッコの捕食がみられています。

ラッコは貝やムラサキガイ、ウニ、カニなどを食べる (U.S. Fish & Wildlife photo)
ラッコは貝やムラサキガイ、ウニ、カニなどを食べる (U.S. Fish & Wildlife photo)

アラスカ南東部で明らかにあまり好かれていない2つの動物の間にある驚くべき繋がりを生物学者らが調べている。アラスカ州グスタフの地元の人々は、オオカミが本土付近の島にある場所に狩りに好適な場所があり、そこでシカを狙っているのではないかと考えている。5年ほど前に、オオカミはシカを食べるために泳いで渡りはじめたのだ。

 

しかし、最近キャンプで訪れたあるグスタフの男性は、オオカミがシカだけを食べているのではないことに気が付いた。ある悪名高い海の捕食者がそのエサになっているようなのだ。

 

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グレッグ・ストレベラーはこの方ずっとフィールド生物学者として働いてきた。現在は引退しているが、仕事があまり見つからないというわけではない。

 

ストレベラーがグスタフのすぐ沖にあるプレザント島でキャンプをした時、素早い行動にでる機会があった。

 

その旅にでた3月、ストレベラーは多くのオオカミの痕跡と6頭のラッコの死体を見つけた。

 

「白骨化したものから、肋骨に血がついたものまでさまざまでした」とストレベラーは語った。

 

オオカミは非常に飢えていたため、見つけたものを手あたり次第に食べていたように思える、とストレベラーは言う。ラッコを食べるのは最後の手段だったのではないか?

 

その疑問への答えを導くものをストレベラーは発見した。

 

「フンのかたまりがこれまで見たことのないものでした」

 
その時点で、彼はどの程度役立つのか分かっていた。ストレベラーは娘にビニル袋を箱ごともってくるよう言った。そして忙しくなった。ありがたいことに、家族はストレベラーが普通ではないものを集めることに理解を示してくれた。娘は手伝ってもくれた。

 

 

彼らはオオカミのフンを40袋以上集めたが、それをどこに送るかが問題だった。以前アラスカ魚類狩猟局に勤務していたため、適切な場所がどこかストレベラーには分かった。

 

「それを5ガロンのバケツに入れて、飛行機に乗せました」

グレッグ・ストレベラーが集めたオオカミのフンを持っているグレッチェン・ロフラー(Photo by Elizabeth Jenkins/Alaska’s Energy Desk)
グレッグ・ストレベラーが集めたオオカミのフンを持っているグレッチェン・ロフラー(Photo by Elizabeth Jenkins/Alaska’s Energy Desk)

州都ジュノーの産業地域で、グレッチェン・ロフラーは格納庫のようなものに鍵を差し込んでいた。

 

「これは大きな冷凍庫です」とロフラーは言う。「動物のパーツをここに保存しています」

 

ジュノーの冷凍庫の中には、ヤギの頭蓋骨やヘラジカの顎や、ストレベラーが送った5ガロンのバケツがある。

 

ロフラーは魚類狩猟局の生物学者で、ストレベラーの発見はありがたいと話した。3年ほど、アラスカ南東部のエリアでオオカミのフンを集めていたからだ。ロフラーは一目見ただけでオオカミが何を食べていたか予想できる。

 

「例えば、端っこから毛が見えますね」ロフラーはビニル袋の中身を説明して言った。

 

しかし、より詳しく知るには、全てのエサのDNAを分析しなければならない。この夏、ロフラーはこれらのサンプルを分析に出すことを考えている。

 

ロフラーはオオカミが食べるエサは季節や場所によって変わるということを知っている。オオカミは日和見主義なのだ。ある場所ではヘラジカやシカを食べる。しかし、ポイントグスタフの辺りでは、検査結果にあらわれた一般的なエサはラッコだ。

 

「アラスカ南東部の他の場所ではこのような結果は見られません」とロフラーは言う。

 

生物学者はなぜこのようなことが起こるのかはっきり分からない。しかし、フンに含まれる様々なエサの種類をよく知ることで、今後の管理に対する鍵や影響を与えることがあるかもしれない。

 

ストレベラーが言うには、グスタフの猟師は、シカを食べにプレゼント島へ泳いで渡ってくるオオカミが増えることにワクワクしてはいない。

 

「シカは私たちの主要な肉源なので」とストレベラーは言う。「みんなうんざりしているのです」

 

ストレベラーは、海を渡ってくるオオカミがこの一つの群れだけなのか知りたいと思っている。この島のシカにとって不吉な予兆だとは思っていない。レストランで食事を終えたら次のレストランへ向かうようなものだ。機会があれば気に入ったレストランへまた行きたいと思うようなものだ。

 

「本当に知りたいのは、島のオオカミと本土のオオカミにどのようなつながりがあるかということです」

 

ストレベラーの集めたフンが、それらがどう異なるか示す役に立つかもしれない。

 

噛みちぎられたラッコについては、南東部の人々は因果応報だと解釈するかもしれないということをストレベラーは理解している。漁師たちが最も嫌いな海洋動物を一つ挙げるとするなら、おそらくラッコが勝つだろう。お気に入りの漁場でエサに噛みついてきたが、捕食者だったラッコが被食者になりつつあるのだ。

 

しかし、ストレベラーはオオカミもラッコも私たちに生態系や私たち自身について共通のことを教えてくれていると言う。何事も栄枯盛衰なのだ。ストレベラーは知っている。

 

ストレベラーは60年ほど前、この場所にラッコを再導入する手伝いをした。

 

「私は別にそのことに今でもこだわっているわけではありません。それはまた別の話です」

 

しかし、ストレベラーは予期せずラッコが現れる場所を記録できるよう、ビニル袋をいつも用意している。

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